
フリーランスとして所得が増えてくると、6月ごろに税務署から「予定納税額の通知書」が届くことがあります。これは、前年の所得税を基準に、その年の所得税の一部を前払いする「予定納税」の通知です。「確定申告で払ったばかりなのに、なぜ?」と戸惑う人も多いですが、仕組みを理解すれば慌てる必要はありません。この記事では、予定納税の対象者・金額・納付時期・減額申請まで、フリーランスが知っておきたいポイントを解説します。
予定納税とは?所得税の前払い制度
予定納税とは、前年の所得税額を基準に、その年の所得税の一部をあらかじめ前払いする制度です。通常、所得税は翌年の確定申告(2月16日〜3月15日)で確定して納めますが、一定額以上の所得税を納めた人は、その年の途中で先に一部を納めることになります。
「税金を前払いするなんて損では?」と感じるかもしれませんが、そうではありません。予定納税で前払いした分は、翌年の確定申告で精算されます。納めすぎていれば還付され、不足していれば差額を納めるだけ。トータルの税負担が増えるわけではありません。
予定納税は「税金の分割前払い」とイメージするとわかりやすいです。確定申告のときに1年分をまとめて払う負担を、年の途中に分散させる仕組みでもあります。通知書は6月15日までに税務署から届きます。
※出典:国税庁・各税理士事務所の解説に基づく。
対象になるのは「予定納税基準額15万円以上」
予定納税の対象になるのは、前年分の「予定納税基準額」が15万円以上の人です。予定納税基準額とは、おおむね前年の確定申告で計算された所得税額(復興特別所得税を含む)を指します。
フリーランス・個人事業主で、前年にある程度の所得税を納めた人が対象になります。一方、会社員で給与のみの人は、毎月の給与から所得税が源泉徴収されているため、予定納税の対象になることはほとんどありません。
自分が対象かどうかは、6月15日までに届く「予定納税額の通知書」で分かります。対象者には金額や納付方法が記載された通知が届くため、届いたら必ず内容を確認しましょう。通知が来ない場合は、その年は予定納税の対象外です。
※出典:起業の窓口・FPせのおたく等の解説に基づく。予定納税基準額の判定には一定の調整があります。
納付額と納付スケジュール
予定納税は、予定納税基準額の3分の1ずつを、年2回に分けて納付します。第1期と第2期で、合計すると基準額の3分の2を前払いする形です。残りの3分の1は、翌年の確定申告で精算します。
| 区分 | 納付額 | 納付期限 |
|---|---|---|
| 第1期 | 予定納税基準額の1/3 | 7月1日〜7月31日 |
| 第2期 | 予定納税基準額の1/3 | 11月1日〜11月30日 |
| 確定申告 | 残りの1/3(精算) | 翌年2月16日〜3月15日 |
たとえば予定納税基準額が30万円の場合、第1期に10万円、第2期に10万円を納め、残り10万円分を翌年の確定申告で精算します(期限が土日の場合は翌平日)。
納付方法の種類
予定納税の納付方法は、確定申告と同じく複数あります。自分に合った方法を選びましょう。
- 口座振替(事前に手続きしておくと自動で引き落とし)
- ダイレクト納付(e-Taxからの口座引き落とし)
- インターネットバンキング・ペイジー(Pay-easy)
- クレジットカード納付(決済手数料がかかる)
- スマホアプリ納付(30万円以下・手数料不要)
- 金融機関・税務署の窓口で現金納付
口座振替を設定しておけば、納付期限に自動で引き落とされるため、納め忘れを防げます。スマホアプリ納付は30万円以下なら手数料がかからず手軽です。クレジットカード納付は手数料がかかる点に注意しましょう。
※出典:Square・国税庁の納付手続案内に基づく(2026年6月時点)。
所得が減りそうなら「減額申請」
