
問い合わせのたびに金額を一から考えていると、返信が遅れたり、その場の空気で安く引き受けてしまったりしがちです。結論から言えば、料金表は「下限の単価を計算し、価値と相場で調整した価格を、含む範囲・含まない範囲とセットで3プラン前後に整理する」のが基本です。料金の決め方と計算例、載せる項目、作成手順、そのまま参考にできる見本、税込・税抜の表示ルールまで、このページで料金表を完成できるように整理しました。
【結論】フリーランスの料金表はどう作ればいい?
フリーランスの料金表とは、提供するサービスごとの基準価格と、その価格に含まれる作業範囲を一覧にした「価格の基準表」です。作るときは次の3つを押さえてください。
- 下限から価格を決める必要な月の売上と請求できる時間から下限の時間単価を出し、提供する価値と相場で上乗せ・調整する
- 範囲とセットで書く価格だけでなく、含む作業・含まない作業・修正回数・納期・税込か税抜かを明記する
- 3プラン前後に絞り、定期的に見直す比べやすい数にまとめ、特殊な依頼は「要相談」とし、実績が増えたら価格を改定する
料金表は、見積もりを速くするだけでなく、安売りを防ぐ判断の基準にもなります。
価格を自分で決めて交渉するのが苦手な場合は、相場に沿った単価の提示や条件の交渉を担当者がサポートするエージェント経由の案件を選ぶ方法もあります。
料金表とは?見積書との違いと持つメリット
料金表は案件になる前に見せる「価格の基準」、見積書は個別の案件ごとに出す「正式な提示」です。料金表をもとに条件を聞き取り、案件ごとの見積書に落とし込む流れになります。
| 比べる点 | 料金表 | 見積書 |
|---|---|---|
| 役割 | サービスごとの基準価格と範囲を示す | その案件の作業内容・金額・条件を正式に示す |
| 使う時期 | 営業・問い合わせ対応の段階 | 条件を聞き取った後、受注の前 |
| 相手 | 不特定の見込み客(公開する場合) | 特定の依頼者 |
| 金額 | 「◯円〜」などの目安でもよい | 項目ごとの確定した金額を書く |
料金表を持つメリットは、主に次の3つです。
- 返信と見積もりが速くなる毎回ゼロから金額を考えずに済み、問い合わせへの初回返信で目安を伝えられる
- 安売りを防げる事前に決めた基準があるため、その場の空気で値下げしにくくなる
- 信頼と比較のしやすさが生まれる何がいくらで、どこまで含まれるかが明確になり、依頼者が社内で予算を通しやすくなる
フリーランス法では、発注者はフリーランスに業務を委託したとき、報酬の額や給付の内容、支払期日などを書面やメールなどで直ちに明示する必要があります。料金表はあくまで価格の目安です。明示の義務は発注者側にありますが、受注が決まったら、発注書や確認メールで金額・範囲・納期・支払期日が示されているかを確かめ、足りなければ見積書などで個別に確定させましょう。
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料金表は公開すべき?公開・非公開・ハイブリッドの選び方
迷ったら「基本プランの目安は公開し、条件で大きく変わる案件は要相談にする」ハイブリッド型が選びやすい方法です。公開と非公開にはそれぞれ一長一短があります。
| 方法 | 向いている人 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 公開する | メニューが定型化しやすい人、個人や小さな事業者からの依頼が多い人 | 予算が合う人だけが問い合わせるため、やり取りが効率的になる | 他の人と価格だけで比べられやすい |
| 非公開(問い合わせ時に渡す) | 案件ごとに条件が大きく変わる人、法人との取引が中心の人 | 相手や規模に合わせて柔軟に提示できる | 問い合わせのハードルが上がり、やり取りの手間が増える |
| ハイブリッド | 多くの人 | 目安で安心感を与えつつ、調整の余地も残せる | 「◯円〜」の下限だけで判断されないよう、範囲の説明が必要 |
なお、消費税の課税事業者がウェブサイトなどで消費者(個人のお客さま)向けに価格を公開する場合は、消費税を含めた総額表示が必要です。表示のルールは後半で詳しく説明します。
料金はどう決める?下限・価値・相場の3段階と計算例
料金は「下限の時間単価で赤字を防ぎ、提供する価値で上乗せし、相場で最終調整する」順番で決めます。相場から先に決めると、自分に必要な金額を下回る価格に合わせてしまいやすいためです。
| 1 下限(コスト基準) | 必要な月の売上 ÷ 請求できる月の時間 = 下限の時間単価。必要な売上には生活費だけでなく、経費・税金・社会保険料を含める。請求できる時間からは、営業や事務、学習など報酬が出ない時間を除く |
|---|---|
| 2 価値(成果基準) | かかった時間ではなく、依頼者が得る成果に値段を付ける。「LP制作一式」「記事1本」のようにパッケージ化すると、作業が速くなっても単価が下がらない |
| 3 相場(市場基準) | 同じ職種・経験・条件の相場と比べ、極端に外れていないかを確かめる。相場は条件で大きく変わるため、下回る方向に合わせすぎない |
たとえば、Webデザイナーが「LP制作一式」の価格を決める場合は次のように計算します。
