
フリーランスとして独立すると、毎月必ず発生するのが請求書の作成です。請求書に法律で決まった書式はありませんが、書くべき項目が抜けていると入金が遅れたり、インボイスの要件を満たさずに取引先に損をさせたりします。結論から言えば、基本の8項目をそろえ、インボイス登録をしていれば登録番号・税率・消費税額を加え、取引先の締め日までにPDFで送るだけで、ほとんどの取引先で通用する請求書になります。
【結論】請求書は「8項目+インボイス対応」で作り、締め日までにPDFで送る
フリーランスの請求書は、次の3つを守れば迷いません。
- 基本の8項目をそろえるタイトル、発行日、請求書番号、宛名、発行者情報、取引内容、金額(税抜・消費税・税込)、振込先と支払期限
- インボイス登録の有無で書き分ける登録していれば登録番号・税率ごとの金額と適用税率・税率ごとの消費税額を必ず書きます。未登録なら登録番号は書きません
- 源泉徴収の対象なら税額と振込金額まで書く消費税を分けて書けば、源泉徴収は税抜の報酬額で計算できます
送る時期は取引先の締め日の数日前まで、送り方はPDFのメール添付が基本です。押印は法律上不要です。
請求書は入金の根拠であると同時に、確定申告で売上を証明する書類でもあります。毎月同じ形式で作り、控えを決まった場所に保存することまでを1つの作業として習慣にしましょう。
請求書とは?見積書・納品書・領収書との違い
請求書は、提供した仕事の代金の支払いを正式に求める書類です。発行は法律上の義務ではありませんが、企業との取引では事実上必須です。ただしインボイス登録をしている人は、課税事業者の取引先から求められたら適格請求書を交付する義務があります。
| 書類 | 出すタイミング | 役割 |
|---|---|---|
| 見積書 | 受注前 | この条件・金額で引き受けるという提示 |
| 納品書 | 成果物の納品時 | 指定の成果物を納めたという確認 |
| 請求書 | 納品後・月末締め後 | 代金の支払いを求める正式な書類 |
| 領収書 | 入金後(求められた場合) | 代金を受け取ったことの証明。銀行振込なら振込記録で代わることが多い |
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請求書に書く8つの項目と書き方
次の8項目があれば、第三者が見ても「誰が・誰に・何を・いくらで・いつまでに」が分かる請求書になります。
| 1 タイトル | 「請求書」と明記。見積書・納品書と区別するため |
|---|---|
| 2 発行日 | 取引先の締め日(月末締めなら月末日)に合わせるのが一般的 |
| 3 請求書番号 | 任意だが推奨。「2026-001」のような連番にすると照合や再発行が楽になる |
| 4 宛名 | 会社宛は「株式会社〇〇 御中」、担当者宛は「株式会社〇〇 〇〇部 〇〇様」。御中と様は併用しない |
| 5 発行者情報 | 氏名または屋号、住所、電話番号、メールアドレス。インボイス登録済みなら登録番号もここに書く |
| 6 取引内容 | 品目・数量・単価・金額。「〇月分 〇〇の制作」のように対象期間まで書く |
| 7 金額 | 税抜金額・消費税額・税込合計を分けて書く。源泉徴収がある場合は税額と差引の振込金額も |
| 8 振込先と支払期限 | 銀行名・支店名・口座種別・口座番号・口座名義(カタカナ)と、契約で決めた支払期日 |
「報酬300,000円+消費税30,000円=330,000円」のように分けて書くと、インボイスの記載事項を満たしやすく、源泉徴収も税抜の300,000円で計算できます。「税込330,000円」とだけ書くと、源泉徴収は330,000円に対してかかります。
インボイス登録済み・未登録で変わる書き方
何が変わる?
インボイス登録済みの人が出す適格請求書には、登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額の3つが追加で必要です。未登録の人は、これまでどおりの請求書(区分記載請求書)を出します。
| 記載項目 | 登録済み(適格請求書) | 未登録 |
|---|---|---|
| 発行者の氏名・屋号 | 必要 | 必要 |
| 登録番号(Tから始まる13桁) | 必要 | 書いてはいけない |
| 取引年月日・取引内容 | 必要 | 必要 |
| 税率ごとの合計金額 | 必要(適用税率も書く) | 税込の総額でよい |
| 税率ごとの消費税額 | 必要 | 不要(書く場合は消費税相当額と表記) |
| 宛名(取引先の名称) | 必要 | 必要 |
消費税の端数はどう処理する?
適格請求書では、1枚の請求書につき税率ごとに1回だけ端数処理をします。品目ごとに消費税を計算して端数を切り捨て、それを合計する方法は認められません。切り捨て・切り上げ・四捨五入のどれを選ぶかは自由です。
未登録でも消費税分を請求していい?
請求して構いません。国税庁は、免税事業者が仕入れで負担した消費税相当額を取引価格に上乗せすることを適正な転嫁としています。ただし次の2点は守りましょう。
- 登録番号や「適格請求書」の文言を書かない適格請求書と誤認される書類を出すと罰則の対象になります
- 表記は「消費税相当額」にする「消費税」と書くより誤解を招きにくく、税込の総額だけを書く方法でも問題ありません
未登録だと取引先にどんな影響がある?
