
出産を控えたフリーランスが気になるのが「出産手当はもらえるの?」という点。会社員がもらえる「出産手当金」は、残念ながらフリーランスは受け取れません。一方で、フリーランスでも受け取れる「出産育児一時金」や、国民年金保険料が免除される制度もあります。混同しやすいこれらの制度を正しく理解することが大切です。この記事では、フリーランスの出産にまつわるお金の制度を、もらえるもの・もらえないものに分けて整理して解説します。
フリーランスは「出産手当金」をもらえない
まず結論から。フリーランス・個人事業主は、出産手当金を受け取れません。出産手当金は、会社員などが加入する健康保険(被用者保険)の制度であり、フリーランスが加入する国民健康保険にはこの制度がないためです。
出産手当金は、出産のために仕事を休んで収入が減った会社員に対し、その期間の給料を補填する給付金です。フリーランスには、この「休業中の収入補填」がないことを、まず理解しておきましょう。あわせて、雇用保険の「育児休業給付金」も、雇用保険に加入していないフリーランスは受け取れません。
「出産手当金」と、次に説明する「出産育児一時金」は名前が似ていますが、まったく別の制度です。フリーランスがもらえないのは出産手当金のほう。出産育児一時金はフリーランスももらえます。混同しないよう、しっかり区別しておきましょう。
※出典:公明党コメチャンネル・FREENANCE MAG等の解説に基づく。
「出産手当金」と「出産育児一時金」の違い
この2つの制度の違いを表で整理します。名前が似ているため混同されがちですが、目的も対象も異なります。
| 項目 | 出産手当金 | 出産育児一時金 |
|---|---|---|
| 目的 | 休業中の収入の補填 | 出産費用の負担軽減 |
| 金額 | 標準報酬日額の3分の2(休業日数分) | 子ども1人につき原則50万円 |
| フリーランスは | もらえない | もらえる |
覚え方はシンプルです。「手当金=休んだ分の給料の補填(会社員向け、フリーランスは×)」「一時金=出産費用の補助(誰でも○)」。フリーランスは収入補填はないけれど、出産費用の補助は受けられる、と理解しておきましょう。
フリーランスがもらえる出産育児一時金(50万円)
フリーランスでも受け取れるのが「出産育児一時金」です。子ども1人につき原則50万円が、加入している公的医療保険(フリーランスは国民健康保険)から支給されます。
- 金額:子ども1人につき原則50万円(2023年4月に42万円から引き上げ)
- 産科医療補償制度の対象外となる出産などの場合は48.8万円
- 妊娠85日(約4か月)以降の出産が対象(死産・流産を含む)
- どの公的医療保険に加入していても、支給額は一律
受け取り方には主に3つあります。
・直接支払制度:一時金が医療機関へ直接支払われ、窓口で全額立て替える必要がない(最も一般的)
・受取代理制度:事前申請で医療機関が代理受領する
・事後申請:いったん自分で支払い、後から申請して受け取る
出産費用が50万円を超えた分だけ窓口で支払い、下回った場合は差額が後日振り込まれます。
※出典:厚生労働省・マネコミ等の解説に基づく(2026年6月時点)。
国民年金保険料が免除される(産前産後免除)
出産前後の一定期間、国民年金保険料が免除される制度があります。2019年4月に新設された、フリーランス(国民年金第1号被保険者)向けの制度です。
- 免除期間:出産予定日または出産日の前月から4か月間
- 多胎妊娠(双子以上)の場合:出産予定日または出産日の3か月前から6か月間
- 所得制限なし(誰でも申請できる)
- 免除期間は保険料を納付したものとして扱われ、将来の年金額に満額反映される
この産前産後免除は、通常の保険料免除と違い所得制限がなく、しかも免除期間が「満額納付」として将来の年金に反映される、非常に有利な制度です。届出は出産予定日の6か月前から可能で、出産後でも届け出られます。市区町村の窓口で手続きを忘れずに行いましょう。
※出典:厚生労働省「国民年金の産前産後期間の保険料免除制度」・FREENANCE MAG等に基づく。
