
売上が落ちた月でも同じ額が出ていく固定費を、どこから、どこまで下げればいいのか迷っていませんか。結論から言えば、固定費は「12か月分の明細で棚卸しし、使っていないものと重複しているものから削り、事業の継続・信用・公的な保険と年金・学習は削らない」のが基本です。一度底まで下げたら、あとは増やさない仕組みを回し、力は売上側に向けます。国民健康保険料の軽減や支払いが苦しいときの公的な制度、節税との違いまで、このページで判断できるように整理しました。
【結論】フリーランスの固定費はどう下げればいい?
フリーランスの固定費は、明細で棚卸しし、効果が大きく手間の小さいものから一度で底まで下げ、その後は増やさない仕組みで維持します。進め方は次の3つです。
- 12か月分の明細で棚卸しする記憶ではなく、口座とカードの明細から拾い、年払いは月割りにする
- 使っていないもの・重複しているものから削る事業の継続、信用、公的な保険と年金、学習への支出は削らない
- 増やさない仕組みをつくり、売上側に力を向ける固定費の削減には下限がある。下げ終えたら、単価や案件の構成を見直す
支払いが苦しいときは、滞納する前に、国民年金の免除や、税・保険料の減免・猶予の相談を先に検討してください。
固定費の削減で得られる一番の価値は、案件が途切れても耐えられる期間が延び、条件の悪い仕事を断れるようになることです。一方で、削れる金額には限りがあるため、下げ終えたら収入を増やす側の選択肢も持っておきましょう。
フリーランスの固定費とは?事業・生活・税と社会保険の分け方
固定費とは、売上がゼロの月でも出ていくお金のことです。案件の量に応じて増える外注費や交通費などは変動費と呼びます。フリーランスは事業と生活の支出を同じ収入から払うため、次の3つに分けて数えると整理しやすくなります。
| 区分 | 固定費(売上ゼロでも出る) | 変動費(案件の量で変わる) |
|---|---|---|
| 事業 | ツールの月額料金、会計ソフト、通信、事務所やコワーキング、賠償責任保険 | 外注費、交通費、案件ごとの素材費 |
| 生活 | 家賃、水道光熱費、通信、民間の保険、サブスク、車 | 食費、交際費、娯楽費 |
| 税と社会保険 | 国民年金(定額。令和8年度は月17,920円)、国民健康保険と住民税(前年の所得で決まるため、今年の売上が落ちても下がらない) | 所得税、消費税(所得や売上に応じて変わる) |
分けて数えるのは、事業の固定費を下げると「必要な月の売上」が下がり、生活の固定費を下げると「生活に最低限必要な額」が下がるためです。今の自分に必要なのが売上目標を下げることなのか、耐えられる期間を延ばすことなのかを決めてから削ると、生活を無理に切り詰めずに済みます。
| 必要な月の売上の目安 | 事業の固定費 + 生活の固定費 + 税と社会保険の月割り + 生活の変動費 |
|---|---|
| 計算例 | 事業の固定費3万円 + 生活の固定費15万円 + 税と社会保険の月割り5万円 + 生活の変動費5万円 = 月28万円 |
固定費の棚卸しはどうやる?3つのステップ
固定費の棚卸しは、記憶ではなく、直近12か月分の口座とカードの明細から機械的に拾うのが基本です。記憶で数えると、年払いや自動更新のものを見落としやすくなります。
明細から毎月・毎年の支払いを書き出す
直近12か月の銀行口座とクレジットカードの明細を開き、繰り返し出ている支払いをすべて書き出します。3か月分だけでは、年1回の請求を取りこぼします。
年払い・不定期の支払いを月割りにする
年額のツールや保険料、税金を12で割って月額にそろえます。ここを飛ばすと、固定費を大きく少なく見積もります。
「最後に使った日」を横に書く
金額の隣に、最後に使った日を書きます。30日以上使っていないものが、そのまま削減の候補になります。
- 年払いのサブスク月額に直すと小さく見えても、年額では大きな金額になっていることがある