取引先は、あなたに払った消費税分の一部しか仕入税額控除ができません。経過措置で控除できる割合は、令和8年度税制改正で次のように見直されました。
| 取引の時期 | 取引先が控除できる割合 |
|---|---|
| 2026年9月30日まで | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日以後 | 控除できない |
控除できない分は取引先の負担になるため、取引先から登録や価格の見直しを求められることがあります。一方的に大幅な値下げを求められた場合は、独占禁止法やフリーランス新法の問題になりうるため、根拠を確認して話し合いましょう。
登録した人の消費税の申告はどうなる?
登録すると、売上規模にかかわらず消費税の申告・納税が必要になります。免税事業者から登録した個人は、2026年分までは納税額を売上の消費税の2割にできる「2割特例」、2027年分・2028年分は3割にできる「3割特例」を使えます。3割特例は、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることなどが要件で、届出は不要です。申告期限は翌年3月31日です。
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源泉徴収がある場合の書き方と計算
自分の仕事は源泉徴収の対象?
原稿料・デザイン料・講演料・写真撮影料などは対象で、システム開発やプログラミングの報酬は原則として対象外です。また、支払う側が源泉徴収義務者でない場合(従業員のいない個人事業主など)は源泉徴収されません。
- 対象になる主な報酬記事の執筆、翻訳、Webデザイン・グラフィックデザイン、イラスト、写真撮影、講演・セミナー講師
- 原則として対象外の報酬システム開発、プログラミング、Webサイトのコーディングのみ、データ入力、事務代行
源泉徴収税額の計算式は?
| 1回の報酬が100万円以下 | 報酬額×10.21% |
|---|---|
| 1回の報酬が100万円超 | (報酬額-100万円)×20.42%+102,100円 |
| 振込金額 | 税抜報酬額+消費税額-源泉徴収税額 |
| 例(報酬150万円) | (150万円-100万円)×20.42%+102,100円=204,200円 |
報酬額と消費税額が請求書で明確に分かれていれば、税抜の報酬額だけを対象に計算できます。この扱いはインボイス制度の開始後も変わっていません。源泉徴収税額の記載は義務ではありませんが、書いておくと取引先の経理が照合しやすく、入金額のずれにもすぐ気づけます。
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【記入例】職種別の請求書3パターン
よくある3つのケースで、請求書の金額欄をどう書くかを示します。ほかの項目は、8項目の表のとおりに記入してください。
例1|Webライター(インボイス登録済み・源泉徴収あり)
| 発行者欄 | 氏名・屋号・住所・連絡先、登録番号 T1234567890123 |
|---|---|
| 取引内容 | 2026年9月分 記事執筆 10本×20,000円 |
| 小計(10%対象) | 200,000円 |
| 消費税(10%) | 20,000円 |
| 合計 | 220,000円 |
| 源泉徴収税額 | -20,420円(200,000円×10.21%) |
| お振込金額 | 199,580円 |
例2|エンジニア(インボイス登録済み・源泉徴収なし)
| 発行者欄 | 氏名・屋号・住所・連絡先、登録番号 T9876543210123 |
|---|---|
| 取引内容 | 2026年9月分 Webアプリケーション開発(準委任・稼働160時間) |
| 小計(10%対象) | 600,000円 |
| 消費税(10%) | 60,000円 |
| お振込金額 | 660,000円 |
システム開発の報酬は原則として源泉徴収の対象外なので、源泉徴収の欄は設けません。精算幅のある契約なら、稼働時間と精算の計算も明細に書いておくと確認がスムーズです。
例3|デザイナー(インボイス未登録・源泉徴収あり)
| 発行者欄 | 氏名・屋号・住所・連絡先(登録番号は書かない) |
|---|---|
| 取引内容 | 2026年9月分 バナーデザイン一式 |
| 報酬 | 150,000円 |
| 消費税相当額 | 15,000円 |
| 合計 | 165,000円 |
| 源泉徴収税額 | -15,315円(150,000円×10.21%) |
| お振込金額 | 149,685円 |
請求書を送る時期・方法と送付メールの例文
いつまでに送ればいい?
取引先の締め日の数日前までに届くように送ります。締め日を過ぎると翌月の処理に回り、入金が1か月遅れることがあります。初めての取引先には、締め日・支払日・送付先・請求書の宛名を最初に確認しておきましょう。
支払期日は、2024年11月に施行されたフリーランス新法により、発注者が従業員を使用する事業者であれば成果物や役務を受け取った日から60日以内で定めることとされています。請求書の送付が遅れたことを理由に支払いを先延ばしされないよう、早めに送ることが大切です。
どうやって送る?