その他に使える支援制度
出産育児一時金や年金免除のほかにも、フリーランスが利用できる子育て支援があります。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 出産・子育て応援交付金 | 妊娠・出産時に自治体から支援金(出産・子育て応援ギフト)や伴走型相談支援が受けられる |
| 児童手当 | 子どもの年齢に応じて支給。2024年10月から対象拡大・所得制限撤廃 |
| 自治体独自の助成 | 妊婦健診の補助、医療費助成など(内容は自治体による) |
政府は、育児休業給付のないフリーランス・個人事業主に向けて、新たな給付制度の検討を進めています。子育て世帯への支援は年々拡充されているため、出産の際は、お住まいの自治体の最新の支援内容を必ず確認しましょう。
※出典:起業の窓口・マネコミ等の解説に基づく。支援内容は自治体・年度により異なります。
収入が止まるリスクへの備え
フリーランスは出産手当金や育児休業給付金がないため、出産・育児で働けない間は収入が止まることになります。会社員より復帰を急ぐ傾向があるのも、この収入面の不安が背景にあります。あらかじめ備えておくことが大切です。
① 出産・育児期間の生活費を準備しておく
休業中の収入減を見込み、数か月分の生活費を事前に蓄えておきましょう。出産育児一時金は出産費用に充てるもので、生活費の補填にはなりません。
② 仕事の調整・引き継ぎを早めに
出産前後に休む期間を見越して、クライアントへの相談や仕事の調整を早めに進めましょう。一部の仕事を継続できるよう体制を整えておくと、収入の落ち込みを和らげられます。
③ 民間保険の活用を検討する
医療保険や所得補償保険など、万一の出産トラブルや働けない期間に備える保険もあります。妊娠前から準備しておくと選択肢が広がります(妊娠後は加入に制限が出ることがあります)。
フリーランスの出産に関するよくある質問
フリーランスの出産・お金について、特に質問の多いポイントをまとめました。
Q. フリーランスは出産で何ももらえないのですか?
いいえ。会社員向けの「出産手当金」はもらえませんが、「出産育児一時金(原則50万円)」は受け取れます。さらに国民年金の産前産後免除も使えます。もらえる制度はあるので、正しく申請しましょう。
Q. 出産育児一時金はいつ申請しますか?
多くの医療機関で使える「直接支払制度」なら、出産前に医療機関で手続きします。これにより、窓口で出産費用を全額立て替える必要がなくなります。詳しい手続きは出産予定の医療機関と、加入している国民健康保険の窓口で確認しましょう。
Q. 産前産後の年金免除は自動ですか?
いいえ、申請が必要です。市区町村の窓口で届け出ます。出産予定日の6か月前から届け出が可能で、出産後でも申請できます。所得制限がなく年金額に満額反映される有利な制度なので、忘れずに申請しましょう。
Q. 配偶者の扶養に入れば出産手当金はもらえますか?
いいえ。出産手当金は、本人が会社員などとして健康保険に加入し、給与を得て働いている場合の制度です。配偶者の扶養に入っている場合は、出産育児一時金は受け取れますが、出産手当金は対象になりません。
まとめ:もらえる制度を正しく活用しよう
フリーランスの出産は、もらえる制度・もらえない制度を正しく理解することが大切です。最後に要点を振り返っておきましょう。
① フリーランスは「出産手当金」(休業中の収入補填)はもらえない
② 「出産育児一時金」(原則50万円)はフリーランスも受け取れる
③ 国民年金の産前産後免除は所得制限なし・年金額に満額反映
④ 出産・子育て応援交付金や児童手当などの支援もある
⑤ 休業中は収入が止まるため、生活費の準備と仕事の調整を早めに
フリーランスは出産手当金こそもらえませんが、出産育児一時金や産前産後の年金免除など、活用できる制度はしっかりあります。大切なのは、もらえる制度を漏れなく申請することと、収入が止まる期間に向けて事前に備えること。出産が決まったら、加入している国民健康保険の窓口や市区町村で、利用できる制度を早めに確認しておきましょう。