| 必要な月の売上 | 50万円(生活費・経費・税金・社会保険料を含む) |
|---|---|
| 請求できる月の時間 | 100時間(営業・事務の時間を除く) |
| 下限の時間単価 | 50万円 ÷ 100時間 = 5,000円 |
| LP制作の想定時間 | ヒアリング・構成・デザイン・修正対応まで含めて40時間 |
| 下限の価格 | 5,000円 × 40時間 = 20万円 |
| 価値と相場で調整 | 構成設計や成果の実績があれば上乗せし、相場と比べて最終的な価格を決める。想定より時間がかかる場合に備え、余裕を持たせる |
相場を調べるときは、稼働日数や商流、担当範囲などの条件をそろえた数字で比べることが大切です。職種・言語別の目安は、次の記事で確認できます。
あわせて読みたい(相場と下限の計算)
料金表には何を載せる?必須の7項目と書き方
料金表には、価格だけでなく「何が・どこまで含まれるか」を載せます。特に「含まない範囲」と「修正回数」を書いておくと、追加対応が際限なく増えるのを防げます。
| サービス名・プラン名 | 何のメニューかひと目でわかる名前。「ライト」「スタンダード」などのプラン名には、対象や用途も添える |
|---|---|
| 価格 | 税込か税抜かを必ず明記する。条件で変わる場合は「◯円〜」とし、何で金額が変わるかを書く |
| 含まれる作業範囲 | そのプランで対応する作業を具体的に書く(例:ヒアリング、構成案、デザイン、コーディング) |
| 含まれない作業・オプション | 別料金になる作業と、その料金の目安(例:追加ページ、素材撮影、原稿作成、特急対応) |
| 納期の目安 | 標準的な納品までの期間と、いつから数えるか(素材がそろってからなど) |
| 修正回数 | 料金に含まれる修正の回数と、超えた場合の料金。「大幅な方向転換は別見積もり」なども書く |
| 支払い条件・備考 | 支払期日、着手金の有無、素材支給の有無、キャンセル時の扱い、料金表の有効期限など |
デザイン料や原稿料などは、依頼者が法人や、給与を支払っている個人事業主の場合、報酬から源泉所得税が差し引かれることがあります(1回の支払金額のうち100万円以下の部分は10.21%、超える部分は20.42%)。給与を支払っていない個人の依頼者は源泉徴収をしません。受け取る金額を勘違いしないよう、備考に「源泉徴収の対象となる場合は差し引いてお支払いください」などと書いておくと、やり取りがスムーズです。
インボイス(適格請求書発行事業者)に登録しているかどうかは、依頼者が消費税の仕入税額控除を受けられるかに関わります。法人向けの料金表では、登録の有無を備考に書いておくと、相手が判断しやすくなります。
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料金表はどう作る?5ステップの手順
料金表は「棚卸し、プランの整理、価格と範囲の決定、表の作成、公開と見直し」の5ステップで作ります。初めてでも、この順番なら迷わず完成させられます。
提供できるサービスを棚卸しする
引き受けられる仕事と、過去に受けた依頼をすべて書き出します。ばらばらの作業を「制作」「運用」「相談」などにまとめると、メニューにしやすくなります。
プランを3つ前後に整理する
メニューが多すぎると、相手は選べません。対象や範囲の違いで3つ前後に絞り、プランごとの差をはっきりさせます。
価格と含む範囲を決める
下限・価値・相場の3段階で価格を決め、含む作業と含まない作業、修正回数、納期を決めます。税込か税抜かの表記もここでそろえます。
比較表の形にまとめる
プランを横に並べ、価格・範囲・納期・修正回数を同じ行でそろえると、違いが一目で伝わります。オプションは別の表にまとめます。
「要相談」の余白を残して公開・配布する
想定外の依頼は「要相談」とし、サイトへの掲載やPDFでの配布など使う場面に合わせて整えます。作成日や改定日も書いておきます。
料金表の見本は?3プランの記載例
見本は、プランごとに「対象・価格・範囲・納期・修正回数」を同じ行でそろえた比較表です。Webデザイナーが法人向けにLP制作を提供する場合の例を示します。
| 項目 | ライト | スタンダード | プレミアム |
|---|---|---|---|
| 向いている依頼 | 構成と原稿が決まっている | 構成から相談したい | 公開後の改善まで任せたい |
| 価格 | 150,000円(税抜) | 250,000円(税抜) | 400,000円(税抜) |
| 含まれる作業 | デザイン、コーディング | ヒアリング、構成案、デザイン、コーディング | スタンダードの内容に加え、公開後1か月の改善提案と修正 |
| 納期の目安 | 素材受領から3週間 | 素材受領から4週間 | 素材受領から5週間 |
| 修正回数 | 2回まで | 3回まで | 3回まで+公開後の修正 |
| オプション | 追加セクション 1つ20,000円〜、原稿作成 30,000円〜、特急対応(納期短縮) 基本料金の20% |
|---|---|
| 含まれないもの | 写真撮影、有料素材の購入費、サーバー・ドメインの費用 |
