
- フリーランスに育児休業制度はなく、休めば収入は止まります
- 6か月以上の契約なら、両立への配慮を申し出ることができます
- 2026年10月から、1歳未満の子の育児期間は国民年金保険料が免除されます
- 中断するなら、復帰の見込み時期を担当者に伝えておきます
出産や育児を控えたとき、フリーランスが直面するのが「案件をどうするか」という問題です。会社員のような育児休業制度はなく、休めば収入は止まります。ただし、あまり知られていないことがあります。法律上、一定の条件を満たす契約では、発注する側に育児と業務の両立への配慮が求められているのです。エージェント経由の案件も例外ではありません。この記事では、育児期に使える公的制度(2026年10月に始まる国民年金の育児免除を含む)、案件をどう調整するか、何を申し出られるのか、伝え方の例文、中断と復帰の進め方、妊娠が分かった時点でやること、両立しやすいエージェントの特徴までを、フリーランス歴10年以上の運営者の視点で1ページにまとめました。
フリーランスに育児休業制度はある?
結論:ありません。エージェントは雇用主ではなく案件を仲介する立場のため、休業を認める制度も、その間の報酬を支払う仕組みも持っていません。休めばその分の報酬は発生しない、というのが前提になります。
育児休業給付金はもらえる?
結論:もらえません。育児休業給付金は雇用保険に加入している人が対象の制度で、フリーランスは雇用保険に加入していないためです。ただし、出産や育児に関して使える公的な制度は別にあります。
フリーランスが出産・育児で使える公的制度は?
結論:出産育児一時金、国民年金と国民健康保険の産前産後期間の保険料免除、そして2026年10月に始まる国民年金の育児期間の保険料免除の4つが代表的です。
| 制度 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 2023年4月以降の出産は原則50万円 | 国民健康保険の加入者も対象 |
| 国民年金の産前産後免除 | 出産予定月の前月から4か月間(多胎妊娠は6か月間)の保険料が免除 | 免除期間も満額の年金額で計算される |
| 国民健康保険の産前産後免除 | 産前産後の期間(原則4か月分)の保険料のうち、所得割と均等割が免除 | 2024年1月から。市区町村への届出が必要 |
| 国民年金の育児免除(2026年10月開始) | 1歳未満の子を養育する第1号被保険者の保険料が免除。父母ともに対象で、所得要件なし | 母は産前産後免除に続く9か月間(合わせて最大13か月)、父は原則として子の誕生月から12か月間。免除期間も納付したものとして年金額に反映される |
※出典:厚生労働省「育児期間の国民年金保険料免除制度」、日本年金機構「国民年金保険料の育児免除制度」(いずれも2026年9月確認)。育児免除は、子と親子関係が続いていること、子と同じ住所であることが要件です。届出の要否や免除期間の数え方は状況によって異なるため、市区町村や年金事務所で確認してください。
お金の制度と、案件の扱いは別の問題です。この記事で主に扱うのは後者——休むのか、稼働を減らして続けるのか、どう伝えるのかという部分です。ここを計画的に進められるかどうかで、育児期の負担も、復帰後の立ち上がりも大きく変わります。
エンジニア職の場合は、担当している職種や技術によって、リモートや短い日数の案件の見つけやすさが変わります。職種別の選び方はエンジニア向けエージェントの選び方で詳しく解説しています。
育児と両立しやすい案件を扱うエージェントを比較する 在宅・週3日・フォロー体制・支払いサイトを一覧で確認できます(登録・相談は無料) ›法律で「配慮」が求められているとは?
結論:2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)には、妊娠・出産・育児・介護と業務の両立に対する配慮についての定めがあります(13条)。休業を保障する制度ではありませんが、条件を変えられないか相談する根拠にはなります。
| 契約の期間 | 発注側に求められること | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 6か月以上の継続的な業務委託 | 申出に応じて必要な配慮をする義務がある | 相談を受けたら検討し、結果を伝える必要がある |
| 6か月未満の業務委託 | 必要な配慮をするよう努める(努力義務) | 義務ではないが、相談自体は可能 |
出典:公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」、政府広報オンライン「フリーランスが安心して働ける環境づくりのための法律」ほか公的機関の公表資料(2026年9月確認)。対象となるのは従業員を使用する発注事業者(特定業務委託事業者)です。契約の更新によって通算で6か月以上になる場合も、期間の条件を満たすものとして扱われます。エージェントと直接業務委託契約を結んでいる場合は、エージェントが発注事業者にあたります。
申し出たらどう対応してもらえる?
