
退職金を受け取ってフリーランスとして独立するとき、最初に確かめたいのは「手取りがいくらになるか」と「何に使うか」です。結論から言えば、退職金は税金の優遇がとても大きく、勤続20年で1,000万円なら税金は約15万円、手取りは約985万円です。受け取る前に使い道の配分を決め、まず生活防衛資金と1年目の住民税・国民健康保険料の分を確保するのが基本です。退職金の税金の計算、勤続年数別の手取り早見表、2026年からのiDeCoとの調整ルール、使い道の優先順位、独立後に自分で退職金をつくる方法までまとめました。
【結論】税金は少ないが、使い道の配分を受け取る前に決める
退職金を受け取って独立するときは、次の3点を押さえます。
- 退職金の税金はとても少ない退職所得控除と2分の1課税で、勤続20年・1,000万円なら所得税と住民税を合わせて約15万円です
- 「退職所得の受給に関する申告書」を出す出さないと退職金の全額に20.42%が源泉徴収され、確定申告で取り戻す手間がかかります
- 受け取る前に使い道の配分を決める生活防衛資金と、1年目の住民税・国保の分を先に確保し、事業への投資は必要なものに絞ります
まとまったお金が入ると、判断はどうしても甘くなります。退職金は「独立後の収入が安定するまでの時間を買うお金」と考えましょう。
退職金の使い方は、独立前の準備全体の中で考えることが大切です。手続きやお金の準備に漏れがないか、チェックリストで確認しておきましょう。
あわせて読みたい(独立前の準備)
退職金の税金の計算と、勤続年数別の手取り早見表
| 計算式 | (退職金-退職所得控除)×2分の1=退職所得。これに所得税と住民税(10%)がかかる |
|---|---|
| 退職所得控除(勤続20年以下) | 40万円×勤続年数(最低80万円) |
| 退職所得控除(勤続20年超) | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
| 課税の方法 | 給与や事業所得とは分けて計算する(分離課税)。申告書を出していれば、原則として確定申告は不要 |
| 勤続年数・退職金 | 退職所得 | 所得税と住民税 | 手取り |
|---|---|---|---|
| 10年・500万円 | 50万円 | 約7.6万円 | 約492万円 |
| 15年・800万円 | 100万円 | 約15.1万円 | 約785万円 |
| 20年・1,000万円 | 100万円 | 約15.1万円 | 約985万円 |
| 25年・1,500万円 | 175万円 | 約26.4万円 | 約1,474万円 |
| 30年・2,000万円 | 250万円 | 約40.6万円 | 約1,959万円 |
税金が多くなるケースは?
- 勤続5年以下で退職金が多い勤続5年以下の場合、退職所得控除を引いたあとの額が300万円を超える部分は、2分の1にならずに課税されます(役員は全額が2分の1になりません)
- 申告書を出していない全額に20.42%が源泉徴収されます。払いすぎた分は確定申告で戻ります
- iDeCoなどの一時金と受け取る時期が近い同じ年や近い年に受け取ると、退職所得控除が調整されて税金が増えることがあります
iDeCoなどの一時金を先に受け取り、その後に退職金を受け取る場合、控除が調整される期間は2025年までの「5年以内」から、2026年1月以降は「10年以内」に延びました。受け取る順番と時期の設計が税金に大きく影響するため、金額が大きい人は税理士に相談しましょう。
あわせて読みたい(退職の時期と手続き)
退職金を受け取る前にやること
「退職所得の受給に関する申告書」を出す
勤務先に提出すると、正しい税額で源泉徴収され、原則として確定申告が不要になります。
手取りの額を確かめる
勤続年数と退職金の額から、早見表や計算式で手取りを出しておきます。
使い道の配分を決める
入金される前に、生活防衛資金・税金の支払い分・事業資金などの金額を決めておきます。
口座を分けて入れておく
決めた配分ごとに口座を分け、生活費や事業のお金と混ざらないようにします。
退職金の使い道の優先順位
| 優先順位 | 使い道 | 考え方 |
|---|---|---|
| 1 | 生活防衛資金 | 生活費の6〜12か月分。案件探しから最初の入金まで数か月かかることもある |
| 2 | 1年目の住民税・国民健康保険料 | 会社員時代の所得で計算された分。生活費とは別に確保する |
| 3 | 事業の初期投資 | パソコンや作業環境、会計ソフトなど、収益に直結するものに絞る |
| 4 | 将来への備え | 小規模企業共済やNISAなど。資金繰りの見通しが立ってから始める |
| 5 | それ以外 | 事業が軌道に乗るまで手をつけない |
退職金が入った直後は、事業も収入もまだ見えていません。高額な設備投資や、引き出しにくい商品にまとめて移すと、資金繰りが苦しくなったときに身動きが取れなくなります。まずは普通預金で守り、収入が安定してから少しずつ動かしましょう。
あわせて読みたい(お金の守り方)
独立後に自分で退職金をつくる方法
フリーランスには会社の退職金制度がないため、将来の退職金は自分でつくる必要があります。税金を減らしながら積み立てられる制度を使いましょう。
| 制度 | 掛金 | 受け取るとき |
|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 月1,000円〜7万円。全額が所得控除 | 廃業時など。一括なら退職所得として扱われる |
| iDeCo | 2026年12月分から月7万5,000円まで。全額が所得控除 | 原則60歳以降。一時金は退職所得として扱われる |
| 付加年金 | 月400円。社会保険料控除 | 老齢基礎年金に上乗せされる |
| NISA | 所得控除はない | いつでも引き出せ、運用益は非課税 |
小規模企業共済とiDeCoの一時金は、会社の退職金と同じく退職所得として扱われます。受け取る時期が近いと控除が調整されるため、受け取り方も含めて計画することが大切です。
あわせて読みたい(自分でつくる退職金)
よくある質問(FAQ)
本記事は2026年9月時点の制度にもとづく一般的な情報です。同じ年にほかの退職金がある場合や、役員期間がある場合などは計算が変わります。実際の金額は源泉徴収票で確認し、受け取り方の設計は税理士に相談してください。
● 退職金は退職所得控除と2分の1課税で税金が少ない。申告書を出せば原則確定申告は不要
● 受け取る前に配分を決め、生活防衛資金と1年目の住民税・国保を先に確保する
● 独立後は小規模企業共済やiDeCoで退職金を自分でつくる。受け取る時期の調整に注意する