- 無料期間から有料に切り替わったもの試しに登録したまま、自動で課金が始まっているケース
- 家族や別のカードで払っているもの事業用と生活用の支払いが混ざっていると拾いにくい
どの固定費から削る?効果の大きい順の優先順位
削る順番は、「効果が大きく、手間が小さいもの」からです。細かい節約から始めると、労力の割に金額が動かず、続かなくなります。
| 順番 | 対象 | やること |
|---|---|---|
| 1 | 使っていないサブスク・ツール | 直近30日使っていないものを解約する。判断に迷う要素がほとんどない |
| 2 | 役割が重なっているツール | 同じ用途のものを1つに寄せる |
| 3 | 通信・事務所・作業場所 | スマホの格安プランへの乗り換えや、光回線とスマホのセット割、コワーキングの回数券や一時利用への切り替えを検討する |
| 4 | 保険の重複 | 民間の保険で、補償内容が重なっていないかを確認する |
| 5 | 月払いから年払いへの切り替え | 1年以上使い続けると決めたものだけを年払いにする |
| 6 | 住まいや車など生活の大きな固定費 | 家賃は契約更新時の交渉や住み替え、車はカーシェアへの切り替えを、更新や買い替えの時期に合わせて検討する |
自宅で仕事をしている場合、家賃や電気代、通信費のうち仕事で使っている割合は、家事按分として経費に計上できます。支払う金額は変わりませんが、所得が下がるぶん、所得税・住民税と国民健康保険料の負担が軽くなることがあります(国民年金は定額のため変わりません)。按分の割合は、作業スペースの面積や使用時間など、説明できる根拠で決めてください。
あわせて読みたい(作業場所の見直し)
削ってはいけない固定費は?4つの例外と支払いが苦しいときの制度
事業の継続・信用・健康と公的な保険・学習に関わる支出は、金額にかかわらず削減の候補から外します。削ると、浮いた金額以上の損失につながりやすいためです。
- 事業の継続に直結するもの会計ソフト、業務に必須のツール、データのバックアップ。削ると、浮いた金額より多くの時間を失う
- 信用に関わるもの賠償責任保険やセキュリティ対策。削るのではなく、補償の重複がないかを見直す
- 健康と、公的な保険・年金国民健康保険には原則として傷病手当金がなく、働けなくなると収入が止まる。民間の所得補償保険は、削る前に必要性を確かめる。国保や年金の滞納は、延滞金や将来の年金の減少につながる
- 学習と情報への支出書籍や教材は単価の源泉。削っても今月は困らないが、1年後の稼ぐ力に響く
税金や保険料の支払いが苦しいときは、滞納する前に窓口へ相談するのが大切です。次のような制度があります。
| 国民年金 | 所得が少ないときや失業したときは、保険料の免除や納付猶予を申請できる。承認された期間は未納扱いにならない。相談先は市区町村の窓口や年金事務所 |
|---|---|
| 国民健康保険 | 所得が一定以下なら、保険料のうち均等割・平等割の部分が7割・5割・2割軽減される(所得の申告が必要)。災害や事業の休廃止などで所得が大きく減ったときの減免や徴収猶予を設けている自治体もある。相談先は市区町村の窓口 |
| 国民健康保険組合 | 職種によっては、同業者でつくる国民健康保険組合に加入でき、保険料が下がる場合がある。加入できる職種や保険料は組合ごとに異なる |
| 住民税 | 所得が大きく減った場合などに、減免や徴収猶予の制度を設けている自治体がある。相談先は市区町村の税務担当 |
| 所得税・消費税 | 一時に納めると事業や生活の継続が難しいときは「換価の猶予」(原則、納期限から6か月以内に申請)、災害・病気・事業の休廃止などのときは「納税の猶予」を税務署に申請できる場合がある |
あわせて読みたい(年金と支払いの対処)
節税と固定費削減は何が違う?手元のお金への効き方
固定費削減は手元のお金をすぐに増やしますが、共済などの控除制度による節税は、掛金を払うぶん手元のお金を一時的に減らします。どちらも大切ですが、資金繰りへの効き方が逆向きです。
