
「フリーランスは年金が少ないと聞くが、実際いくら不足するのか」「iDeCo・小規模企業共済・新NISAをどの順番で使えばいい?」——この記事では、フリーランスと会社員の老後格差を金額で比較・利用できる4つの制度の特徴と優先順位・年代別の具体的な積立戦略・2027年から始まるiDeCo掛金上限引き上げの最新情報・小規模企業共済とiDeCoを同時受け取る際の「10年ルール」の注意点まで完全解説します。
フリーランスの老後はいくら不足するか【格差を金額で比較】
「フリーランスは老後の年金が少ない」とは聞くものの、具体的にいくら不足するのかを把握している人は少数です。まず格差を金額で把握することが対策の出発点です。
| 比較項目 | フリーランス(個人事業主) | 会社員(厚生年金加入) | 差額(概算) |
|---|---|---|---|
| 老後の公的年金(月額) | 国民年金のみ 満額:約70,608円/月(2026年度) |
国民年金+厚生年金 夫婦2人モデル世帯:約237,279円/月(2026年度) ※夫が平均収入45.5万円・40年就業のモデル+妻の基礎年金 |
単身フリーランスと会社員(男性単独)の差:月約10万円以上 |
| 20年間(65〜85歳)の年金総額 | 約1,695万円(70,608円×12×20年) | 夫婦モデルで約5,695万円(237,279円×12×20年) | 約4,000万円の差(夫婦モデル比較) |
| 退職金 | なし(自分で準備が必要) | 平均約1,000〜2,000万円(勤続年数による) | 1,000〜2,000万円の差 |
| 老後に自分で準備すべき金額(概算) | 約5,000〜6,000万円以上(生活水準・寿命による) | 約2,000〜3,000万円程度 | 3,000万円以上の差 |
国民年金の満額(2024年度:月額68,000円)を受け取るためには、20歳から60歳までの40年間すべての保険料を納付する必要があります。未納・免除期間がある場合はその分だけ減額されます。フリーランスとして独立している期間も確実に国民年金保険料を納付しておくことが重要です。
フリーランスが使える4つの年金・老後対策制度
上位記事の多くが「iDeCoか小規模企業共済か」という比較だけで終わっています。フリーランスが使える制度は4つあり、それぞれ役割が異なります。
| 制度 | 役割 | 掛金上限(月額) | 節税 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ①小規模企業共済 | 退職金の代替 | 7万円(年84万円) | 全額所得控除 | 廃業・解約時に一括受取可(退職所得扱い)。事業資金の低利貸付制度あり。20年未満の任意解約は元本割れリスク |
| ②iDeCo(個人型確定拠出年金) | 老後の私的年金 | 6.8万円(年81.6万円)※2027年1月から7.5万円に引き上げ予定 | 全額所得控除+運用益非課税 | 60歳まで引き出し不可。自分で運用商品を選ぶ(元本保証型・投資信託)。運用次第で受取額が変わる |
| ③国民年金基金 | 公的年金の上乗せ(終身年金) | iDeCoとの合算で月6.8万円まで | 全額所得控除 | 終身年金として長生きリスクに対応。予定利率1.5%(固定)。iDeCoとの合算上限に注意 |
| ④新NISA(つみたて投資枠) | 老後資金の長期積立(資産形成) | 10万円/月(年120万円) | 運用益・売却益が非課税(所得控除なし) | いつでも引き出し可能(流動性が高い)。所得控除はないが、非課税で運用益を再投資できる |
①小規模企業共済の詳細
- 「退職金の代替」として最も優先度が高い制度:フリーランスには退職金がありません。小規模企業共済はその代替として設計された国の制度で、掛金月額1,000〜7万円(500円単位)の全額が所得控除になります
- 廃業・解約時の受け取りが有利:廃業・65歳以上での受け取りは退職所得扱い(税率が低い)になります。一括受取・分割受取・一括と分割の併用から選べます
- 事業資金の低利貸付制度が強い:積み立てた掛金の範囲内で低利(年1.5%程度)の貸付が受けられます。資金繰りが苦しい時のセーフティネットとして機能します
- 注意点:20年未満の任意解約は元本割れ:12ヶ月未満の解約は掛金が戻らず、20年未満の任意解約は元本割れになります。長期継続が前提の制度です
②iDeCo(個人型確定拠出年金)の詳細
