
複数の案件を同時に抱えているのに、「次にどれをやるべきか」を決めてくれる上司はいない――フリーランスが日々直面する状況です。結論から言えば、案件の優先順位は納期と、遅れたときの影響の大きさで先に決め、同じ条件なら収益性と継続性で決めると迷いません。
【結論】複数案件の優先順位の決め方
フリーランスのプロジェクトの優先順位づけとは、抱えている案件のうち、どれに先に、どれだけの時間を使うかを決めることです。すべてを同時に進めようとせず、次の順で決めていきます。
- すべての案件と納期を一覧にする頭の中ではなく、1枚の表に書き出す
- 納期と、遅れたときの影響で順番を決める約束した期日と、相手の次の工程を止める仕事を先にする
- 同じ条件なら、収益性と継続性で決める時間あたりの報酬と、今後も続く取引かどうかを見る
- 週の初めと毎朝、順番を見直す新しい依頼や変更があれば、その都度組み替える
- 収まらないと分かったら、早めに相談する納期の調整か、依頼を断る判断をする
優先順位づけの目的は、すべてを終わらせることではありません。限られた時間を、約束を守ることと、価値の高い仕事に振り向けることです。
優先順位をつけても時間が足りない状態が続くなら、原因は順番ではなく、案件の組み合わせにあります。時間あたりの報酬が低い案件が多いと、どう並べ替えても余裕は生まれません。単価や稼働条件のよい案件に少しずつ入れ替えていくことも、優先順位づけの一部です。
フリーランスに優先順位づけが欠かせない理由
会社員なら、上司やチームが仕事の順番をある程度整理してくれます。フリーランスは、複数のクライアントの案件を、自分1人ですべて仕切る必要があります。目の前の作業を来た順にこなしていると、次のようなことが起きます。
- 納期が重なって、どれも間に合わなくなる重なりに気づくのが遅れ、調整の余地がなくなる
- 時間あたりの報酬が低い作業に時間を取られる大事な案件が後回しになり、全体の収入が伸びない
- 催促の多いクライアントの仕事ばかり進む声の大きさで順番が決まり、静かなクライアントの納期が危うくなる
- 営業や学習の時間がなくなる目先の作業で埋まり、次の案件につながる準備ができない
どの仕事に時間を使うかは、そのまま収入と信頼につながります。すべてを引き受けて全部の質を落とすより、受ける量を決め、受けた仕事の約束を守るほうが、長く続く関係をつくれます。
基本の考え方|緊急度と重要度で整理する
土台になるのは、仕事を「緊急度」と「重要度」の2つで整理する考え方です。緊急なものに追われて、重要なものが後回しになっていないかを確かめるために使います。
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| 区分 | 緊急度が高い | 緊急度が低い |
|---|---|---|
| 重要度が高い | すぐやる(納期が迫った納品物、障害への対応) | 計画してやる(学習、営業、実績の整理) |
| 重要度が低い | 手早く済ませる(形式的な連絡、簡単な確認) | 減らす、やめる(惰性で続けている作業、過剰な確認) |
多くの人は、緊急なものばかりに追われがちです。フリーランスとして伸びるかどうかを分けるのは、「重要だが緊急でない」領域に時間を割けるかどうかです。学習や営業の時間は、案件の予定より先に、週の予定へ入れておきましょう。
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案件を比べる5つの軸と、案件一覧表の記入例
緊急度と重要度だけでは、「どちらも重要な2つの案件」の順番は決まりません。フリーランスの場合は、次の5つの軸を上から順に当てはめると判断しやすくなります。
| 軸 | 見るもの | 優先度を上げる条件 |
|---|---|---|
| 1. 納期 | 約束した期日までの残り日数 | 残りの作業量に対して、日数に余裕がない |
| 2. 影響の大きさ | 遅れたときに、相手や周囲が受ける影響 | 相手の公開日や次の工程が、自分の納品を前提に組まれている |
| 3. 自分にしかできないか | 代わりがきくかどうか | 自分が止まると、案件全体が止まる |
| 4. 収益性 | かける時間に対する報酬 | 時間あたりの報酬が高い |
| 5. 継続性 | 今後も続く取引かどうか | 継続の見込みがあり、関係を深めたい取引先である |
上の3つは「約束を守るための軸」、下の2つは「事業を伸ばすための軸」です。日々の順番は上の3つで決め、どの案件を増やし、どの案件を減らすかという中長期の判断は下の2つで行います。
案件一覧表の記入例
すべての案件を1枚の表にまとめると、順番が見えるようになります。下は記入の例です。
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| 案件 | 順番 | 納期 | 残りの作業 | 遅れたときの影響 |
|---|---|---|---|---|
| A社 サイト改修 | 1 | 今週金曜 | 約12時間 | 大(公開日が決まっている) |
| B社 記事制作 | 2 | 来週水曜 | 約8時間 | 中(相手の確認作業が後ろにある) |
| C社 月次レポート | 3 | 来週金曜 | 約3時間 | 小(数日の調整がきく) |
| D社 新規の相談 | 保留 | 未定 | 見積もり前 | 受けるかどうかを先に判断する |
ポイントは、「残りの作業」を時間で書くことです。納期までに使える時間と、残りの作業時間の合計を比べれば、収まるかどうかが着手前に分かります。
軸がぶつかるとき|低単価の継続案件と、高単価の単発案件