| 比べる点 | 固定費削減 | 控除制度による節税 |
|---|---|---|
| 手元のお金 | 削った分だけ増える | 掛金として出ていくので、いったん減る |
| 効果が出る時期 | 翌月から | 確定申告の税額や、翌年度の住民税から |
| お金の行き先 | 手元に残る | 積立として制度の中に移る |
| 資金繰りへの影響 | 楽になる | 短期的には苦しくなることがある |
「経費になるから」と支出を増やすのも注意が必要です。経費で減るのは税金の計算の元になる所得で、払ったお金そのものは戻りません。たとえば所得税と住民税の税率が合わせて2割なら、1万円を経費にしても、税金が減るのはおよそ2,000円で、残りの8,000円は手元から出ていったままです。
個人事業主向けの積立制度である小規模企業共済は、掛金を月1,000円から7万円まで500円単位で選べ、全額が所得控除の対象になります。ただし、掛金を納めた月数が240か月(20年)未満で任意解約すると元本割れし、12か月未満だと解約手当金を受け取れません。
- 苦しいときは解約ではなく減額掛金は途中で減らせるほか、納付が難しいときの手続きも用意されている
- お金が必要なときは貸付制度納めた掛金の範囲内で借りられる制度がある
- 始めるなら続けられる金額から収入が不安定な時期でも払い続けられる額に設定する
控除の適用、加入の条件、受け取るときの課税は、所得・事業の形・年齢・受け取る理由で変わります。制度は改正されることもあるため、加入を検討するときは運営機関の最新情報を確認し、税理士などの専門家に相談してください。
あわせて読みたい(節税と税理士)
固定費を下げ終えたら何をする?単価と売上の見直し
固定費の削減には下限があるため、一度底まで下げたら、単価や案件の構成といった売上側を見直すのが次の一手です。家賃や生活費はゼロにできず、2回目以降の削減は、効果が小さいわりに生活の質や事業の体力を削りやすくなります。
見直しの出発点は、下げたあとの「必要な月の売上」から、自分の下限単価を出すことです。
| 下限の時間単価 | 必要な月の売上 ÷ 1か月に報酬が発生する稼働時間 |
|---|---|
| 計算例 | 必要な月の売上28万円、稼働が月120時間なら、28万円 ÷ 120時間 ≒ 2,333円。端数を切り上げ、時間単価2,400円を下限の目安にする |
| 次にやること | 下限単価を職種の相場と比べる。相場より低いなら、単価の見直しや案件の選び方を変える(職種別の相場は下の記事で確認できる) |
あわせて読みたい(職種別の単価相場)
固定費が低いと、条件の悪い案件に飛びつく必要がなくなり、単価を守りやすくなります。浮いたお金は目標の引き下げに使わず、案件が途切れたときに耐えられる期間に回すと、交渉でも強くなれます。
下げた固定費を維持するには?増やさないための仕組み
固定費は、「これくらいなら」と思える金額で1つずつ増えていくため、放っておくと元に戻ります。次の仕組みを習慣にしてください。
- 新しく契約したら、その場で「3か月後に見直す日」をカレンダーに入れる
- 無料期間で始めたものは、課金が始まる日の前日に通知を設定する
- 新しい契約は、今あるものを1つやめるときだけ検討する
- 年に1回、確定申告の作業とあわせて棚卸しの日を決める
- 事業用と生活用で口座とカードを分け、明細を混ぜない
特に効くのが最後の1つです。口座とカードが分かれていれば、棚卸しの手間が大きく減り、確定申告の作業も楽になります。
よくある質問(FAQ)
固定費は売上ゼロでも出るお金。12か月分の明細で棚卸しし、年払いは月割りにして「最後に使った日」を書く
使っていないもの・重複から削り、事業の継続・信用・公的な保険・学習は削らない。苦しいときは免除や猶予を相談する
節税は掛金のぶん手元のお金を減らす点で固定費削減と別物。下げ終えたら単価と売上の見直しに移る

