
「最近、仕事が減ってきた。不景気のせいだろうか」と感じたとき、真っ先にやるべきなのは、やみくもな営業ではありません。結論から言えば、まず「市場全体の問題か、自分の領域の問題か、獲得経路の問題か」を切り分けることです。原因が違えば打ち手も変わります。市場が伸びているのに自分の案件が減っているなら、景気以外の要因を疑う価値があります。
【結論】フリーランスの仕事が減ったら、最初に何をする?
仕事が減ったときは、営業を増やす前に原因を切り分け、効果の出やすい経路から動き、単価はできるだけ守ります。具体的には次の3つです。
- 原因を「市場・自分の領域・獲得経路」に切り分けるエージェントの担当者に、自分の条件での案件の数を聞くと見当がつく
- 過去・現在の取引先、人脈、エージェントの順に動くすでにあなたを知っている相手ほど、案件につながるまでが早い。新規開拓は並行して仕込む
- 単価はできるだけ守り、稼働日数や支出で調整する一度下げた単価は次の交渉の基準になりやすい。先に固定費の見直しや、稼働日数・作業範囲の調整を考える
「不景気だから仕方ない」と結論づけると、打ち手が「耐える」しかなくなります。原因を特定すれば、動いて変えられる部分が見えてきます。
ただし、本当に市場全体が冷えている局面もあります。その場合は、単価を守りながら稼働を調整し、支出を絞って持ちこたえるのが現実的な選択になることもあります。判断の材料は、次の章のデータで確認してください。
本当に不景気で案件が減っている?データで見るフリーランス市場
公表データを見る限り、2025年までのフリーランスの仲介市場は拡大しています。ただし同じ白書は、2026年は生成AIによる発注の見直しや内製化が進む見通しとも指摘しています。体感と数字は一致しないことがあるため、全体の状況を確認してから、自分の状況を位置づけてください。
企業側の人材不足も続いています。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2024」では、DXを推進する人材の量が「大幅に不足している」と答えた企業は62.1%で、調査開始以降はじめて過半数を超えました。
ただし、需要は均等ではない
市場全体が伸びていても、その恩恵はすべての領域に均等に届くわけではありません。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」の2019年時点の推計では、従来型のIT人材は将来余る可能性がある一方、先端領域の人材は不足するという、質の偏りが示されています。「市場は伸びているのに、自分の案件は減っている」という状態は、この偏りで説明がつくことがあります。
自分の言語や職種の単価と案件の数を同じ調査で見比べると、領域の問題かどうかの見当がつきます。
市場全体が急に縮んでいるという根拠は、現時点では見当たりません。そのため、案件が減っている場合は、まず「自分の領域」と「獲得経路」を疑うのが近道です。
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案件が減る原因は?3つの原因と見分け方
案件が減る原因は「市場全体の縮小」「自分の領域の需要低下」「獲得経路の目詰まり」の3つに分けられます。どれに当たるかで、打ち手はまったく違います。獲得経路の目詰まりとは、市場に案件があるのに、自分への紹介や声がけが届いていない状態を指します。領域の需要低下とは、案件全体ではなく、自分の技術や担当工程に合う案件だけが減っている状態です。
| 原因 | 見分け方 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 市場全体の縮小 | 複数のエージェントで「案件そのものが少ない」と言われる | 単価を守り、稼働と支出を調整して持ちこたえる |
| 自分の領域の需要低下 | 案件は出ているが、自分の条件や技術に合うものだけ少ない | 担当する工程を広げる、近い領域に少しずつ広げる |
| 獲得経路の目詰まり | 案件はあるのに、紹介や声がかからない | 探す経路を増やし、条件の伝え方やスキルシートを見直す |
原因を切り分ける3つの質問