- 掛金全額所得控除+運用益非課税の二重の節税効果:月額6.8万円(2026年まで)を拠出すると年間81.6万円が所得控除になります。さらに運用で得た利益も非課税で再投資されます。年収500万円のフリーランスが月3万円を拠出すると年間約11万円の節税効果があります
- 60歳まで引き出し不可:原則60歳まで解約・引き出しができません。流動性が低いため、生活資金の余裕がある範囲で掛金を設定することが重要です
- 運用商品を自分で選ぶ:元本保証型(定期預金)または投資信託から選んで運用します。長期間の積立なのでインデックス型投資信託(全世界株式・S&P500等)が選ばれることが多いです
どの制度を優先すべきか?加入順序の考え方
中小機構・ほけんの窓口・マネイロの上位記事は「両方使いましょう」で終わっています。実際にはどの順番で加入するかが重要です。
- まず小規模企業共済(最優先):退職金がないフリーランスにとって最も重要な制度です。月1,000円から始められるため、独立直後から最低額で加入しておくことを強く推奨します。軌道に乗ってきたら掛金を増額します。事業資金の貸付制度も使えるため、独立初期のセーフティネットにもなります
- 次にiDeCo(節税最大化):小規模企業共済と併用することで節税効果が最大化されます。小規模企業共済(月7万円)+iDeCo(月6.8万円)のフル活用で年間最大165.6万円が所得控除になります。ただし60歳まで引き出せないため、手元に生活費6ヶ月分以上の余裕資金を確保してから開始してください
- 余裕があれば新NISA(資産形成):iDeCoと新NISAの最大の違いは「いつでも引き出せるか否か」です。新NISAは売却すればいつでも資金を引き出せるため、老後資金以外の目的(住宅購入・子どもの教育費等)にも使えます。所得控除はありませんが、運用益が非課税になる長期投資として有効です
- 緊急資金(6ヶ月分の生活費)は必ず別途確保:小規模企業共済・iDeCoは長期固定の制度です。手元の流動資金が不足すると、事業の資金繰りに支障をきたします。緊急資金(生活費6ヶ月分)は普通預金・MRF等で常に確保した上で、老後対策に資金を振り向けてください
小規模企業共済:月7万円(年84万円・全額所得控除)
iDeCo:月6.8万円(年81.6万円・全額所得控除+運用益非課税)
合計所得控除:年165.6万円 → 年収500万円の場合、年間約49万円の節税効果
新NISA:余裕があれば月数万円〜(年最大120万円・運用益非課税)
両制度をフル活用すれば、30年間で小規模企業共済2,520万円+iDeCoの運用資産(年率3%で試算すると3,300万円以上)が積み立てられる計算になります。
【最新情報】2027年からiDeCo掛金上限が7.5万円に引き上げ
上位記事のほとんどが「iDeCoの掛金上限は月6.8万円」と説明しているままですが、2025年6月に年金制度改正法が成立し、2027年1月引き落とし分から掛金上限が引き上げられる予定です。
現在(〜2026年12月拠出分):個人事業主・フリーランス(第1号被保険者)のiDeCo掛金上限は月額6.8万円(年額81.6万円)。国民年金基金・付加保険料との合算上限
改正後(2027年1月引き落とし分〜):月額7.5万円(年額90万円)に引き上げ予定。年7,000円分の追加積立が可能に
加入可能年齢の引き上げ:現行の65歳未満から70歳未満に拡大予定(老齢基礎年金・iDeCoを受給していない方が対象)
小規模企業共済と合算した場合の最大所得控除(改正後):
小規模企業共済:月7万円 + iDeCo:月7.5万円 = 月14.5万円(年174万円)が所得控除の対象になります
【要注意】小規模企業共済とiDeCoの「10年ルール」
小規模企業共済とiDeCoを両方活用するフリーランスが知っておかなければならない「10年ルール」があります。上位記事のほとんどが言及していません。
iDeCoを一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が使えます。小規模企業共済を一時金で受け取る場合も「退職所得控除」が使えます。
問題:同じ「退職所得控除」を両方の一時金に同時に使うことはできません
以前は、退職金(または一方の一時金)を受け取った後「5年以上」空ければ、もう一方の一時金にも別途退職所得控除を適用できました。しかし2026年1月1日以降に受け取る退職一時金からは、この空白期間が「10年以上」に変更されます(令和7年度税制改正)。
具体例:60歳でiDeCoを一括受取 → 65歳で小規模企業共済を一括受取という計画を立てていた場合、空白期間が5年しかないため小規模企業共済の退職所得控除が満額使えなくなる可能性があります。
