
「実績がないと案件が取れない。でも案件がないと実績ができない」。フリーランスを始めるとき、多くの人がこの壁にぶつかります。結論から言えば、フリーランスとしての実績がなくても、会社員時代の経験を実績として書き直し、信頼を補う工夫をすれば案件は取れます。
【結論】実績がなくてもフリーランスの案件は取れる?
取れます。「フリーランスとしての実績がない」ことと「スキルや経験がない」ことは別物だからです。実績がない段階では、次の3つを並行して進めてください。
- 会社員時代の経験を、実績として書き直す担当した業務と成果を、依頼する側が判断しやすい形に言い換える。多くの人は、ここだけで見せられる材料が大きく増える
- 足りない分は、小さな実績を意図的につくる自主制作、知人の仕事、クラウドソーシングの小さな案件などで、見せられる成果物を増やす
- 実績の少なさを、信頼を補う工夫で埋める紹介を頼る、相手の課題に合わせた具体的な提案をする、速く丁寧に対応する
実績は誰かから与えられるのを待つものではなく、自分でつくり、見える形に整えるものです。
フリーランスの「実績」とは、発注する側が「任せて大丈夫か」を判断するための、過去の担当範囲・成果物・成果の証拠のことです。発注する側が実績を求めるのは、判断する材料がほしいからです。つまり、実績そのものがなくても、スキル、考え方、仕事の進め方が伝われば、判断の材料は補えます。
あなたの「実績がない」はどのタイプ?タイプ別の優先順位
「実績がない」には3つのタイプがあり、タイプによって最初にやるべきことが違います。自分に近いものを確認してください。
| タイプ | よくある状況 | 最初にやること |
|---|---|---|
| 実務経験はあるが、フリーランスの実績がない | 会社員として数年働き、独立したばかり、または独立を考えている | 前職の経験を棚卸しして書き直し、人脈への連絡とエージェントへの登録を並行する |
| 実務経験が浅い | 実務は1〜2年ほど、または担当範囲が限られていた | 前職の経験を整理したうえで、足りない分を自主制作や小さな案件で補う |
| 実務経験がなく、学習中 | スクールや独学でスキルを身につけている途中 | 勤務先の副業規定を確認したうえで、会社員のまま、自主制作と小さな案件で「納品した実績」をつくることを優先する |
フリーランス協会の「フリーランス白書2025」では、副業を含むフリーランス1,053名に仕事の獲得経路(複数回答)を聞いたところ、人脈(知人の紹介を含む、72.8%)、過去・現在の取引先(61.0%)が上位で、自分自身の広告宣伝活動は33.4%、エージェントサービスは25.3%、クラウドソーシングは23.3%でした(調査期間2024年11月1日〜12月14日)。実績が少ない段階ほど、仕事ぶりを知っている人からの紹介と、実績をつくりやすい窓口を組み合わせるのが現実的です。
会社員時代の経験はどう実績にする?棚卸しと書き換え例
会社員時代に担当した業務と成果は、公開してよい範囲で書き直せば、そのまま実績として使えます。次の3ステップで棚卸ししてください。
担当した業務を、すべて書き出す
プロジェクト名は伏せたまま、業界、規模、自分の役割、担当した工程、期間を一覧にします。
成果を数字と変化で表す
「◯%改善した」「◯時間短縮した」「◯件の問い合わせにつながった」など、前と後で何が変わったかを書きます。数字が出せない場合は、関わった人数や期間でも伝わります。
依頼する側の言葉に言い換える
社内でしか通じない言葉を避け、「どんな課題を、どう解決できる人か」が伝わる表現にします。
| 職種 | 書き換える前 | 書き換えた後 |
|---|---|---|
| エンジニア | 社内システムの開発を担当 | 小売業の在庫管理システムで、設計から運用までを3年担当。処理時間を約半分に短縮 |
| デザイナー | 自社サイトのデザインを担当 | 自社サービスの申し込みページを改善し、申し込み率の向上に貢献。画面の設計から制作までを担当 |
| マーケター | 広告運用をしていた | 月◯万円規模の検索広告を運用し、問い合わせ1件あたりの費用を改善 |
| ライター・編集 | 社内報の記事を書いていた | 従業員向けの取材記事を月4本、2年間企画・執筆。取材から構成、校正までを担当 |
