
開業届でいちばん手が止まるのが「職業」欄です。結論から言えば、職業欄には「フリーランス」ではなく「Webデザイナー」「システムエンジニア」のような具体的な職種名を書き、事業の概要欄で仕事の中身を補足するのが正解です。ただしこの欄の内容は、個人事業税がかかるかどうかを判断する材料のひとつにもなります。IT・クリエイティブ系は、同じ仕事でも契約の形や都道府県によって判断が分かれることがあるため、実態に合わせて書くことが大切です。書き方の3つのルール、職種別の記入例、個人事業税の仕組み、提出前のチェックまでまとめました。
【結論】職種名で書き、実態と食い違わないようにする
開業届の職業欄は、次の3点を押さえれば迷いません。
- 具体的な職種名を書く「フリーランス」「個人事業主」「自営業」は働き方の呼び方なので、何の仕事か伝わりません
- 一般的に通じる名称を選ぶ独自の肩書きより、「Webマーケター」「システムエンジニア」など誰にでも分かる名称にします
- 事業の概要と食い違わないようにする複数の仕事をしているなら、主な仕事を職業欄に、それ以外を概要欄で補足します
職業欄の内容は、個人事業税の判断の材料のひとつになります。節税のために実態と違う職種を書くのではなく、実際の仕事に合わせて書くことが、あとで説明を求められたときの安心につながります。
開業届は、独立の準備の中のひとつです。お金や保険の手続きもあわせて、準備リストで確認しておきましょう。
あわせて読みたい(独立前の準備)
書き方の3つのルールと、やりがちなNG
| NGな書き方 | なぜNGか | 書き換え例 |
|---|---|---|
| フリーランス | 働き方の名称で、職種が伝わらない | システムエンジニア、Webデザイナー |
| 個人事業主・自営業 | 事業の内容が判断できない | ライター、経営コンサルタント |
| 空欄 | 判断の材料が欠ける | 実態に合う職種名を書く |
| 実態と違う職種名 | あとで確認を求められたときに説明しにくい | 主な仕事の職種名を書く |
| 独自の肩書き | 何の仕事か伝わりにくい | 「グロースハッカー」→「Webマーケター」 |
会計ソフトなどの開業届作成サービスには、職業の選択肢があらかじめ用意されています。総務省の日本標準職業分類も、一般的な職業の名称を確かめるのに役立ちます。
あわせて読みたい(開業届全体)
職種別の記入例と、事業の概要の書き方
| 職種 | 職業欄 | 事業の概要の例 |
|---|---|---|
| エンジニア | システムエンジニア、プログラマー | 企業のシステムの設計・開発・保守(準委任による技術支援を含む) |
| Webデザイナー | Webデザイナー | 企業のWebサイトのデザイン制作とコーディング |
| グラフィック | グラフィックデザイナー | ロゴ・チラシ・パンフレットなど印刷物のデザイン制作 |
| ライター | ライター | Webメディアの記事の執筆、取材、編集 |
| 動画編集 | 動画編集者 | 企業や個人の動画の編集・制作 |
| マーケター | Webマーケター | Web広告の運用、SNSアカウントの運用支援 |
| コンサルタント | 経営コンサルタント | 中小企業の経営・業務改善に関する助言 |
| 翻訳 | 翻訳者 | 英語の技術文書・ビジネス文書の翻訳 |
| カメラマン | カメラマン | 企業の商品撮影、イベントの撮影 |
| 講師 | 講師 | 企業研修やオンライン講座の企画・実施 |
- 事業の概要は具体的に誰に、何を提供するかが分かるように書きます
- 複数の仕事をしているとき主な仕事を職業欄に書き、ほかの仕事は概要欄に並べて補足します
- 仕事の内容が変わったとき開業届を出し直す必要はありません。確定申告書の職業欄を実態に合わせます
あわせて読みたい(屋号と職種)
個人事業税の仕組みと、IT・クリエイティブ系の注意点
| 対象 | 法律で定められた70の業種(法定業種)を営む個人 |
|---|---|
| 第1種事業(37業種) | 税率5%。物品販売業、製造業、請負業、飲食店業など |
| 第2種事業(3業種) | 税率4%。畜産業、水産業など |
| 第3種事業(30業種) | 原則5%(一部3%)。コンサルタント業、デザイン業、写真業、医業、税理士業など |
| 計算 | (事業所得+青色申告特別控除-事業主控除290万円)×税率 |
| 申告と納付 | 所得税の確定申告をすれば、個人事業税の申告は原則不要。都道府県から納税通知書が届く |
IT・クリエイティブ系は本当に非課税?
- 法定業種にない仕事は非課税文筆業(ライター・作家)や翻訳、作曲、プログラマーなどは、一般に法定業種に当たらないと説明されます
- 請負の契約だと「請負業」とされることがある成果物を納める請負契約は、第1種事業の「請負業」に当たると判断されることがあります
- デザインは「デザイン業」で課税の対象Webデザインやグラフィックデザインは、第3種事業のデザイン業に当たることが多くなります
- 都道府県によって判断が分かれることがある同じ仕事でも、都道府県の判断で課税・非課税が変わる場合があります
個人事業税の課税は、職業欄の書き方だけでなく、確定申告の内容や実際の仕事の実態から都道府県が判断します。課税されるか不安な場合は、住んでいる都道府県の税事務所に問い合わせるのが確実です。納税通知書に疑問があるときも、根拠を示して相談できます。
あわせて読みたい(契約の形と税金)
提出前のチェックリスト
- 職業欄に具体的な職種名を書いた「フリーランス」「自営業」などになっていないか確認します
- 事業の概要と職業欄が食い違っていない主な仕事が職業欄、それ以外が概要欄になっているか確認します
- 所得の種類は「事業(農業)所得」フリーランスの仕事なら、通常はこちらを選びます
- 青色申告承認申請書も用意した開業から2か月以内が期限です。一緒に出すのが確実です
- 個人番号と本人確認書類を用意したマイナンバーの記入と、提出時の本人確認が必要です
あわせて読みたい(青色申告と確定申告)
よくある質問(FAQ)
本記事は2026年9月時点の一般的な情報です。個人事業税の課税の判断は、都道府県や仕事の実態によって異なります。不安な場合は、税務署や都道府県の税事務所、税理士に確認してください。
● 職業欄には「フリーランス」ではなく具体的な職種名を書き、事業の概要で中身を補足する
● 個人事業税は70の法定業種が対象。請負契約やデザイン業は課税されることがあり、判断は都道府県による
● 節税目的で実態と違う職種は書かない。不安なら都道府県の税事務所に確認する