対策:①一方を「年金形式(分割)」で受け取る ②受け取り時期を10年以上離す ③専門の税理士に相談して受取方法を設計する
年代別・老後対策の具体的な積立戦略
年代によって積立期間・許容リスク・優先事項が異なります。年代別の現実的な戦略を整理しました。
| 年代 | 最優先 | 推奨する積立額の目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 20代後半〜30代前半 | 小規模企業共済(低額から)+iDeCo(少額から) | 小規模企業共済:月1〜3万円 iDeCo:月1〜3万円 新NISA:余裕分 |
複利効果を最大化するため早期開始が最重要。無理な金額より継続を優先。独立初期は小規模企業共済の貸付機能も活用 |
| 30代後半〜40代前半 | 小規模企業共済(増額)+iDeCo(増額) | 小規模企業共済:月3〜7万円 iDeCo:月3〜6.8万円 新NISA:月3〜5万円 |
収入が安定してきたら両制度の掛金を増額。青色申告特別控除(65万円)も合わせると節税効果が大幅に拡大する時期 |
| 40代後半〜50代 | 小規模企業共済(最大額)+iDeCo(最大額)+新NISA | 小規模企業共済:月7万円(最大) iDeCo:月6.8万円(最大) 新NISA:月5〜10万円 |
老後まで10〜20年。両制度をフル活用して最大節税。新NISAも積極活用。10年ルールを意識した受け取り計画を税理士と設計しておく |
| 50代後半以降 | 受け取り戦略の設計が最重要 | 掛金継続しながら受取方法をシミュレーション | iDeCoは60歳から受け取り開始可能。小規模企業共済は65歳以上または廃業時。10年ルールを踏まえた受け取り時期の最適化を専門家と相談 |
(35歳・フリーランスエンジニア・年収600万円):「独立と同時に小規模企業共済を月1,000円から始めました。4年経って収入が安定したので月5万円に増額。iDeCoも月3万円で並行しています。青色申告の65万円控除と合わせると年間約160万円が所得控除になり、節税額だけで年間40〜50万円近くになっています。老後の積立をしながらこれだけ節税できるのは会社員にはない特権だと思っています。」
(28歳・Webデザイナー・年収350万円):「最初は月額が少ないと意味ないと思って放置していましたが、先輩フリーランスに『今すぐ月1,000円でも始めろ』と言われてiDeCoを月5,000円から開始。3年後に月2万円に増額しました。早く始めるほど運用期間が長くなると教わり、その通りだと実感しています。小規模企業共済は来年から始める予定です。」
よくある質問(FAQ)
まとめ
フリーランスの老後対策は「公的年金(国民年金)だけでは月15万円・20年で3,600万円以上不足する」という現実を直視し、小規模企業共済・iDeCo・新NISAを組み合わせて早期から始めることが最も重要です。最優先は小規模企業共済(月1,000円から)・次にiDeCo(余裕資金から)・余裕があれば新NISAという順序が現実的です。
• フリーランスの老後格差:国民年金満額は月70,608円(2026年度)。会社員夫婦モデルの厚生年金は月237,279円(2026年度)。20年間で約4,000万円の差(夫婦モデル比較)。退職金差1,000〜2,000万円を含めると5,000〜6,000万円以上の自己準備が必要
• 4つの制度:①小規模企業共済(退職金代替・月最大7万円・全額所得控除)②iDeCo(私的年金・現在月6.8万円・全額所得控除+運用益非課税)③国民年金基金(終身年金・iDeCoと合算上限あり)④新NISA(いつでも引き出し可・運用益非課税)
• 優先順位:①小規模企業共済(最優先)→②iDeCo(余裕資金から)→③新NISA(余裕分)→緊急資金(6ヶ月分)は別途確保
• 最新改正:2027年1月から個人事業主のiDeCo掛金上限が月6.8万円→7.5万円に引き上げ予定(年金制度改正法・2025年6月成立)
• 10年ルール(2026年1月〜):iDeCoと小規模企業共済を両方一時金で受け取る場合、退職所得控除の空白期間が5年→10年に変更。受け取り設計を事前に税理士と相談が必須
• 年代別戦略:20〜30代前半は少額でも早期開始が最重要・40〜50代は両制度フル活用・50代後半は受け取り設計の最適化
• 両制度フル活用の節税効果:小規模企業共済月7万円+iDeCo月6.8万円=年165.6万円の所得控除→年収500万円で年約49万円の節税

