
今月、自分が何時間働いたかを答えられるでしょうか。フリーランスには勤怠を管理してくれる人がいないため、働きすぎにも、稼働不足にも、自分で気づくしかありません。結論から言えば、稼働時間の管理は「記録する、上限を決める、予定に割り当てる、週に1回見直す」の4つで回ります。目安は週40時間、月に約173時間を基準に、自分の上限を数字で決めることです。
この記事でわかること
【結論】フリーランスの稼働時間を管理する4つの手順
稼働時間の管理とは、実際に働いた時間を記録し、決めた上限の範囲で仕事を割り当て、ずれを直し続けることです。長く働くためではなく、収入と健康の両方を守るために行います。手順は次の4つです。
- 記録するまず2週間、案件ごとの作業時間と、営業や事務の時間を書き留める
- 上限を決める週と月の稼働時間の上限を、数字で決める
- 予定に割り当てる作業の見積もり時間を、上限の範囲でカレンダーに入れる
- 週に1回見直す見積もりと実績のずれを確かめ、翌週の予定を直す
基準になる数字は、週40時間、月に約173時間です。これは会社員の法定労働時間にあたる時間で、ここから大きく外れているかどうかが、最初の判断材料になります。
稼働時間は、自分の管理だけでなく、案件の条件でも大きく変わります。稼働日数や月の稼働時間の幅が契約で決まっている案件を選ぶと、時間の見通しが立てやすくなります。
なぜフリーランスに稼働時間の管理が必要なのか
業務委託で働くフリーランスには、原則として労働基準法の労働時間の規制が適用されません。1日8時間、週40時間という上限も、残業代も、法律が決めてくれる休日もありません。上限を決めるのは自分だけです。
| 状態 | 起きること | 管理で防げること |
|---|---|---|
| 働きすぎ | 疲れがたまり、品質が落ち、体調を崩す | 上限を超えた週に、すぐ気づける |
| 稼働不足 | 売上が目標に届かず、月末にあわてる | 月の途中で不足に気づき、手を打てる |
| 見積もりの甘さ | 納期に間に合わない、または無理をして間に合わせる | 過去の実績をもとに、必要な時間を見積もれる |
| 時間あたりの報酬が不明 | 割に合わない案件に気づかず続ける | 案件ごとの時間あたりの報酬が分かる |
| 仕事と生活の境目がない | 休日も作業が入り、休んだ気がしない | 終わる時刻と休む日を、先に確保できる |
厚生労働省は2024年5月に「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」を定めました。この中で、個人で働く人に対し、自分で就業時間を把握し、長時間の就業にならないよう調整することを求めています。調整の目安として挙げられているのは、会社員に適用される時間外労働の上限です。
手順1|まず2週間、稼働時間を記録する
管理の出発点は記録です。感覚で「1日8時間くらい」と思っていても、実際に測ると大きくずれていることが珍しくありません。まず2週間、すべての仕事の時間を書き留めてください。
「請求できる時間」と「請求できない時間」に分ける
記録するときは、時間を2種類に分けます。この区別がないと、働いた時間のわりに売上が伸びない理由が見えてきません。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 請求できる時間 | 報酬の対象になる作業の時間 | 制作、開発、執筆、契約に含まれる打ち合わせ |
| 請求できない時間 | 報酬は出ないが、仕事を続けるために必要な時間 | 営業、見積もり、請求、経理、学習、連絡、移動 |
記録する項目と記入例
記録は、1つの作業につき1行で十分です。開始と終了の時刻を書くだけなら、1回あたり10秒で済みます。道具は、紙、表計算ソフト、時間を計測するアプリのどれでも構いません。
| 日付 | 10月2日 |
|---|---|
| 開始と終了 | 9時30分から11時45分 |
| 時間 | 2時間15分 |
| 案件 | A社 サイト改修 |
| 作業の内容 | トップページの修正 |
| 種類 | 請求できる時間 |
2週間たったら確かめる4つの数字
- 週の合計時間週40時間と比べて、多いか少ないか