予定納税は前年の所得を基準に計算されるため、その年の所得が前年より大きく減りそうな場合は、予定納税額が過大になってしまいます。そんなときに使えるのが「予定納税額の減額申請」です。
廃業・休業、業績の大幅な悪化、災害・盗難などで、その年の所得税が予定納税基準額より明らかに少なくなる見込みがある場合に申請できます。
| 申請する区分 | 提出期限 | 見積もりの基準日 |
|---|---|---|
| 第1期・第2期分 | 原則7月1日〜7月15日 | その年の6月30日時点 |
| 第2期分のみ | 原則11月1日〜11月15日 | その年の10月31日時点 |
減額申請には「予定納税額の減額申請書」の提出と、収支内訳書や試算表などの根拠資料が必要です。税務署の審査があり、「資金繰りが苦しい」という理由だけでは認められないこともあります。所得が減る見込みを、資料で合理的に説明できることが重要です。期限を過ぎると減額を受けられないため、早めに準備しましょう。
※出典:国税庁「予定納税額の減額申請」、freee・税理士法人小林会計等の解説に基づく。期限が土日祝日の場合は翌平日。
予定納税で気をつけたいこと
予定納税で困らないために、特に気をつけたいポイントをまとめました。
① 納税資金を準備しておく
予定納税は7月と11月にまとまった金額を納めるため、資金繰りに注意が必要です。確定申告で所得税が15万円以上になった年は、翌年の予定納税を見越して、納税資金を計画的に準備しておきましょう。
② 納付を忘れると延滞税がかかる
予定納税も、期限までに納めないと延滞税が課されます。口座振替を設定しておくと、納め忘れを防げて安心です。
③ 確定申告での精算を忘れない
予定納税で前払いした金額は、翌年の確定申告で必ず差し引いて精算します。申告書に予定納税額を記入し忘れると、二重に納付することになりかねないため注意しましょう。
④ 払いすぎは還付される
予定納税で納めた額が、実際の年間所得税より多ければ、確定申告で払いすぎた分が還付されます。所得が減った年でも、確定申告をすれば精算されるので安心です。
予定納税に関するよくある質問
フリーランスの予定納税について、特に質問の多いポイントをまとめました。
Q. 予定納税は払わないとどうなりますか?
対象者が期限までに納付しないと、延滞税が課されます。予定納税は義務なので、通知が来たら期限内に納めましょう。資金が厳しい場合は、減額申請や納付方法の工夫を検討します。
Q. 通知書が来なければ払わなくていいですか?
はい。予定納税は対象者にのみ通知書が届きます。通知が来なければ、その年は予定納税の対象外なので、納付の必要はありません。
Q. 予定納税額は経費になりますか?
いいえ。予定納税は所得税の前払いであり、経費ではありません。あくまで税金の納付であって、事業の必要経費とは別物です。確定申告で精算される性質のものです。
Q. 開業1年目でも予定納税はありますか?
予定納税は前年の所得税を基準にするため、開業1年目は対象になりません。前年に予定納税基準額15万円以上の所得税があった場合に、翌年から対象になる可能性があります。
まとめ:通知が来たら金額と期限を確認
予定納税は、所得が増えたフリーランスが直面する税金の前払い制度です。最後に要点を振り返っておきましょう。
① 予定納税は前年の所得税を基準にした「所得税の前払い」
② 対象は前年の予定納税基準額が15万円以上の人
③ 基準額の1/3ずつを7月・11月に納付(残りは確定申告で精算)
④ 所得が減る見込みなら「減額申請」ができる(審査あり)
⑤ 前払い分は確定申告で精算され、払いすぎは還付される
予定納税は「税負担が増える制度」ではなく、確定申告で精算される前払いです。とはいえ、7月・11月にまとまった資金が必要になるため、所得税が15万円を超えた年は、翌年の予定納税を見越して資金を準備しておくことが大切です。通知が届いたら、金額と納付期限を必ず確認しましょう。所得が大きく減る年は、減額申請も検討してください。

