
会社員なら病気やケガで休んでも傷病手当金で収入の約3分の2が補われますが、フリーランスはどうなのでしょうか。結論から言えば、フリーランスが加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金はありません。ただし「退職前から受けていた傷病手当金を続ける」「仕事中のケガで労災の特別加入を使う」という2つの例外があります。もらえない理由、例外の条件、代わりに収入を守る方法まで1ページにまとめました。
【結論】国保に傷病手当金はない。例外は継続給付と労災の特別加入
フリーランスの傷病手当金について押さえておくべきことは、次の3つです。
- 国民健康保険の傷病手当金は「任意給付」で、実際にはほぼない条例で定めれば支給できますが、市区町村の国保で自営業者に支給している例はほとんどありません
- 例外1:退職前から受けていれば続けられる会社員時代に受け始めた傷病手当金は、条件を満たせば退職後も最長1年6か月まで受け取れます
- 例外2:仕事中のケガは労災の特別加入で備えられる2024年11月から、企業から業務委託を受けるフリーランスは業種を問わず特別加入でき、休業中の補償を受けられます
私生活での病気やケガで働けない場合は、公的な収入の補償はほぼありません。貯蓄と所得補償保険・就業不能保険で自分で備えるのが基本です。
働けない状態が長引いて障害が残った場合は、障害基礎年金を受け取れる可能性があります。ただし原則として初診日から1年6か月後からで、それまでの期間の収入をどう確保するかがフリーランスの最大の課題です。
あわせて読みたい(年金と将来の備え)
傷病手当金とは?なぜフリーランスはもらえない?
| 対象 | 健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガで働けないとき |
|---|---|
| 待期 | 連続する3日間の休みのあと、4日目から支給 |
| 金額 | 1日あたり、支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均÷30×3分の2 |
| 期間 | 支給開始日から通算して最長1年6か月 |
| 例 | 月給30万円程度なら1日約6,600円、1か月約20万円 |
なぜ国民健康保険にはない?
- 国保は医療費の給付が中心の制度収入を補う機能は、もともと制度の中心に置かれていません
- 働けない状態を判定する基準がない会社員には所定の労働日と欠勤という区切りがありますが、フリーランスには稼働の定義がありません
- 給与がないため金額を計算する根拠がない傷病手当金は標準報酬月額をもとに計算しますが、事業所得にはその仕組みがありません
- 事業主の負担がない健康保険は会社と保険料を折半しますが、国保には事業主の負担がありません
新型コロナの感染拡大期に多くの市区町村が国保で傷病手当金を支給しましたが、対象は給与を受けている人に限られ、自営業者・フリーランスは対象外でした。「国保でも出た」という記憶から誤解されやすい点です。
国保組合ならもらえる?
業種別の国民健康保険組合の中には、独自に傷病手当金を設けている組合があります。ただし、支給額は定額で会社員より少ないことが多く、入院した場合に限るなど条件もさまざまです。加入している、または加入を考えている組合の給付内容を確認しましょう。
あわせて読みたい(健康保険)
例外1|退職前の傷病手当金を独立後も続ける条件
会社員時代に傷病手当金を受けていた人は、「資格喪失後の継続給付」で退職後も受け取り続けられます。次の条件をすべて満たす必要があります。
- 退職日までに継続して1年以上、健康保険に加入していた転職していても資格が途切れていなければ通算できます。国保・共済組合・任意継続の期間は含まれません
- 退職日の時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態だった連続3日間の待期が完成している必要があります
- 退職後も同じ病気やケガで働けないと医師が診断している定期的に受診し、申請書に医師の証明をもらいます
- 退職日に出勤していない挨拶などで退職日に出勤すると、それだけで受け取る権利を失います
継続給付は「働けないこと」が前提です。受給中に事業を始めて働き始めると、その時点で支給は終わり、残りの期間があとから戻ることもありません。療養に専念するための制度で、独立準備の資金源にはならないと理解しておきましょう。支給期間は在職中に受け始めた日から通算で1年6か月です。
あわせて読みたい(退職と独立の準備)
例外2|仕事中のケガは労災の特別加入で備える
傷病手当金は業務外の病気やケガが対象で、仕事中や通勤中のケガ・病気は労災保険の対象です。フリーランスは労働者ではないため労災保険の対象外でしたが、2024年11月から特別加入の範囲が広がりました。
| 対象 | 企業などから業務委託を受けて働くフリーランス(業種を問わない) |
|---|---|
| 加入方法 | 特別加入団体を通じて申し込む。保険料は自分で負担 |
| 休業中の補償 | 休業4日目から、給付基礎日額の60%の休業補償給付と20%の特別支給金(合計80%) |
| 給付基礎日額 | 3,500円〜2万5,000円の範囲から自分で選ぶ。高くするほど保険料も上がる |
| 対象外 | 私生活での病気やケガ |
傷病手当金の代わりに収入を守る方法
| 方法 | カバーできる範囲 | ポイント |
|---|---|---|
| 生活防衛資金(貯蓄) | 短期の休業、保険の待機期間 | 生活費の6か月分以上が目安 |
| 所得補償保険 | 数か月〜1、2年の就業不能 | 傷病手当金の代わりに近い。待機期間が短い商品が多い |
| 就業不能保険 | 数年単位の長期の就業不能 | 60歳・65歳までなど長く受け取れる |
| 労災保険の特別加入 | 仕事中・通勤中のケガや病気 | 休業4日目から給付基礎日額の80% |
| 障害基礎年金 | 一定の障害が残った場合 | 2級で年84万7,300円。国民年金の納付要件が必要 |
休んでいる間の負担を減らす制度は?
- 高額療養費制度医療費の自己負担は月ごとに上限があり、会社員と同じように使えます
- 国民年金保険料の免除収入が落ちたら免除を申請し、未納を防ぎます。障害年金の納付要件を守るためにも大切です
- 国民健康保険料・税金の減免や猶予所得が大きく減った場合の減免や、納税の猶予を市区町村や税務署に相談できます
あわせて読みたい(働けないときの備え)
お金と税金の扱い
- 傷病手当金・労災の給付・保険金は非課税所得税はかからず、確定申告で収入に含める必要もありません
- 所得補償保険・就業不能保険の保険料は経費にならない自分のための保険なので事業の経費には入れられませんが、介護医療保険料控除の対象です
- 労災保険の特別加入の保険料は社会保険料控除事業の経費ではなく、確定申告で社会保険料控除として差し引きます
あわせて読みたい(体調と保険)
よくある質問(FAQ)
本記事は2026年9月時点の制度にもとづく一般的な情報です。傷病手当金の継続給付の条件や、国保組合の給付内容は加入先によって異なります。具体的な手続きは、加入していた健康保険、市区町村、労働基準監督署などで確認してください。
● 国保に傷病手当金は原則ない。退職前からの継続給付と、労災の特別加入が例外
● 継続給付は退職日に出勤しないことが条件。受給中に働き始めると打ち切られる
● 私生活の病気やケガには、貯蓄と所得補償保険・就業不能保険で自分で備える