会社の発意にもとづき、職務上つくり、会社の名義で公表する成果物は、契約や就業規則に別の定めがなければ、原則として会社が著作者になります(著作権法15条「職務著作」。プログラムは会社名義で公表しなくても対象になります)。また、就業規則や退職時の誓約書で秘密保持の義務を負っている場合があり、顧客情報やノウハウなどは不正競争防止法の「営業秘密」として保護されることもあります。
成果物そのものを載せる場合は、前職の会社の許可を得るか、社名や数値を伏せて「担当した内容と役割」を文章で説明する形にしてください。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に確認すると安心です。
足りない実績はどう補う?前職の経験で足りない分だけつくる
前職の経験だけでは応募先の仕事に近い材料が足りない場合に、足りない分だけ、見せられる成果物を意図的につくります。代表的な4つの方法は次のとおりです。方法の詳しい進め方は、下の関連記事で解説しています。
| 方法 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自主制作 | デザイナー、エンジニア、ライターなど、成果物で見せられる職種 | 実案件ではないことを明記する。実在する企業のロゴや名称を使った作品は、権利や誤解のおそれがあるため避ける |
| 知人・友人の仕事を手伝う | 周りに小さな事業をしている人がいる | 無償でも、作業範囲と実績として載せてよいかを先に文書で確認する |
| クラウドソーシングの小さな案件 | 実績を早く1件つくりたい、副業から始めたい | 単価が低めの案件も多く、報酬から手数料が引かれる。掲載の可否を応募前に確認する |
| 期間を限ったモニター価格 | 最初の数件で推薦の言葉や実例がほしい | 期間と件数を決め、通常の価格も最初に伝えておく |
作品を並べるだけでなく、「どんな課題を想定したか」「どう工夫したか」「どんな結果を目指したか」をセットで書くと、実案件に近い説得力が出ます。発注する側は、成果物だけでなく、考え方や進め方も判断の材料にしています。
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実績が少ないときのポートフォリオはどう作る?
実績が少ないときのポートフォリオは、作品の数より応募する仕事に合った作品を、考え方と一緒に見せることが大切です。次の4つの要素を入れてください。
- プロフィール対応できる業務、得意な分野、これまでの経験を短くまとめる
- 作品や成果物自主制作でもよい。実案件か自主制作かを明記する
- 制作の背景と工夫課題、解決の方法、結果の流れで説明する
- 連絡先問い合わせの方法と、対応できる時期や稼働日数
作るときの3つのポイント
- 応募する仕事に合わせて絞る何でも載せるより、応募先に近い作品を3〜5点に絞るほうが伝わりやすい
- 定期的に更新する古い作品ばかりだと、今は活動していない印象を与える
- 無料で始められる場所から用意するブログや作品の共有サービス、コードの公開サービスなど、すぐに使える場所から始めてよい
あわせて読みたい(ポートフォリオ)
実績の代わりに信頼を補う材料は?6つの見せ方
実績が少ないときは、「任せても大丈夫」と判断できる別の材料を用意します。次の6つのうち、用意できるものから組み合わせてください。
- 前職の上司や取引先からの推薦の言葉仕事ぶりを知る人の一言は、実績の少なさを補う強い材料になる。載せる前に本人の了承を得る
- 担当した工程と期間がわかるスキルシートどの工程を、どのくらいの期間、どんな規模で担当したかを一覧にする
- 資格や学習の記録仕事に関係する資格や、継続して学んでいる記録は、スキルの裏づけになる
- 公開しているコードや作品実際に手を動かした成果物を見てもらえる状態にしておく
- 初回は範囲を小さく切り出して提案する「まずはこの部分だけ」と範囲を小さくすると、相手は試しやすくなる
- 進め方と連絡の頻度をはっきり示す「週に1回、進み具合を報告します」など、仕事の進め方が見えると安心してもらいやすい
実績が少ない段階で案件を取るには?窓口の順番と提案文の型
実績が少ないうちは、信頼を補いやすい窓口から順に使うのが近道です。おすすめの順番は次のとおりです。
- 前職の同僚や取引先、知人に独立を伝える仕事ぶりを知っている相手なら、実績の少なさが問題になりにくい