軸どうしが相反することもあります。よくあるのが、「単価は低いが長く続く取引先」と「単価は高いが単発の案件」のどちらを優先するか、という場面です。どちらが正しいとは決まっていません。収入の土台が不安定な時期は継続案件を、土台が固まっていて単価を上げたい時期は高単価の案件を優先する、というように、自分の事業の段階で判断します。
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複数の案件をさばく4ステップ
複数の案件を並行するときは、全体を見渡せる状態を先につくることが大切です。
すべての案件と納期を一覧にする
案件、納期、残りの作業時間を1枚の表に書き出します。案件ごとに別々の場所で管理すると、重なりに気づけません。
納期から逆算して予定に入れる
各案件について、いつ着手し、いつ終えるかを締め切りから逆算して予定表に置きます。自分用の締め切りは、実際の納期の1〜2日前に設定します。
忙しい時期と空く時期を見つける
納期が集中する週を早めに見つけ、前倒しできる作業を空いている週へ移します。
収まらない分は、相談するか断る
前倒ししても収まらないなら、納期の調整を相談するか、新しい依頼を断ります。判断は早いほど、相手の選択肢が残ります。
納期が重なったとき・新しい依頼が来たときの判断
優先順位づけがいちばん難しくなるのは、予定が崩れたときです。あらかじめ判断の手順を決めておくと、慌てずに済みます。
納期が重なったときの手順
- 残りの作業時間を合計する納期までに使える時間と比べ、どれだけ足りないかを数字で出す
- 前倒しできる作業を探す今週中に進められるものを先に片づける
- 範囲を減らせないか考える今回の納品に必須の部分と、後から追加できる部分に分ける
- 調整の余地が大きい案件を選ぶ遅れたときの影響が小さい案件から、納期の相談をする
- 相談は、分かった時点ですぐに行う新しい納期の案と、現在の進み具合を一緒に伝える
納期の調整を相談するメッセージ(例文)
〇〇様
△△の件で、ご相談があります。
現在、全体の6割まで完了しています。当初は〇月〇日の納品予定でしたが、確認に想定より時間がかかっており、〇月〇日までお時間をいただけないでしょうか。
もし当初の期日が動かせない場合は、□□の部分を先に納品し、残りを〇日にお渡しする形も可能です。
ご都合をお聞かせください。
新しい依頼を受けるか決める3つの問い
- 今の案件の納期を守ったうえで、時間が残っているか残っていなければ、開始時期をずらせるかを相談する
- 時間あたりの報酬は、今の案件の平均より高いか低い場合は、受ける理由が他にあるかを確かめる
- 継続や実績につながる見込みがあるか見込みがあれば、多少条件が合わなくても受ける価値がある
3つとも当てはまらない依頼は、断るほうが全体のためになります。断るときは、理由と、対応できる時期を添えると関係を保ちやすくなります。
納期や作業範囲を変更するときは、口頭だけで済ませず、メールやチャットで合意した内容を残してください。契約書に納期の遅延や変更に関する定めがある場合は、その条項に従う必要があります。判断に迷うときは、契約書を確認のうえ、弁護士などの専門家にご相談ください。
1日・1週間の組み立て方と、見直しの習慣
優先順位を決めても、日々の予定に落とせなければ意味がありません。見直す時刻を固定すると、順番がぶれにくくなります。
- 週の初めに、案件一覧表を更新する納期と残りの作業時間を書き直し、その週の山場を確認する
- 毎朝、その日に終わらせる作業を2〜3個決める順番1の案件の作業を、最初に置く
- 集中しやすい時間帯に、重い作業を置く設計や執筆など、考える仕事を先に済ませる
- 細切れの時間に、連絡や軽い作業をまとめる返信や確認は、時間を決めて一度に処理する
- 1日に扱う案件の数を絞る案件を行き来するたびに、思い出す時間がかかる
優先順位をつける対象そのものを減らす
請求書の発行、定型の返信、進捗の報告など、毎回同じ手順で行う作業は、ひな形と手順を決めておくと、判断も時間もほとんどかからなくなります。優先順位をつける対象が減れば、案件の中身に使える時間が増えます。週の初めの見直しも、確認する項目を決めて型にしておくと、10分ほどで終わるようになります。
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優先順位づけでやりがちな失敗と対策
優先順位づけには、はまりやすい落とし穴があります。当てはまるものがあれば、対策を1つだけ試してください。
| 失敗 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 緊急なものだけを追う | 営業や学習が進まず、次の案件につながらない | 重要だが緊急でないことの時間を、週の予定に先に入れる |
| 簡単なものから手をつける | 軽い作業で1日が終わり、重い作業が残る | その日の最重要の作業を、最初に片づける |
| 催促の多い相手を優先する | 声の大きさで順番が決まり、他の納期が危うくなる | 案件一覧表の順番に従い、催促には進み具合と予定を返す |
| 受けすぎる | 断れずに抱え込み、全体の質が落ちる | 残りの作業時間の合計を確かめてから返事をする |
| 見積もりが甘い | 作業時間を短く見積もり、納期に追われる | 実際にかかった時間を記録し、次の見積もりに反映する |
| 順番を変えすぎる、または変えない | 着手と中断を繰り返す。または状況の変化に対応できない | 見直しは毎朝と週の初めに限定し、それ以外は決めた順番で進める |
よくある質問(FAQ)
案件の順番は、納期と遅れたときの影響で先に決め、同じ条件なら収益性と継続性で決める
案件・納期・残りの作業時間を1枚の表にまとめ、週の初めと毎朝に見直す
納期が重なったら早めに相談し、新しい依頼は時間・報酬・継続の3つの問いで判断する

