
フリーランスになったものの、どこから手を付ければ案件が取れるのか分からない。そんなときは、やることを順番に並べると迷いが減ります。結論から言えば、案件獲得は「強みを言葉にする、資料を整える、経路を選んで動く、初案件で実績を作る、継続と紹介で安定させる」の5ステップで進みます。各ステップでやること、手元に残すもの、つまずいたときの対処まで、この1ページで整理します。
【結論】案件獲得は5ステップで進める
ゼロから案件を獲得する手順は、次の5ステップです。前のステップで作ったものが、次のステップの材料になります。順番を飛ばすと、応募しても伝わらない、受注しても続かない、という状態になりやすくなります。
- 強みを言葉にする誰の、どんな課題を、何で解決できるかを1文にする
- 資料を整えるプロフィール、スキルシート、ポートフォリオを用意する
- 経路を選んで動く2〜3つの経路を並行し、応募や相談の数を確保する
- 初案件で実績を作る条件を確認して受け、納期と品質を守って1件終える
- 継続と紹介で安定させる続けて頼まれる関係を作り、取引先を分散する
今日できることは、これまでの経験を書き出し、強みを1文にまとめることです。30分あれば下書きができます。
営業に時間を割けない人や、交渉が苦手な人は、ステップ3でエージェントを経路の1つに入れると動きやすくなります。案件の紹介と、条件の調整を任せられるためです。
5ステップの全体像と、自分の現在地
各ステップには、終えたときに手元に残るものがあります。それがそろっているかどうかで、次へ進んでよいかを判断できます。
| ステップ | やること | 残るもの |
|---|---|---|
| 1 強みを言葉にする | 経験を棚卸しし、提供できる価値をまとめる | 強みを表す1文 |
| 2 資料を整える | 強みと実績を、相手に伝わる形にする | プロフィール、スキルシート、ポートフォリオ |
| 3 経路を選んで動く | 経路を決め、応募や相談をする | 応募と反応の記録 |
| 4 初案件で実績を作る | 条件を確認して受注し、納品する | 公開できる実績、取引先の評価 |
| 5 継続と紹介で安定させる | 継続、紹介、取引先の分散を進める | 継続の取引先、紹介の経路 |
今の状況から、始めるステップを決める
全員がステップ1から始める必要はありません。今の状況に近いものを選び、そのステップから読み進めてください。
| 何を売りにすればよいか分からない | ステップ1から |
|---|---|
| 強みはあるが、見せる資料がない | ステップ2から |
| 資料はあるが、応募先が分からない | ステップ3から |
| 応募しているが、受注に至らない | ステップ2に戻り、資料と応募文を見直す |
| 単発は取れるが、続かない | ステップ5から |
ステップ1と2は、完成度を上げるほど動き出しが遅れます。まず形にして応募し、反応を見て直すほうが早く進みます。資料は、応募を重ねながら更新していくものです。
ステップ1|強みを言葉にする
最初にやるのは、自分が何を提供できるかを、相手に伝わる言葉にすることです。ここがあいまいなままだと、応募文もプロフィールも、誰にでも当てはまる内容になります。
書き出す4つの項目
- 経験した仕事業界、担当した範囲、期間を具体的に書く
- 使える技術や知識実務で使ったものと、学習中のものを分ける
- 出した成果数字で示せるもの、相手に感謝されたこと
- 人より苦にならないこと調べること、整理すること、説明することなど
1文にまとめる型
書き出した内容を、「誰の、どんな課題を、何で解決できるか」の形にまとめます。
| 型 | (相手)の(課題)を、(自分の経験や技術)で解決します |
|---|---|
| 記入例1 | 中小企業の採用担当者の、応募が集まらないという課題を、求人原稿の作成経験で解決します |
| 記入例2 | 店舗を運営する事業者の、予約の管理に手間がかかるという課題を、業務システムの開発経験で解決します |
強みが見つからないと感じる場合は、基準を高く置きすぎていることがほとんどです。業界で一番である必要はありません。相手が自分でやるより、早く確実にできることが、仕事として成り立つ強みです。
あわせて読みたい(強みを見つけて絞り込む)
ステップ2|資料を整える
フリーランスは、自分の実力を自分で示す必要があります。相手が判断に使う資料を、先に用意しておくのがこのステップです。
| 資料 | 内容 | 使う場面 |
|---|---|---|