- エージェントの担当者に「この条件で月に何件くらい出ていますか」と聞く件数がほとんどなければ条件か領域の問題、それなりに出ているなら経路の問題の可能性が高い
- 「条件をどう緩めれば、何件くらい増えますか」と続けて聞く単価、稼働日数、リモートなど、どの条件が足を引っ張っているかが見えてくる
- 過去の取引先に、稼働に空きがあることを伝えてみるここから反応があるなら、市場ではなく自分の露出が足りていなかった可能性が高い
この3つは、短時間でできて費用もかかりません。やみくもに営業を始める前に、まずここを済ませてください。原因のタイプ別の、より詳しい対処法は、下の関連記事で解説しています。
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最初の1週間で何をする?支出を抑えて、見せる材料を整える
原因を切り分けたら、最初の1週間で「支出を抑えること」と「見せる材料を整えること」を同時に進めます。
| 日程 | やること | 目的 |
|---|---|---|
| 1〜2日目 | 固定費を棚卸しし、止められるものを止める | 必要な売上そのものを下げる |
| 1〜2日目 | エージェントに、稼働できる時期と日数を連絡する | 紹介の候補に入る |
| 3〜4日目 | スキルシートとポートフォリオを更新する | 紹介や提案の精度を上げる |
| 5〜6日目 | 過去の取引先や知人に、稼働の空きを伝える | 案件につながりやすい経路を動かす |
| 7日目 | 相場を調べ、自分の単価と比べる | 単価を守るか見直すかの判断材料にする |
見落としがちなのは固定費
売上を増やすことばかり考えがちですが、固定費を月5万円下げれば、必要な売上は年60万円下がります。しかも、売上と違って自分の判断だけで実行できます。案件が減った局面では、効果が読みやすい手です。
スキルシートには「担当した工程」を書き足す
更新するときに効くのが、担当した工程を書き足すことです。同じ案件でも「実装を担当」と書くのと「要件の整理から参画し、設計方針を決めて実装まで担当」と書くのでは、紹介される案件の幅が変わります。
なお、契約が終わって収入が止まりそうな場合は、国民年金保険料の免除や予定納税の減額申請など、お金を守る制度もあわせて確認してください。手順は下の「案件がなくなったときの対処法」にまとめています。
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どの経路から動くのが早い?案件獲得の5つの経路と優先順位
案件獲得の経路は並列ではなく、成果が出るまでの早さで順番があります。すでにあなたを知っている相手ほど、案件につながるまでが早い傾向があります。
| 順番 | 経路 | 成果までの目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1 | 過去・現在の取引先 | 数日〜数週間 | 仕事ぶりを知られているため、説明が少なくて済む |
| 2 | 人脈・紹介 | 数週間 | 紹介者の信用が加わる |
| 3 | エージェント | 数週間〜1か月程度 | 案件探しと条件の交渉を任せられる |
| 4 | 企業への直接の提案 | 数か月 | 仲介の手数料がかからないが、返事をもらえる割合は低い |
| 5 | 発信・クラウドソーシング | 数か月〜 | 続ければ問い合わせの入口になるが、即効性は低い |
上位3つの経路は、調査データとも重なります。フリーランス協会の「フリーランス白書2025」では、最も収入が得られる獲得経路は、人脈(35.6%)、過去・現在の取引先(29.9%)、エージェントサービス(12.4%)の順でした(白書2026でも上位3つは同じ順)。
順番は「1つずつやる」という意味ではありません。1と2は今日から、3は初日に登録だけ済ませ、4と5は並行して仕込むのが基本です。直接の提案は過去の案件に近い課題を持つ企業に絞り、クラウドソーシングは実績の空白を埋めるなど目的を限って使います。発信や人脈づくりは数か月後に効くものなので、2週間で成果が出なくても焦る必要はありません。
経路ごとの詳しい使い分けと増やす順番は、原因の章で紹介した「仕事が見つからない原因と対処法」の記事で解説しています。
既存の取引先や過去の取引先には、どう声をかける?