結論:申出を受けた側は、内容を把握し、対応できる選択肢を検討し、実施する内容を伝えることが求められます。対応できない場合でも、その理由を説明することが必要とされています。申出を無視する、検討もしない、理由も説明しないという対応は適切ではないと整理されています。
ただし注意点もあります。この定めは希望した配慮が必ず実現されることを保証するものではありません。あくまで、申出に向き合い、検討し、結果を説明することが求められている、という趣旨です。過度に期待せず、実現可能な代替案も一緒に用意しておくと話が進みやすくなります。
この記事は法律に関する一般的な情報であり、法的な助言ではありません。適用の可否は契約形態や取引の実態によって変わります。相談したことを理由に契約を打ち切られるなど、不当な扱いを受けた場合は、契約内容を確認のうえ、弁護士や公的な相談窓口に相談してください。厚生労働省の委託事業「フリーランス・トラブル110番」では、弁護士に無料で相談できます。
どんな配慮を申し出られる?
結論:働く場所・時間・業務量の3つが相談の対象になります。想定される例を挙げます。
| 相談できること | 具体例 | 通りやすさの目安 |
|---|---|---|
| 働く場所 | 常駐から在宅・リモート中心の稼働に変更する | 案件の性質しだいだが、比較的相談しやすい |
| 働く時間 | 1日の稼働時間を短くする、稼働日数を減らす | 報酬の減額とセットになることが多い |
| 会議の時間帯 | 通院や送迎に配慮した時間に調整してもらう | 最も通りやすい。まずここから相談するのも手 |
| 打ち合わせの形式 | 対面からオンラインに変更する | すでにオンライン中心の現場も多い |
| 業務量と納期 | 体調や子どもの急病に応じて調整してもらう | チームの体制によって可否が分かれる |
※「通りやすさの目安」は、編集部の実務感覚にもとづく一般的な傾向です。現場の体制や契約内容によって変わります。
まだ育児が始まっていなくても相談できる?
結論:できます。配慮の対象には育児だけでなく妊娠・出産も含まれるため、妊娠が分かった段階から、つわりや通院、出産後の働き方を見据えて相談して構いません。「実際に始まってから」と待つ必要はなく、早いほど調整の選択肢は増えます。
いきなり大きな変更を求めるより、会議時間の調整や打ち合わせのオンライン化といった、相手の負担が小さいものから相談するほうが進みます。それで足りなければ稼働日数、それでも難しければ中断、という順序で考えると、関係を保ったまま条件を変えていけます。
どう伝える?申し出方と例文
結論:エージェント経由の案件なら、まず担当者に相談するのが基本です。クライアントに直接持ちかけると、契約上の条件変更の話がエージェントを飛び越えてしまいます。伝え方のコツは次の3点です。
- 早めに伝える:時期が近いほど選択肢が減ります。見通しが立った時点で共有します
- 希望を具体的に伝える:「配慮してほしい」ではなく「週4日、10〜16時の稼働にしたい」と数値で示します
- 代替案を添える:「稼働日数を減らす代わりに、担当範囲を絞る」など、相手が判断しやすい形にします
件名:稼働条件のご相談
「お世話になっております。〇〇です。
現在参画中の案件について、稼働条件のご相談をさせてください。
・状況:〇月に出産を予定しており、〇月頃から育児のため終日の稼働が難しくなる見込みです
・希望:〇月以降、週5日から週4日へ、稼働時間は10〜16時への変更を相談させていただきたいです
・代替案:難しい場合は、担当範囲を〇〇に絞る形でも対応可能です
・継続の意向:契約は継続したいと考えております
クライアント様へのご相談も含め、対応可能な範囲をお教えいただけますと幸いです。」
「継続したい」という意向を必ず添えてください。辞める前提の相談だと受け取られると、代替要員の検討が始まることがあります。
クライアントに直接伝えるべき場面は?
