
フリーランスにとって最も怖いのは、病気やケガで半年、1年と長く働けなくなることです。会社員には傷病手当金がありますが、国民健康保険には原則としてありません。結論から言えば、貯蓄で数か月しのげない人や、住宅ローン・子どもの教育費を抱える人には、就業不能保険か所得補償保険で「収入の穴」を埋める備えが必要です。とくに障害年金が始まるまでの約1年半は公的な収入がほぼないため、ここをどう埋めるかが選び方の核心です。
【結論】貯蓄で数か月しのげないなら、就業不能への備えは必要
就業不能保険の必要性は、次の3つで判断します。
- 生活費の半年分以上の貯蓄があるかなければ、長期の入院や療養で家計がすぐ立ち行かなくなります
- 働けなくても毎月出ていくお金が大きいか住宅ローン、家賃、子どもの教育費、家族の生活費を自分の収入で支えているか
- 公的保障で足りるか障害基礎年金は1級・2級だけで、2級なら月約7.1万円。多くの人は生活費に届きません
貯蓄が十分にあり、家族の収入でも生活できるなら、保険に入らず貯蓄で備える選択も合理的です。
長期に働けなくなる確率は高くありませんが、起きたときの影響は致命的です。「めったに起きないが、起きたら家計が崩れるリスク」にこそ保険を使うのが、保険料を無駄にしない考え方です。
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就業不能保険とは?所得補償保険との違い
就業不能保険は、病気やケガで長く働けない状態になったときに、毎月決まった給付金を受け取れる保険です。主に生命保険会社が扱い、60歳・65歳など長い期間の保障を設定できます。似た保険に、損害保険会社が扱う所得補償保険があります。
| 項目 | 就業不能保険 | 所得補償保険 |
|---|---|---|
| 主な取扱い | 生命保険会社 | 損害保険会社 |
| 給付が続く期間 | 長期(60歳・65歳までなど) | 短期(1〜2年が中心。長期型もある) |
| 給付までの待機 | 60日・180日などが多い | 7日などが多い |
| 向いている備え | 数年単位の長期の就業不能 | 数か月から1〜2年の就業不能 |
| 給付額の決め方 | 加入時に決めた定額 | 平均の所得をもとに上限が決まることが多い |
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会社員との違いは?
| 保障 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 最長1年6か月、給与の約3分の2 | 国民健康保険には原則なし |
| 障害年金 | 障害基礎年金+障害厚生年金(3級や障害手当金もある) | 障害基礎年金のみ(1級・2級だけ) |
| 仕事中のケガ | 労災保険 | 労災保険の特別加入をしていれば対象 |
| 医療費 | 高額療養費制度 | 高額療養費制度(同じ) |
障害基礎年金はいくら?
| 1級 | 年105万9,125円(月約8.8万円) |
|---|---|
| 2級 | 年84万7,300円(月約7.1万円) |
| 子の加算 | 2人目まで1人につき年24万3,800円、3人目以降は1人につき年8万1,300円 |
| 受け取れる時期 | 原則として初診日から1年6か月後の障害認定日から |
| 保険料の条件 | 初診日の前々月までの加入期間の3分の2以上を納付または免除、または直近1年間に未納がないこと |
障害基礎年金は、保険料の納付要件を満たしていないと受け取れません。払えない時期は未納のままにせず、免除や納付猶予を申請しておくことが、将来の障害年金を守ることにつながります。
収入の穴はいくら?