| プロフィール | 強みの1文、対応できる業務、稼働できる時間 | すべての経路で最初に見られる |
| スキルシート | 担当した案件ごとの期間、役割、使った技術 | エージェントへの登録、企業との面談 |
| ポートフォリオ | 制作物と、その目的、担当範囲、結果 | 制作や執筆など、成果物を見せられる職種 |
伝わる資料にする3つの点
- 担当した範囲を明記するチームの成果のうち、自分が何をしたかを書く
- 結果を添える数字が出せなければ、相手の反応や、その後の継続の有無を書く
- 応募先に合わせて順番を変える相手の業界や課題に近い実績を、先頭に置く
実績が少ないときの作り方
独立したばかりで見せられる実績がない場合は、次の方法で材料を作れます。
- 会社員時代の経験を書く社名や数値を出せない場合は、業界と規模、担当範囲で示す
- 自主制作をする架空の課題を設定し、目的と工夫した点を添えて作る
- 知人の依頼を受ける公開の許可を取り、実績として載せる
会社員時代や過去の取引で作ったものは、著作権が会社や発注者にあったり、秘密保持の約束があったりします。無断で公開すると、契約違反になるおそれがあります。載せてよいか分からないものは、相手に確認するか、内容が特定できない形にしてください。
あわせて読みたい(資料と実績を作る)
ステップ3|経路を選んで動く
資料ができたら、案件を探す経路を決めます。経路ごとに、動き出しの早さと、自分でやる作業の量が違います。
| 経路 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 知人や前の職場からの紹介 | 信頼がある状態で話が始まる | 独立したことと、できることを伝えないと声はかからない |
| エージェント | 案件の紹介と、条件の調整を任せられる | 実務の経験を求める案件が中心。手数料がかかる |
| クラウドソーシング | 応募しやすく、実績を作りやすい | 応募者が多く、単価は低めになりやすい。手数料がかかる |
| 企業への直接の提案 | 間に入る会社がなく、条件を直接決められる | 相手探し、提案、契約をすべて自分で行う |
| SNSやブログでの発信 | 相手から相談が来る状態を作れる | 成果が出るまでに時間がかかる |
フリーランス協会の「フリーランス白書2025」では、仕事を見つける経路として、「人脈(知人の紹介含む)」が72.8%、「過去・現在の取引先」が61.0%でした(複数回答)。多くのフリーランスが、すでにある関係から仕事を得ています。独立したら、まず身近な人に知らせることが、有効な一歩になります。
状況別の組み合わせ方
経路は1つに絞らず、早く動けるものと、時間をかけて育てるものを組み合わせます。
| 実務の経験が数年ある | エージェントと、知人や前の職場への連絡を並行する |
|---|---|
| 実務の経験が浅い | クラウドソーシングで実績を作りながら、知人に声をかける |
| 営業に時間を割けない | エージェントを中心にし、発信を少しずつ続ける |
| 特定の業界に強みがある | その業界の企業への直接の提案と、発信を組み合わせる |
応募と反応を記録する
動き始めたら、応募した件数、返信があった件数、面談に進んだ件数、受注した件数を記録します。どこで止まっているかが分かれば、直す場所が決まります。
- 返信が来ない応募文とプロフィールが、相手の募集内容に合っているかを見直す
- 面談で止まる実績の説明と、相手の課題への提案を準備する
- 条件が合わない応募する案件の選び方と、希望条件の伝え方を見直す
あわせて読みたい(相手を探し、提案する)
ステップ4|初案件で実績を作る
最初の1件は、収入の大きさより、公開できる実績と、取引先の評価を得ることに意味があります。次の応募で使える材料になるからです。
応募文の型
応募文は、相手の募集内容に対して、自分が何をできるかを短く伝えます。自己紹介から始めるより、相手の課題から始めるほうが読まれます。
応募文の例
募集内容を拝見しました。求人原稿の改善により応募数を増やしたい、という課題と理解しています。前職で3年間、採用担当として求人原稿の作成を担当し、原稿の見直しで応募数を増やした経験があります。実績をまとめた資料を添付します。まずは現状の原稿を拝見し、改善案を1つお出しすることも可能です。ご検討をお願いいたします。
受ける前に確認する条件
実績がほしい時期ほど、条件があいまいなまま受けてしまいがちです。次の点は、作業を始める前に文面で確認してください。