結論:日々の稼働に関わる範囲は現場に、契約条件に関わる範囲は担当者にと切り分けます。会議の時間帯や連絡のつく時間といった運用上のことは現場と直接調整して構いません。一方、稼働日数や報酬の変更は契約の話なので、必ずエージェントを通してください。
| 相談する内容 | 相談する相手 |
|---|---|
| 会議の時間帯・連絡のつく時間・打ち合わせの形式 | 現場(クライアント)と直接調整してよい |
| 稼働日数・稼働時間・報酬・契約期間 | 必ずエージェントの担当者を通す |
| 中断・契約終了・復帰の時期 | まず担当者に相談し、現場への伝え方をすり合わせる |
続ける・減らす・止める、どう選ぶ?
結論:育児期の選択肢は大きく3つです。収入・体力・復帰のしやすさのどれを優先するかで答えが変わります。
| 選択肢 | 収入 | 復帰のしやすさ | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| そのまま続ける | 維持できる | 最も高い(そもそも離れない) | 在宅で、家族や保育のサポートがある |
| 稼働を減らして続ける | 日数に応じて減る | 高い。関係も実績も維持できる | 体力的に厳しいが、完全に離れたくない |
| いったん中断する | 止まる | 低め。再開時に案件探しが必要 | 体調や家庭の事情で稼働が難しい |
迷ったときは、「稼働を減らして続ける」を最初に検討してください。完全に止めるより収入の落ち込みが小さく、実績とつながりも切れません。週1〜2日でも関わり続けていれば、復帰の相談もしやすくなります。
中断するときに決めておくことは?
結論:復帰の見込み時期と、その時期に連絡をもらう形を決めておきます。中断は「終わり」ではなく「一時停止」として扱えるかどうかで、再開の負担が変わります。
- 復帰の見込みを伝える:「〇年〇月頃に、週3日から再開したい」と、時期と条件をセットで共有します
- 登録は残す:退会せずに登録を残しておけば、案件情報を受け取れます。復帰時に一から登録し直す手間もありません
- 連絡の頻度を決める:「復帰の3か月前に連絡します」と伝えておくと、担当者も動きやすくなります
- 契約終了の手続きを確認する:報酬の精算、貸与品の返却、契約の終了日を確認します
妊娠が分かったら何から始める?
結論:お金の備えと、案件の調整を並行して進めるのが基本です。時期ごとにやることを整理しました。
| 時期 | 案件まわりでやること | お金まわりでやること |
|---|---|---|
| 妊娠が分かったら | 現契約の期間と更新時期を確認する | 使える公的な制度を調べる。生活費の備えを増やし始める |
| 安定期に入る頃 | 担当者に見通しと希望を伝える | 国民年金・国民健康保険の産前産後免除の届出時期を確認する(出産予定日の6か月前から届出可能) |
| 出産の2〜3か月前 | 稼働の縮小や引き継ぎを具体的に進める | 収入が止まる期間の生活費を確保する |
| 出産後 | 登録を残したまま、復帰時期の見込みを共有する | 出生の届出とあわせて、国民年金の育児免除(2026年10月から)の手続きを確認する |
| 復帰の3か月前 | 担当者に連絡し、案件探しを始める | 保育の見通しと、稼働できる時間帯を確定させる |
※届出の時期や方法は市区町村によって異なる場合があります。詳しくは住んでいる市区町村の窓口や年金事務所で確認してください。
とくに大切なのが「復帰の3か月前に動き出す」点です。案件探しから参画までは一般に2〜4週間ほどかかり、条件を絞るほど時間がかかります。さらに、稼働を始めてから最初の報酬が入るまで1か月半〜2か月ほどかかることも多いため、保育の開始時期と入金の時期を合わせて逆算しておきましょう。
復帰するときは何をする?