月の生活費25万円の人が、長く働けなくなった場合で考えます。
| 期間 | 公的な収入 | 毎月の不足 |
|---|---|---|
| 働けなくなってから1年6か月 | ほぼなし(障害年金はまだ出ない) | 約25万円 |
| 1年6か月以降(2級と認定された場合) | 月約7.1万円 | 約18万円 |
| 1年6か月以降(1・2級に該当しない場合) | なし | 約25万円 |
最初の1年半だけで約450万円が不足します。この期間を貯蓄と保険のどちらで埋めるかが、就業不能保険を検討するうえでの出発点です。
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貯蓄・保険・公的保障の組み合わせ方
期間ごとに、何でまかなうかを決めると無駄のない備えになります。
最初の数か月|貯蓄で乗り切る
保険の待機期間(支払対象外期間)の間は給付がありません。生活費の3〜6か月分は現金で持っておきます。
数か月から1年半|就業不能保険・所得補償保険で埋める
公的な収入がほぼない期間です。保険の給付で生活費の不足分をまかないます。
1年半以降|障害年金に保険を上乗せする
障害基礎年金を受け取れる場合も、不足分を長期の就業不能保険で補います。
保険以外に使える備えは?
- 小規模企業共済病気やケガで廃業した場合も共済金を受け取れます。掛金の範囲内での貸付制度もあります
- 労災保険の特別加入2024年11月から、企業などから業務委託を受けて働くフリーランスは、業種を問わず特別加入できるようになりました。仕事中や通勤中のケガ・病気に備えられます
- 高額療養費制度医療費の自己負担は月ごとに上限があります。医療費そのものより、収入の減少への備えを優先しましょう
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加入前に確認する5つのポイント
就業不能保険は「思っていた状況で給付されない」というミスマッチが起きやすい保険です。次の5点を必ず確認しましょう。
- 就業不能状態の定義入院や医師の指示による在宅療養が条件の商品が多く、「仕事を休んでいる」だけでは対象外のことがあります
- 支払対象外期間(待機期間)60日・180日など。自分の貯蓄でしのげる期間に合わせて選びます。短いほど保険料は上がります
- 給付タイプ一定期間は半額になる「ハーフタイプ」は、傷病手当金がある会社員向けの設計です。フリーランスは最初から満額の「標準タイプ」が基本です
- 精神疾患の扱いうつ病などが対象外、または給付の回数や期間に上限がある商品があります
- 保険期間と給付の上限何歳まで保障されるか、給付金の総額や期間に上限があるかを確認します
給付金の月額はいくらにする?
| 計算式 | 月の生活費-働けなくても入るお金(家族の収入・家賃収入など) |
|---|---|
| 例 | 生活費25万円、配偶者の収入から家計に回せる額10万円→給付金は月15万円を目安に設定 |
| 注意 | 多すぎる給付額は保険料が高くなるだけでなく、所得補償保険では平均所得を超える額は設定できないことが多い |
保険料と給付金の税金は?
- 保険料は経費にならない自分のための保険なので、事業の経費には入れられません
- 保険料は所得控除の対象就業不能保険も所得補償保険も、一般に介護医療保険料控除の対象です(所得税で最大4万円)
- 給付金は非課税病気やケガで受け取る給付金は、所得税がかかりません
就業不能保険が必要な人・優先度が低い人
| あなたの状況 | 必要性 | 理由 |
|---|---|---|
| 自分の収入だけで家族を支えている | 高い | 働けなくなると世帯の収入がゼロになる |
| 住宅ローンを返している | 高い | 団体信用生命保険は死亡・高度障害が中心で、就業不能は対象外の商品が多い |
| 独身で貯蓄が少ない | 高い | 頼れる収入がなく、貯蓄もすぐ尽きる |
| 生活費の1〜2年分以上の貯蓄がある | 低い | 障害年金が始まるまでの期間を貯蓄でまかなえる |
| 配偶者の収入で生活できる | 低い | 働けなくても生活費の大部分がまかなえる |
よくある質問(FAQ)
本記事は2026年9月時点の制度にもとづく一般的な情報で、特定の保険商品を勧めるものではありません。保障の内容や保険料は商品によって大きく異なります。加入前に約款・重要事項説明書を確認し、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどに相談してください。
● 国保に傷病手当金はなく、障害基礎年金も原則1年6か月後から。最初の1年半が最大の「収入の穴」
● 最初の数か月は貯蓄、その後は就業不能保険・所得補償保険、1年半以降は障害年金に上乗せ
● 就業不能状態の定義・待機期間・標準タイプ・精神疾患・保険期間の5点を確認して選ぶ
