
取引先から「領収書をください」と言われて、書き方や収入印紙の要否に迷うフリーランスは少なくありません。結論から言えば、求められたら発行し、紙で税抜5万円以上なら収入印紙を貼り、データで送るなら印紙は不要です。あとは宛名・日付・金額・但し書き・発行者の5つを正しく書けば完成します。振込やカード払いの場合の書き方、インボイスとして出すときの記載事項、控えの保存まで1ページで確認できるようにまとめました。
【結論】「紙かデータか」「支払い方法」「インボイスが必要か」の3つで決まる
領収書を出す前に、次の3つを順に確認してください。
- 紙で渡すか、データで渡すかPDFなどの電子データで送るなら、金額にかかわらず収入印紙は不要です
- 支払いは現金・振込か、クレジットカードか紙で税抜5万円以上なら、現金でも振込でも印紙が必要です。カード払いの旨を書けば印紙は不要です
- 相手がインボイスを必要としているかインボイス登録済みで相手が求めるなら、登録番号・税率ごとの金額と適用税率・消費税額を記載します
この3点を決めたら、宛名・発行日・金額・但し書き・発行者情報を埋めるだけです。
領収書の発行は、求められたら応じるのが原則です。民法第486条は、支払う側が受取証書の交付を請求できると定めています。実務上は振込明細が支払いの証拠になるため省略されることも多いものの、取引先の経理の都合で求められたら、断らずに対応しましょう。
領収書とは?請求書・納品書との違い
領収書は、代金を受け取ったことを証明する書類です。請求書は支払いを求める書類、納品書は成果物を納めたことを伝える書類で、役割とタイミングが異なります。
| 書類 | 出すタイミング | 役割 |
|---|---|---|
| 見積書 | 受注前 | 条件と金額の提示 |
| 納品書 | 納品時 | 成果物を納めたことの確認 |
| 請求書 | 納品後・月末締め後 | 代金の支払いを求める |
| 領収書 | 代金を受け取った後 | 代金を受け取ったことの証明 |
あわせて読みたい(取引の書類)
領収書の書き方と見本
何を書けばいい?
| 1 タイトル | 「領収書」と明記する |
|---|---|
| 2 宛名 | 正式名称で書く。会社宛は「株式会社〇〇 御中」、個人宛は「〇〇様」。「上様」や「(株)」の略記は避ける |
| 3 発行日 | 代金を受け取った日。請求日や作成日ではない |
| 4 金額 | 「¥110,000-」のように先頭と末尾を締め、3桁ごとにカンマを入れる |
| 5 内訳 | 税抜金額・消費税額・合計を分けて書く。印紙の判定にも影響する |
| 6 但し書き | 「Webサイト制作費として」など業務内容が分かる表現にする。「品代」で済ませない |
| 7 発行者情報 | 氏名または屋号、住所、連絡先。インボイス登録済みなら登録番号 |
見本はどうなる?(インボイス登録済み・振込で受領)
領収書の見本
領収書
株式会社〇〇 御中
発行日:2026年9月30日
金額 ¥110,000-
但し 2026年9月分 Webサイト制作費として
上記金額を銀行振込(2026年9月30日入金)にて正に領収いたしました。
内訳 10%対象 税抜金額100,000円 消費税額10,000円 合計110,000円
発行者 〇〇デザイン 〇〇〇〇
住所・連絡先 〇〇
登録番号 T0000000000000
収入印紙は必要?判定の流れと金額の早見表
領収書は印紙税法の第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)にあたり、「紙で発行」「税抜5万円以上」「金銭の受け取り」の3つがそろうと収入印紙が必要です。銀行振込で受け取った場合も、金銭の受け取りに含まれます。
紙で渡すか
PDFをメールで送るなど電子データなら、印紙は不要です。
クレジットカード払いか
カードで支払われたことを領収書に書けば、金銭の受取書に当たらず印紙は不要です。
記載金額が5万円以上か
消費税額を分けて書けば、税抜の金額で判定します。税抜5万円未満なら非課税です。
金額に応じた印紙を貼り、消印を押す
印紙代は発行する側(代金を受け取った側)が負担します。
| 記載金額(売上代金) | 印紙税額 |
|---|---|
| 5万円未満 | 非課税 |
| 5万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 600円 |
| 300万円超500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 2,000円 |
| 受取金額の記載がないもの | 200円 |
個人事業主なら印紙はいらない?