結論:ブランクそのものより、「今できること」を説明できるかが見られます。育児で離れた期間は隠さず伝え、そのうえで稼働できる条件を明確に示しましょう。
- 稼働できる条件を確定させる:保育の預け先と時間、送迎の有無から、稼働できる曜日と時間帯を数値で決めます
- スキルシートを更新する:中断前の実績を書き直し、離れていた期間と理由を簡潔に添えます
- 2〜3社に相談する:条件を絞るほど候補が減るため、複数社で並行して探します
- 小さく再開する選択肢も持つ:いきなり週5日に戻さず、週2〜3日やスポット案件から慣らす方法もあります
- 急な休みへの対応を先に共有する:「子どもの発熱で対応できない日が出る可能性がある。当日中に連絡し、翌日に巻き返す」と伝えておきます
「1年半、育児のため稼働を中断していました。その間に〇〇の学習を進め、小さな案件を〇件担当しました」——このように期間と、その間の動きをセットで伝えると、判断材料になります。何も触れずに空白にしておくより、面談での説明がずっと楽になります。
育児と両立しやすいエージェントの特徴は?
結論:在宅・短い日数の案件の多さ、初めての稼働へのフォロー、収入が途切れたときの備え、支払いサイトの短さの4点で比べます。各社の公表データを整理しました。
| エージェント | 公表されている特徴 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| クラウドワークス テック | リモート案件90%(2025年1月末時点)、週3日〜の案件、初めて稼働する人への3か月間のフォロー、支払いサイト15日 | 在宅・週3日から再開したい |
| ギークスジョブ | リモート可の案件88%以上(前年度実績)、福利厚生プログラム「フリノベ」、支払いサイト25日 | 在宅中心で、福利厚生も重視したい |
| Midworks | 案件が途切れたときの給与保障制度(保障率60%・審査と条件あり)、支払いサイト20日 | 育児期の収入の途切れが不安 |
| レバテックフリーランス | IT/Web系に特化し、取引企業数10,000社以上。支払いサイト15日(現場により変動あり) | 条件を絞っても候補を残したい |
※各社の公式サイト・公開資料に記載された内容を2026年9月に編集部が確認。順位ではなく、比較の観点として整理したものです。育児中の人への紹介実績は公表されていないため、面談で直接確認してください。
育児期の案件についてのよくある質問
結論:出産・育児を控えた人から多い9つの疑問に、判断の基準が分かる形で回答します。
まとめ:早めに伝えて、選択肢を残す
結論:フリーランスに育児休業制度はありませんが、条件を変えて働き続ける道は用意されています。6か月以上の契約なら配慮の申出という根拠もあり、2026年10月からは国民年金の育児免除も始まります。大切なのは、時期が迫る前に見通しを共有し、選べる状態を作っておくことです。
• フリーランスに育児休業制度はなく、育児休業給付金も対象外。休めば収入は止まる
• 使える公的制度は、出産育児一時金(原則50万円)、国民年金・国民健康保険の産前産後免除、2026年10月開始の国民年金の育児免除(1歳未満の子を養育する父母が対象)
• フリーランス新法では、6か月以上の継続的な業務委託について、妊娠・出産・育児・介護と両立するための配慮が義務とされている(6か月未満は努力義務)
• 配慮は結果を保証するものではないが、申出を検討し、結果や理由を伝えることが求められる
• 相談できるのは、働く場所・時間・会議の時間帯・打ち合わせの形式・業務量。通りやすい小さな変更から相談し、契約条件の変更は必ず担当者を通す
• 選択肢は「続ける」「減らして続ける」「中断する」の3つ。迷ったら減らして続ける形を最初に検討する
• 中断するときは、復帰の見込み時期を伝え、登録は残しておく
• 復帰は3か月前から動き出す。ブランクは「期間+その間にしていたこと」で伝え、在宅・週3日に強いエージェントを組み合わせる
在宅や週数日の案件をどれくらい扱っているかは、エージェントによって差があります。育児と両立しながら働き続けるためにも、条件の相談がしやすい会社を選んでおきましょう。