案件が減った局面で最も早く効きやすいのは、既存の関係です。信頼を一から説明する必要がないぶん、話が早く進みます。やることは次の4つです。
- 今の取引先に、追加で対応できる業務を提案する現場で見えている課題に、自分が手伝える範囲を具体的に示す
- 過去に取引のあった相手に、稼働の空きを伝える「何ができるか」と「いつから空くか」の2点を伝える
- 満足してもらえている取引先に、紹介を相談する紹介された案件は、条件の相談もしやすい傾向がある
- 契約更新のときに、担当範囲を広げる提案をする更新の1〜2か月前に切り出すと、相手も予算を組み直しやすい
過去の取引先へ送る連絡(例文)
ご無沙汰しております。◯◯の件では大変お世話になりました。
その後、◯◯の領域まで対応できるようになり、◯月から稼働に余裕が出る見込みです。もし何かお手伝いできることがあれば、お気軽にお声がけください。
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仕事が減ったとき、エージェントはどう使う?伝えるべき3つのこと
案件が減った局面では、エージェントへの伝え方ひとつで紹介の量が変わります。次の3つを伝えてください。
- 稼働できる時期と日数を具体的に伝える「そのうち空きます」ではなく「◯月◯日から週4日で稼働できます」と伝える
- 条件に優先順位をつける「絶対に譲れない」「できれば」「許容できる」に分けると、担当者が探す範囲を判断しやすい
- 市場の状況を聞く聞き方は、原因の章の3つの質問を参考にする
登録は2〜3社が目安です。案件数の多い総合的な会社を軸に、希望条件に強い会社を組み合わせると、紹介の幅が広がります。多すぎると連絡の管理が難しくなり、同じ案件に重ねて応募してしまうこともあります。
2024年11月に施行されたフリーランス法では、従業員を使う発注者が6か月以上続く業務委託を途中で解除したり、更新しなかったりする場合、原則として30日前までに予告し、求められれば理由を示すことが定められています(例外あり)。予告を受けた時点から、次の案件を探し始められます。
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不景気のときは単価を下げるべき?やってはいけない3つ
安易な値下げは、最も避けたい対応です。焦って動くと、短期の売上と引き換えに、長く続く条件を失いかねません。とくに次の3つに注意してください。
1. 安易に単価を下げる
一度下げた単価は、次の交渉の基準になりやすいものです。「今回だけ」のつもりでも、相手にとっては「この人の相場」として記憶されます。
| 月額単価 | 年間の売上 | 70万円との差 |
|---|---|---|
| 70万円 | 840万円 | なし |
| 60万円 | 720万円 | 年120万円少ない |
| 50万円 | 600万円 | 年240万円少ない |
値下げする前に、稼働日数を減らす、作業範囲を絞る、固定費を下げるという選択肢を先に考えてください。
どうしても下げる場合は、「今回のプロジェクトに限り」「3か月間」「範囲を◯◯に絞る前提で」など、期間か条件を限って合意するのが最低限の守り方です。条件を付けずに下げると、次回も同じ単価で依頼されやすくなります。
2. 一方的に売り込む
相手の状況を確かめずに「仕事をください」と送るのは、案件につながりにくいだけでなく、関係そのものを損ねるおそれがあります。「何ができるか」と「いつ空くか」を伝えるだけで十分です。
3. 条件をあいまいにしたまま受ける
案件がほしいあまり、範囲や報酬をあいまいにしたまま始めると、実質的な時給が大きく下がることがあります。月30万円の案件でも、40時間なら時給7,500円、想定外の作業が増えて60時間かかれば5,000円です。フリーランス法では、業務の内容や報酬額などを書面やメールで示すことは発注者の義務なので、確認を求めることに遠慮はいりません。
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案件が空いた期間は、何に時間を使う?
稼働が空いている時期は、普段はできないことに時間を使える数少ない機会でもあります。焦りだけで埋めるのはもったいない期間です。
| 時間の使い道 | やること | 効いてくる時期 |
|---|---|---|
| 実績の整理 | 過去の案件を工程まで書き出し、見せられる形にする | すぐ |
| 担当する工程を広げる | 要件定義や設計の知識を補い、次の提案に備える | 数か月 |
| 生成AIを業務に組み込む | どの工程に使い、何時間短縮できたかを記録する | 数か月 |
| 発信の準備 | 実績や知見を記事や資料にまとめる | 半年〜 |
| 人脈づくり | 勉強会や同業の集まりに参加する | 半年〜 |
生成AIの活用は「記録」まで残す
フリーランスエンジニア265名への調査では、コードの50%以上をAIで生成している人は、活用が25%以下の人に比べて月単価が約10万円高いという結果が出ています。大事なのは使っていること自体ではなく、「どの工程に組み込み、作業時間がどう変わったか」を説明できることです。空いている期間に自分の作業の流れを整理しておくと、次の面談で単価の根拠として使えます。
空白期間に焦る最大の理由はお金です。生活費の数か月分を別の口座に確保しておくと、条件の悪い案件を反射的に受けずに済みます。すでに苦しい場合は、収入を増やすより先に固定費を下げるほうが、自分で決められるぶん早く効きます。
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よくある質問(FAQ)
仕事が減ったら、営業の前に「市場・自分の領域・獲得経路」のどれが原因かを切り分ける
公表データでは2025年まで仲介市場は拡大。動く順番は過去の取引先、人脈、エージェント
安易な値下げは避け、稼働日数・作業範囲・固定費で調整する。下げるなら期間や条件を限る
案件が減っている局面で最も早く効きやすいのは、すでにあなたを知っている相手に、稼働の空きを伝えることです。そのうえで、紹介の窓口を増やしておくと、選べる案件の幅が広がります。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。市場の動向や制度は変わることがあるため、最新の情報は各出典で確認してください。

