
フリーランスが仕事を受けるとき、口約束だけで進めるのは危険です。報酬の未払いや業務範囲の認識のずれなど、契約書がないことで起きるトラブルは少なくありません。結論から言えば、契約書はゼロから作らず、信頼できるテンプレート(ひな形)をもとに、業務内容・報酬・支払期日・権利・責任の上限を自分の取引に合わせて書き換えるのが現実的です。記載する項目、テンプレートの使い方、条文の構成、見落としやすい注意点、相手の契約書で確認することまでまとめました。
【結論】テンプレートをもとに、取引に合わせて書き換える
フリーランスの契約書は、次の3点を押さえれば迷いません。
- ゼロから作らずテンプレートを使う公的機関や専門家が監修したひな形をもとにすると、必要な項目の抜け漏れを防げます
- 特に大事な5項目を自分の取引に合わせる業務の範囲、報酬と支払期日、契約の形(請負か準委任か)、著作権などの権利、損害賠償の上限です
- 相手の書式が来たら、そのまま署名しない発注者が用意した契約書は発注者に有利なことがあります。確認して、必要なら修正を相談します
2024年11月に施行されたフリーランス新法でも、発注者には取引条件を書面やメールで示すことが求められています。契約書は相手を疑う書類ではなく、お互いを守る土台です。
業務委託契約の基本(請負と準委任の違いや、会社員の雇用契約との違い)は、別の記事でまとめています。契約の仕組みを理解してから契約書を見ると、どこに注意すべきかが分かります。
あわせて読みたい(業務委託契約の基本)
なぜ契約書が必要?フリーランス新法で守られること
- トラブルのときの証拠になるチャットや口頭の合意は後から食い違いやすく、報酬の未払いや追加作業の要求で不利になります
- 業務の範囲が明確になるどこまでが報酬に含まれるかを決めておくと、際限のない修正を断る根拠になります
- 信頼できるプロという印象を与えるきちんと契約を交わす姿勢は、取引先からの信頼につながります
| 取引条件の明示 | 発注者は、業務内容・報酬額・支払期日などを書面かメールなどで明示する |
|---|---|
| 報酬の支払期日 | 成果物を受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間内に支払う |
| 禁止される行為 | 1か月以上の業務委託では、受け取りの拒否、報酬の減額、不当なやり直しなどが禁止される |
| 中途解除の予告 | 6か月以上の継続的な業務委託を解除するときは、原則30日前までに予告する |
あわせて読みたい(フリーランス新法と契約の注意点)
記載する項目と、業務委託契約書の条文の構成
| 項目 | 書く内容 | 重要度 |
|---|---|---|
| 業務内容 | 委託される仕事の範囲、成果物の定義、修正の回数 | 特に重要 |
| 報酬・支払期日 | 金額(税抜か税込か)、計算方法、支払日、振込手数料の負担 | 特に重要 |
| 契約の形 | 請負(成果物の完成)か準委任(業務の遂行)か | 特に重要 |
| 知的財産権 | 著作権の帰属、譲渡する範囲、実績として公開してよいか | 特に重要 |
| 損害賠償 | 賠償する範囲と上限額 | 特に重要 |
| 契約期間・更新 | 開始日と終了日、自動更新の有無 | 重要 |
| 検収 | 納品後の確認の期限と方法(請負の場合) | 重要 |
| 秘密保持 | 業務で知った情報の扱い | 重要 |
| 再委託 | ほかの人に仕事を任せてよいか | 必要に応じて |
| 契約の解除 | 途中で解除できる条件と予告期間 | 重要 |
| 紛争の解決 | 争いになったときの裁判所(管轄) | 必要に応じて |
業務委託契約書の基本的な構成は?