- 実務経験があれば、エージェントに登録する会社員時代の実務経験を評価して、案件を紹介してもらえることが多い。案件の多くは実務経験を求めるため、経験が浅い場合は紹介が限られることもある
- クラウドソーシングで小さな案件に応募する実績が少なくても応募できる仕事がある。最初の数件で評価と実例をつくる
- SNSやブログで、できることを発信するすぐには成果が出にくいが、続けるほど問い合わせの入口になる
退職時の誓約書や就業規則で、競業や前職の取引先への営業・引き抜きが禁止されていることがあります。前職の取引先に連絡する前に内容を確認し、判断に迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。
実績が少ないときの提案文(例文)
はじめまして、◯◯(職種)の◯◯と申します。募集内容を拝見し、◯◯の課題を解決したいとお考えだと理解しました。
私はこれまで会社員として◯年間、◯◯を担当し、◯◯という成果を出してきました。フリーランスとしての実績はまだ多くありませんが、今回の業務に近い作品を下記にまとめています。
進め方としては、まず◯◯を確認したうえで、◯日までに◯◯をお送りする形を想定しています。ご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。
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実績がないうちの単価はどう決める?無料・低単価の注意点
実績が少ないうちも、単価は相場を確認したうえで決め、無料や極端な低単価は期間と件数を限るのが基本です。一度下げた単価は、その後の基準になりやすいためです。
- 先に相場を確認するエージェントの公開案件などで、自分の職種と経験年数に近い案件の単価を確認する
- 実績の少なさは、作業範囲で調整する単価を大きく下げるより、最初は範囲の小さい仕事を受けて、確実に納品する
- 無料やモニター価格は、期間と件数を決める「最初の3件まで」など上限を決め、通常の価格も伝えておく
- 無償でも条件を文書で残す作業範囲、納期、実績として載せてよいかを、メールなどで確認しておく
実績づくりを焦って無料や極端な低単価の仕事を続けると、それが自分の標準になり、単価を上げにくくなります。実績が数件できたら、次の案件からは相場に近い単価に移ると決めておきましょう。
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実績をつくっても案件が決まらないときは?
実績をつくっても決まらないときは、実績の量ではなく「窓口の数」「伝え方」「条件」に原因があることも少なくありません。まずは次の2点を確認してください。
- ポートフォリオの作品が、応募している仕事の内容と合っているか
- スキルシートや提案文に、担当した工程と成果が具体的に書かれているか
窓口・伝え方・条件のどこに原因があるかの切り分けと、タイプ別の対処法は、次の記事で詳しく解説しています。
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実績がないときにやりがちな失敗は?3つの注意点
実績がない時期の失敗は、行動量の不足と、伝え方の弱さに集中しています。次の3つに注意してください。
- 「実績がないから」と応募や発信をためらう行動量が足りないと、実績をつくる機会そのものが生まれない
- ポートフォリオを作って満足し、更新しない新しい実績ができたら、その都度追加する
- 提案が抽象的で、できることが伝わらない「何でもやります」より、相手の課題と自分にできることを具体的に結びつける
よくある質問(FAQ)
フリーランスの実績がなくても、スキルや経験がないわけではない。会社員時代の経験を公開できる範囲で書き直す
実績が少ないうちは、人脈、エージェント、クラウドソーシングの順に窓口を使い、提案文は課題・できること・進め方の3点で書く
推薦の言葉や、範囲を小さく切り出した提案で信頼を補い、無料や低単価は期間と件数を限る
会社員時代の実務経験があるなら、その経験を評価して案件を紹介してくれるエージェントを使うと、フリーランスとしての最初の実績をつくりやすくなります。まずは複数のサービスを比較してみてください。