- メールでPDFを添付する最も一般的です。WordやExcelのままだと表示が崩れたり書き換えられたりするため、必ずPDFにします
- 取引先の請求書システムにアップロードする指定がある場合は、そのシステムの手順に従います
- 郵送する原本を求められた場合のみ。送付状を同封し、送った日付を控えておきます
押印は法律上不要です。取引先から求められた場合だけ、認印か電子印鑑を押せば十分です。
請求書を送るメール(例文)
件名:【〇〇デザイン】2026年9月分 請求書送付のご案内
株式会社〇〇
〇〇部 〇〇様
いつもお世話になっております。〇〇デザインの〇〇です。
2026年9月分の請求書をお送りいたします。
ご請求金額:149,685円(源泉徴収税額控除後)
お支払期限:2026年10月31日
添付ファイル:請求書_2026年9月分_〇〇デザイン.pdf
内容にご不明な点がございましたら、お気軽にお知らせください。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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入金されない・請求を間違えたときの対処法
支払期限を過ぎても入金されないときは?
感情的にならず、次の順番で段階的に対応します。多くは経理の処理漏れや請求書の未着が原因です。
入金状況と送付記録を確認する
口座の入金明細と、請求書を送った日時・宛先を確認します。自分の送付漏れがないかを先に確かめます。
担当者にメールで確認する
期限の翌営業日を目安に、請求書を再送しつつ入金予定日を尋ねます。
書面で正式に督促する
反応がなければ、期限を切った督促状を送ります。記録を残すため内容証明郵便を使う方法もあります。
外部の窓口に相談する
フリーランス・トラブル110番(無料・匿名可)で、弁護士に相談できます。
入金を確認するメール(例文)
件名:【〇〇デザイン】2026年9月分ご請求のお支払いについて
株式会社〇〇
〇〇部 〇〇様
いつもお世話になっております。〇〇デザインの〇〇です。
10月3日にお送りした2026年9月分の請求書(149,685円、お支払期限10月31日)について、本日時点で入金を確認できておりません。
行き違いでしたら申し訳ございません。念のため請求書を再度添付いたしますので、お支払予定日をお知らせいただけますと幸いです。
請求書の内容を間違えたときは?
取引先に連絡し、正しい内容の請求書を作り直して差し替えます。請求書番号は新しくし、「〇月〇日付請求書(No.〇〇)の差し替え」と明記すると混乱を防げます。インボイス登録済みの人は、誤りのある適格請求書を交付した場合、修正した適格請求書を交付する義務があります。
振込手数料を差し引かれていたら?
振込手数料は、特に取り決めがなければ支払う側の負担が原則です。事前に合意していないのに報酬から差し引かれた場合、フリーランス新法の禁止行為(報酬の減額)に当たるおそれがあります(1か月以上の業務委託の場合)。どちらが負担するかは、契約時に書面で決めておきましょう。
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請求書の控えの保存期間と保存方法
発行した請求書の控えは、確定申告で売上を証明する書類です。保存期間は所得税と消費税で決まっており、迷ったら長いほうの7年にそろえるのが安全です。
| 書類 | 保存期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 発行した請求書の控え(所得税) | 5年 | 青色・白色とも、請求書・見積書・納品書などは5年 |
| 交付した適格請求書の写し(消費税) | 7年 | インボイス登録済みなど課税事業者の場合 |
| 帳簿 | 7年 | 青色申告の帳簿、白色申告で収入金額や必要経費を記載した帳簿 |
| 領収書・預金通帳など | 7年(青色で前々年分の所得が300万円以下なら5年) | 青色申告の現金預金取引等関係書類 |
メールやWebで受け取った請求書などの電子取引データは、電子帳簿保存法により印刷ではなく電子データのまま保存することが義務づけられています。ファイル名に「日付・取引先・金額」を入れ、年月別のフォルダに保存しておけば、確定申告のときにもすぐ探せます。
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送る前に確認したい7つのチェック項目
請求書のミスの多くは、送る前の1分の確認で防げます。次の7つを毎回チェックしましょう。
- 宛名の会社名・部署名・敬称が正しい御中と様を併用していないかも確認します
- 対象期間と取引内容が契約と一致している精算幅がある契約なら稼働時間の計算も確認します
- 税抜・消費税・税込の金額が合っている内税と外税が混ざっていないか確認します
- 源泉徴収は税抜の報酬額で計算している100万円を超える報酬は超えた部分に20.42%を使います
- インボイス登録済みなら登録番号・税率・消費税額がある未登録なら登録番号を書いていないか確認します
- 振込先の口座名義がカタカナで正確に書かれている屋号付き口座なら、屋号と氏名の両方を正確に書きます
- ファイルはPDFで、ファイル名で内容が分かる「請求書_年月_屋号.pdf」のようにそろえます
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よくある質問(FAQ)
本記事は2026年9月時点の法令にもとづく一般的な情報です。源泉徴収の対象かどうかや消費税の扱いは、契約内容によって変わることがあります。判断に迷う場合は、税務署の相談窓口や税理士に相談してください。
● 請求書は基本の8項目で作り、インボイス登録済みなら登録番号・適用税率・消費税額を加える
● 源泉徴収は消費税を分けて書けば税抜で計算でき、振込金額まで書くと照合しやすい
● 締め日の数日前までにPDFで送り、入金されなければ確認→督促→外部相談の順で対応する