| 支払い条件 | 納品月の月末締め、翌月末払い。源泉徴収の対象となる場合は差し引いてお支払いください |
| 備考 | 適格請求書発行事業者として登録済み。修正回数を超える修正は1回10,000円。本料金表は◯年◯月◯日改定 |
単価を上げる見せ方は?料金表の4つのコツ
同じ価格でも、プランの並べ方と価値の添え方で選ばれ方は変わります。すぐに使える4つのコツを紹介します。
- 本命を真ん中に置く選択肢が3つあると、人は両端を避けて中間を選びやすい傾向があるとされる(極端回避性)。一番選んでほしいプランを中央に置く
- 上位プランで基準をつくる先に示された価格が比較の基準になりやすいとされる(アンカリング効果)。上位プランを並べておくと、本命の価格が相対的に手ごろに見えやすい。上位プランは実際に提供できる内容にする
- 価格の横に得られる価値を書く「LP制作 25万円(税抜)」より「問い合わせにつながる構成設計込み LP制作 25万円(税抜)」のほうが、価格の理由が伝わる
- 最安値で勝負しない安さで選ばれると、値下げの要求が続きやすい。範囲・品質・対応の速さなど、価格以外の違いを示す
料金表と一緒に、制作実績やお客さまの声を見せられるようにしておくと、価格の納得感がさらに高まります。
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料金表で注意すべき表示のルールは?税込表示と二重価格
消費税の課税事業者が消費者向けに価格を示す場合は、消費税を含めた総額の表示が義務です。事業者どうしの取引や、免税事業者の価格表示には総額表示の義務はありませんが、誤解を防ぐため、支払う総額や税込か税抜かがわかるように書きます。
| 相手 | 総額表示の義務 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 消費者(個人のお客さま) | あり(課税事業者の場合)。ウェブサイト、チラシ、電子メールなど媒体を問わない(口頭での提示は対象外) | 11,000円(税込)、11,000円(税抜価格10,000円) |
| 事業者(法人・個人事業主) | なし | 10,000円(税抜)、10,000円(別途消費税) |
また、「通常価格◯円のところ、今だけ◯円」のように比べる価格を並べる場合は注意が必要です。最近相当期間にわたってその価格で販売していた実績がないのに「通常価格」として示すと、景品表示法の有利誤認表示にあたるおそれがあります。
総額表示や二重価格表示に当たるかどうかは、表示の内容や相手によって異なります。判断に迷う場合は、税務署や消費者庁の窓口、税理士・弁護士などの専門家に確認してください。
職種別に料金表に何を載せる?単位と項目の例
職種ごとに料金の単位と、金額を左右する項目が違います。自分の職種で依頼者がよく質問することを、先に料金表へ書いておきましょう。
| 職種 | 料金の単位(例) | 載せると良い項目 |
|---|---|---|
| Webデザイナー | ページ単位・一式 | ページ数、スマートフォン対応、修正回数、素材支給の有無、コーディングの有無 |
| ライター | 文字単価・記事単価 | 文字数、構成・取材の有無、画像の選定、修正回数、専門性が必要なジャンルの加算 |
| エンジニア | 時間単価・月額・一式 | 対応言語・領域、月の稼働時間の範囲と精算方法、保守の有無、対応範囲 |
| 動画編集 | 本数単位・尺単位 | 動画の長さ、テロップ・効果音・BGM、サムネイル制作、修正回数、納期 |
| コンサル・相談 | 1回・月額 | 1回の時間、月の回数、相談手段、資料作成の有無、契約期間 |
あわせて読みたい(相談型の料金)
料金表はいつ見直す?改定のタイミングと既存の取引先への伝え方
料金表は少なくとも年に1回、または実績・スキル・コストが変わったときに見直します。改定した料金表は、まず新しい依頼者から適用し、既存の取引先には契約更新などの区切りで事前に相談するのが、関係を保ちやすい進め方です。
- 依頼がすぐに埋まり、断る案件が増えている
- 実績や対応できる範囲が、料金表を作ったときより増えている
- ツール代や外注費など、作業にかかるコストが上がっている
- 計算すると、実質の時間単価が下限を下回っている案件がある
当てはまる項目が多いほど、料金を上げる根拠がそろっています。反対に値下げを求められたときは、価格ではなく範囲を減らしたプランを示すと、料金表の基準を崩さずに対応できます。
あわせて読みたい(改定と値下げへの対応)
よくある質問(FAQ)
料金は「必要な月の売上 ÷ 請求できる時間」で下限の時間単価を出し、提供する価値で上乗せし、条件をそろえた相場で最終調整する
料金表には、プラン名・価格(税込か税抜か)・含む範囲・含まない範囲とオプション・納期・修正回数・支払い条件を載せる。課税事業者が消費者向けに公開するなら総額表示にする
3プラン前後の比較表にまとめ、本命を中央に置き、価格の横に価値を添える。実績やコストが変わったら見直し、改定は新しい依頼者から適用する
価格を決めるのも交渉するのも苦手な人は、相場に沿った単価の提示や条件の交渉をサポートしてくれるエージェントを使うのも一つの方法です。