いりません、とは言い切れません。「営業に関しない受取書」は非課税で、医師・弁護士・税理士などの自由職業者の業務上の受取書は非課税と明示されています。一方、デザインや開発、ライティングを事業として続けているフリーランスは明示された対象ではないため、紙で税抜5万円以上なら印紙を貼る前提で考え、迷う場合は税務署に確認しましょう。
必要な印紙を貼らなかった場合、本来の印紙税額と、その2倍に相当する金額の合計(本来の3倍)の過怠税がかかります。税務調査の前に自分から申し出た場合は1.1倍に軽減されます。消印を押し忘れた場合も、その印紙の額面と同じ額の過怠税がかかります。
インボイスとして発行するときの記載事項
インボイス登録済みの人は、領収書を適格請求書として発行できます。請求書ですでに適格請求書を渡していれば、領収書に同じ記載をする必要はありません。
- 発行者の氏名または名称と登録番号「T」+13桁の番号
- 取引年月日と取引内容但し書きで業務内容が分かるようにします
- 税率ごとに区分した合計金額と適用税率フリーランスの業務は多くが10%です
- 税率ごとの消費税額1枚につき税率ごとに1回の端数処理にします
- 宛名(受け取る事業者の名称)事業者向けの取引では原則として必要です
インボイス登録をしていない人は、登録番号を書かず、「消費税」ではなく「消費税相当額」と表記するか、税込の合計だけを書きます。適格請求書と誤認されるおそれのある書類の交付は罰則の対象です。
支払い方法別の書き方
| 支払い方法 | 書き方のポイント | 紙で5万円以上の印紙 |
|---|---|---|
| 現金 | 「上記金額を正に領収いたしました」と書く | 必要 |
| 銀行振込 | 「銀行振込にて領収」と入金日を書く。二重の経費計上を防げる | 必要 |
| クレジットカード | 「クレジットカード利用」と明記する | 不要(明記した場合) |
| その他の決済サービス | 決済手段を明記する | 決済の仕組みで扱いが変わるため税務署に確認 |
実務で多いミスは、振込済みの取引に決済方法を書かずに領収書を出すことです。相手の手元に振込明細と領収書の2つの証拠が残り、二重に経費計上されるおそれがあります。「銀行振込(〇月〇日入金)にて領収」と書いておけば防げます。
電子で発行する方法と控えの保存
電子で出すとどんな良いことがある?
- 印紙代がかからない紙の文書を作成したことにならないため、金額にかかわらず印紙は不要です
- 控えの保存が自動になる会計ソフトや請求書ソフトで作れば、発行と同時にデータが残ります
- 郵送の手間と費用がないPDFをメールで送るだけで済みます
控えはどう保存する?
電子で送った領収書は、送ったデータのまま保存します。電子帳簿保存法により、電子でやり取りした取引データは印刷ではなく電子のまま保存することが必要です。基準期間の売上高が5,000万円以下で、税務調査でデータの提示に応じられる場合は、検索できるようにする要件は不要です。
| 所得税(控えの保存) | 青色申告の場合、領収書の控えなど現金預金取引等関係書類は7年(前々年分の所得300万円以下なら5年) |
|---|---|
| 消費税(インボイス登録済み) | 交付した適格請求書の写しは7年 |
| おすすめの運用 | 迷ったら7年。年別・取引先別のフォルダに、日付・取引先・金額が分かるファイル名で保存 |
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発行するときの注意点とやってはいけないこと
- 控えを必ず残す紙なら複写式か写し、データならデータのまま保存します
- 印紙を貼ったら消印を押す印紙と用紙にまたがるように押します。署名でも構いません
- 押印は必須ではない印鑑がなくても有効です。求められたら電子印影や認印で対応します
頼まれても応じてはいけないことは?
- 日付や金額を実際と変える前年の日付にする、印紙を避けるために5万円未満に分けるといった依頼は、不正な申告や印紙税の免れに加担することになりかねません
- 再発行で同じ原本を2枚作る紛失で再発行する場合は「再発行」と明記します
- 白紙や金額未記入で渡す改ざんのリスクを自分で作ることになります
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よくある質問(FAQ)
本記事は2026年9月時点の法令にもとづく一般的な情報です。印紙税の扱いは文書の記載内容によって判断が分かれることがあります。迷う場合は税務署または税理士に確認してください。
● 「紙かデータか」「支払い方法」「インボイスが必要か」を決めてから、宛名・日付・金額・但し書き・発行者を書く
● インボイス登録済みなら登録番号・税率ごとの金額と適用税率・消費税額を記載する
● 紙で税抜5万円以上なら振込でも印紙が必要。データで送れば不要で、控えはデータのまま保存

