
退職金を受け取って会社を辞め、フリーランスとして独立する——そんなとき、「退職金にどれくらい税金がかかる?」「独立資金としてどう使えばいい?」「フリーランスは退職金がもらえないって本当?」と気になることが多いはずです。退職金は税制上とても優遇されている一方、独立後は自分で“将来の退職金”を準備する必要があります。この記事では、退職金の税金の仕組みから、賢い使い方、フリーランスの退職金の備え方までを整理します。
退職金をもらって独立するとき、まず知るべきこと
退職金を受け取ってフリーランスになる場合、押さえておきたいポイントは大きく3つです。
- 退職金には手厚い税制優遇があり、思ったほど税金は引かれないことが多い
- 退職金は独立直後の不安定な時期を支える「生活防衛資金」になる
- フリーランスには会社のような退職金制度がないため、自分で将来に備える必要がある
まずは退職金の税金の仕組みを正しく理解し、手元に残る金額を把握することが、独立後の資金計画の第一歩になります。
退職金にかかる税金|退職所得控除と1/2課税
退職金は「退職所得」として、給与や事業所得とは分けて計算する分離課税です。さらに「退職所得控除」と「1/2課税」という2つの優遇があるため、税負担は大きく抑えられます。計算の流れは次のとおりです。
- 退職所得 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2
- この退職所得に対して、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税がかかる
退職所得控除額の計算
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げます。たとえば勤続25年なら、控除額は「800万円+70万円×5年=1,150万円」。退職金がこの控除額以下なら、退職金にかかる所得税・住民税はかかりません。控除を超えた分も、さらに2分の1にしてから課税されるため負担は軽めです。
退職金(一時金として一括受け取り)は分離課税のため、原則として翌年の社会保険料や住民税の所得割には影響しません。なお退職金課税の仕組みは見直しが議論されてきましたが、2025年度税制改正では現行制度が維持されています。
退職金を受け取るときの手続き
退職金を受け取る前に、勤務先へ「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておくのが重要です。
- 提出すると、退職所得控除などを反映した正しい税額が源泉徴収され、原則として確定申告は不要
- 提出しないと、退職金に一律20.42%の所得税等が源泉徴収され、払いすぎた分は自分で確定申告して取り戻す必要がある
独立してフリーランスになる年は、退職金(分離課税)と独立後の事業所得(総合課税)を分けて扱います。事業所得については別途、確定申告が必要になる点も覚えておきましょう。
退職金の賢い使い道|独立資金と生活防衛資金
退職金は、独立直後の収入が安定しない時期を乗り切るための大切な資金です。使い道は計画的に考えましょう。
- 生活防衛資金として確保する|収入が不安定な独立初期に備え、当面の生活費(数か月〜半年以上)を手元に残す
- 事業の初期投資にあてる|必要な機材・ソフト・学習など、収益に直結する投資に絞る
- 将来の備えに回す|後述の小規模企業共済やiDeCoなど、税優遇のある制度で老後資金を準備する
まとまった退職金が入ると気が大きくなりがちですが、独立直後は収入が読めません。一度に使い切らず、生活防衛資金を最優先で確保しましょう。高額な投資や運用は、事業が軌道に乗ってから検討するのが安全です。
フリーランスには退職金がない|自分で備える方法
会社員と違い、フリーランスには勤務先からの退職金制度がありません。その代わり、自分で「将来の退職金」を積み立てられる税制優遇制度があります。代表的なのが小規模企業共済とiDeCoです。
| 制度 | 掛金の上限(月) | 特徴 |
|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 7万円 | 個人事業主向けの退職金制度。掛金は全額所得控除。20年未満の任意解約は元本割れの可能性 |
| iDeCo | 6.8万円 | 掛金は全額所得控除、運用益は非課税。原則60歳まで引き出せない |
どちらも掛金が全額所得控除になり、節税しながら将来に備えられるのが大きな魅力です。両者は併用でき、個人事業主なら合わせて年間最大165.6万円までを全額所得控除にできます。受け取り時も、一括なら退職所得控除、分割なら公的年金等控除が使えて税優遇があります。
独立後のお金まわりで気をつけること
退職してフリーランスになると、お金まわりの手続きも自分で行うことになります。退職金とあわせて、次の点に注意しましょう。
- 健康保険・年金の切り替え(国民健康保険・国民年金への加入、または任意継続の検討)
- 退職した年の給与にかかる住民税は、翌年に請求される(資金を残しておく)
- 独立後の事業所得は確定申告が必要。青色申告の準備も早めに
- 当面の生活費を確保し、収入の波に備える
退職金や独立時の税金・社会保険は、状況によって有利な選択が変わります。金額が大きい場合や判断に迷う場合は、税理士など専門家に相談すると安心です。
まとめ|退職金は税優遇、独立後は自分で備える
退職金は分離課税で、退職所得控除と1/2課税により税負担が大きく抑えられます。受け取り前に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば原則確定申告は不要。退職金は生活防衛資金を最優先に、使い切らず計画的に活用しましょう。フリーランスには退職金制度がないため、小規模企業共済やiDeCoで節税しながら将来に備えるのが賢明です。金額が大きいときは専門家への相談も検討しましょう。
退職金を元手に独立したら、次は安定した収入の柱を作ることが目標になります。継続的に案件を確保したい方は、自分のスキルや希望に合うサービスを比較して案件探しを始めてみてください。