- 業務の内容と範囲どこまでが依頼に含まれるか。修正の回数
- 報酬の額税込みか税抜きか。手数料や経費の扱い
- 納期と、支払いの期日いつ納品し、いつ支払われるか
- 成果物の権利と、実績としての公開ポートフォリオに載せてよいかを先に聞く
2024年11月1日に施行されたフリーランス法では、発注する事業者は、業務の内容、報酬の額、支払いの期日などの取引条件を、書面またはメールなどで明示することが義務づけられています。条件が示されないまま作業を求められた場合は、文面での提示を求めてください。
初案件の単価の考え方
最初は相場より低めの単価で受けることも、選択肢の1つです。ただし、期間か件数を区切ることが条件です。低い単価のまま続けると、その金額が自分の基準になり、後から上げにくくなります。「最初の1件のみ」「3か月まで」のように、あらかじめ区切りを決めておきます。
「実績になるから」と無償での作業を求められた場合は、慎重に判断してください。試しの作業にも、範囲と報酬を決めるのが基本です。報酬の未払いなどのトラブルは、厚生労働省の委託で第二東京弁護士会が運営する「フリーランス・トラブル110番」で、弁護士に無料で相談できます。
納品のあとにやること
- 感想を聞く良かった点と、次に変えてほしい点を尋ねる
- 実績としての掲載を確認する公開できる範囲を、文面で確かめる
- 資料を更新するスキルシートとポートフォリオに、すぐ反映する
あわせて読みたい(案件を見極め、条件を決める)
ステップ5|継続と紹介で安定させる
単発の案件を取り続ける状態は、営業の負担が大きく、収入も安定しません。新しく探す仕事を減らし、続けて頼まれる仕事を増やすのが、このステップです。
継続につなげる
納期と品質を守り、連絡を早くします。納品のときに、次に取り組めることを1つ提案します。
紹介を頼む
満足してもらえた取引先に、同じ課題を持つ人がいれば紹介してほしいと伝えます。頼まなければ、紹介は起こりにくいものです。
取引先を分散する
1社に収入が集中すると、契約が終わったときの影響が大きくなります。複数の取引先を持つことを目指します。
単価を見直す
実績が増えたら、新しい案件から単価を上げます。既存の取引先には、契約の更新の時期に相談します。
指名される状態を作る
得意な分野を絞り、実績と考えを発信します。「この分野ならこの人」と覚えてもらえると、相談が先に来るようになります。
5つ目は、時間はかかりますが、効果が長く続きます。自分から探す営業に加えて、相手から声がかかる経路を持てるからです。専門とする分野、相手にする顧客、提供する価値を決め、プロフィールや発信の内容をそろえていきます。
あわせて読みたい(継続、紹介、指名を増やす)
つまずきやすい点と、その対処
進まないときは、やり方ではなく、1つ前のステップに原因があることが多くあります。
| つまずき | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 準備ばかりで動けない | 資料の完成度を上げようとしている | 応募する日を先に決め、その日までにできた形で出す |
| 応募しても返信がない | 誰にでも当てはまる応募文になっている | 相手の募集内容に触れ、近い実績を先頭に置く |
| 面談で決まらない | 自分の説明が中心になっている | 相手の課題を聞き、それに対して何ができるかを答える |
| 低い単価から抜け出せない | 区切りを決めずに受けている | 新しい案件から単価を上げ、経路を増やす |
| 単発で終わる | 納品して終わりにしている | 納品のときに、次の提案を1つ添える |
| 1社に頼りきりになる | 忙しさで、新しい相手を探す時間がない | 週に1時間、発信や連絡の時間を先に確保する |
継続の案件が増えるまでの期間は、人によって大きく違います。収入が安定しない時期に、条件の合わない案件を受けずに済むよう、生活費の備えを持っておくと、落ち着いて案件を選べます。
よくある質問(FAQ)
案件獲得は、強みを言葉にする、資料を整える、経路を選んで動く、初案件で実績を作る、継続と紹介で安定させる、の5ステップで進める
準備は完成を待たず、応募しながら直す。応募と反応を記録すれば、どこを直せばよいかが分かる
初案件は条件を文面で確認して受け、納品後は実績として資料に反映する。安定のためには、継続、紹介、分散、指名を進める
ステップ3の経路選びで迷う場合は、まず利用できるサービスを確かめておくと、動き出しが早くなります。エージェントは、対応する職種や案件の種類がサービスごとに違います。