| 前文 | 「〇〇(以下「甲」)と〇〇(以下「乙」)は、次のとおり業務委託契約を締結する」 |
|---|---|
| 第1条〜第2条 | 目的、委託する業務の内容(詳細は別紙の仕様書や発注書で定める) |
| 第3条〜第4条 | 報酬と支払方法、費用の負担 |
| 第5条〜第6条 | 納品と検収、契約期間 |
| 第7条〜第9条 | 知的財産権、秘密保持、再委託 |
| 第10条〜第12条 | 損害賠償、契約の解除、反社会的勢力の排除 |
| 第13条〜第14条 | 協議事項、管轄裁判所 |
| 末尾 | 契約日、双方の住所・氏名(屋号)・押印または電子署名 |
あわせて読みたい(契約の種類と見積もり)
テンプレートの入手先と、使うときの手順
- 公的機関のひな形公正取引委員会や厚生労働省は、フリーランス新法で明示すべき取引条件の記載例を公開しています
- 業界団体や専門家監修のひな形職種ごとの注意点が反映されたものを選ぶと安心です
- 電子契約サービスのテンプレート署名や保管までまとめてでき、紙の印紙代もかかりません
取引に合うひな形を選ぶ
成果物を納める仕事なら請負型、稼働や作業に対して報酬を受ける仕事なら準委任型のひな形を選びます。
特に大事な5項目を書き換える
業務の範囲、報酬と支払期日、契約の形、知的財産権、損害賠償の上限を、実際の取引に合わせます。
取引先と内容をすり合わせる
案を送り、疑問点や修正の希望を話し合ってから確定します。
署名して保管する
紙なら2通作って双方が保管し、電子契約なら署名済みのデータを保存します。
見落としやすい注意点と、相手の契約書で確認すること
- 請負か準委任かで責任が変わる請負は完成させる責任があり、納品後に不具合が見つかると、知ってから1年以内の通知で修理や減額を求められることがあります
- 著作権の譲渡は範囲を明確に翻案権など一部の権利は、契約書で特に書かないと譲渡されたとはみなされません。実績として公開してよいかも決めておきます
- 損害賠償には上限を設ける上限がないと、報酬を大きく超える賠償を求められるおそれがあります。「受け取った報酬の額まで」などと定めるのが一般的です
- 紙の請負契約には収入印紙が必要なことがある契約金額が1万円以上の請負契約書は印紙税の対象です(100万円以下なら200円)。電子契約なら印紙は不要です
相手が用意した契約書で確認することは?
- 業務の範囲があいまいでないか「その他付随する業務」など、範囲が際限なく広がる書き方に注意します
- 支払期日が遅すぎないか成果物を受け取ってから60日を超えていないか確認します
- 損害賠償に上限があるか上限がなければ、報酬額までにするよう相談します
- 一方的に解除できる条項がないか発注者だけがすぐに解除できる内容なら、予告期間を設けるよう相談します
- 競業避止が厳しすぎないか同業の仕事を長期間・広い範囲で禁止する条項は、ほかの取引先との仕事を妨げます
契約の内容に不安がある場合や、トラブルになった場合は、フリーランス・トラブル110番で弁護士に無料で相談できます。高額な契約や長期の契約は、署名の前に弁護士に確認してもらうと安心です。
あわせて読みたい(権利・交渉・賠償)
契約書を交わしたあとに気をつけること
- 変更は書面やメールで残す業務内容や報酬を変えるときは、口頭で済ませず記録に残します
- 更新の時期を管理する自動更新の有無と、更新しない場合の連絡期限を把握しておきます
- 請求書は契約の内容とそろえる金額、税の扱い、支払期日が契約書と一致しているか確認します
あわせて読みたい(更新・終了・請求)
よくある質問(FAQ)
本記事は2026年9月時点の一般的な情報で、法的な助言ではありません。契約の内容は取引によって適切な形が変わります。高額な契約や判断に迷う内容は、弁護士に確認してください。
● 契約書はテンプレートをもとに作り、業務範囲・報酬と支払期日・契約の形・権利・賠償の上限を書き換える
● 相手の契約書はそのまま署名せず、範囲・支払期日・賠償の上限・解除の条件を確認して修正を相談する
● 紙の請負契約は印紙に注意。電子契約なら不要。困ったらフリーランス・トラブル110番へ