- 請求できる時間の割合合計のうち、報酬の対象になった時間は何割か
- 案件ごとの時間あたりの報酬報酬を、その案件にかけた時間で割る
- 見積もりと実績の差予定より長くかかった作業は、どれか
あわせて読みたい(記録した時間を単価に生かす)
手順2|適正な稼働時間の上限を決める
記録で実態が分かったら、週と月の上限を数字で決めます。上限は、「必要な時間」と「続けられる時間」の両方から決めます。
基準になる時間の目安
| 働き方 | 週の時間 | 月の時間 |
|---|---|---|
| 週3日(1日8時間) | 24時間 | 約104時間 |
| 週4日(1日8時間) | 32時間 | 約139時間 |
| 週5日(1日8時間) | 40時間 | 約173時間 |
必要な稼働時間の計算方法
目標の月収から、必要な稼働時間を逆算します。計算式は次のとおりです。
- 請求できる時間を出す目標の月収 ÷ 時間あたりの報酬
- 全体の稼働時間を出す請求できる時間 ÷ 請求できる時間の割合
- 基準の時間と比べる週40時間、月に約173時間を超えていないか確かめる
請求できる時間の割合を8割と仮定して、目標の月収が60万円の場合を計算します。
横にスクロールできます →
| 時間あたりの報酬 | 判定 | 請求できる時間 | 全体の稼働時間 |
|---|---|---|---|
| 4,000円 | 基準を超える | 150時間 | 約188時間 |
| 5,000円 | 基準に収まる | 120時間 | 150時間 |
時間あたり4,000円では、月に約188時間の稼働が必要になり、週40時間の基準を超えます。この場合に取れる方法は、稼働を増やすことではなく、単価を上げるか、請求できない時間を減らすことです。必要な時間が続けられる時間を超えているなら、条件のほうを見直してください。
月の上限だけを決めると、月末にまとめて働くことになります。「週40時間まで」「1日は長くても10時間まで」のように、週と1日の単位でも決めておくと、超えた時点で気づけます。上限は、体調や家庭の事情に合わせて自分で決めて構いません。
手順3・4|予定に割り当てて、週に1回見直す
上限が決まったら、その範囲に仕事を収めます。やることの一覧ではなく、時間の枠で管理するのがコツです。
作業を書き出し、時間を見積もる
今週やる作業を書き出し、それぞれにかかる時間を書きます。過去の記録がある作業は、実績の時間を使います。
余裕を足す
見積もりの合計に、2割ほどの余裕を足します。急な修正や連絡への対応は、毎週必ず発生するからです。
カレンダーに枠として入れる
締め切りの近いものから、作業の時間をカレンダーに入れます。上限を超える分は、今週はやらないと決めるか、締め切りを相談します。
週に1回、15分で見直す
週の合計時間、見積もりと実績の差、上限を超えた日を確かめます。ずれが大きかった作業は、次回の見積もりを直します。
始業と終業の時刻を固定する
稼働時間を安定させるいちばん簡単な方法は、始める時刻と終える時刻を決めることです。特に効果が大きいのは、終える時刻です。終わりが決まっていないと、作業は時間いっぱいまで広がります。
- 始める時刻を決める毎日同じ時刻に始めると、取りかかるまでの迷いがなくなる
- 終える時刻を決める予定を1つ入れておくと守りやすい
- 時間帯ごとに作業を分ける集中できる時間帯に考える作業、それ以外に連絡や事務を置く
- 連絡を確認する時刻を決める届くたびに開かず、1日に数回にまとめる
あわせて読みたい(時間の使い方を整える)
契約で決まる稼働時間|精算幅の見方
稼働時間は、契約の形によって管理のしかたが変わります。特に、時間に対して報酬が支払われる準委任契約では、月の稼働時間の幅(精算幅)が契約で決められていることが多く、記録がそのまま報酬に関わります。
| 契約の形 | 報酬の対象 | 稼働時間の管理で大事なこと |
|---|---|---|
| 準委任契約(時間で精算) | 働いた時間 | 精算幅に収まっているかを、月の途中で確かめる |
| 請負契約(成果物で精算) | 完成した成果物 | かけた時間を記録し、時間あたりの報酬を確かめる |
精算幅の計算例
精算幅が「月140時間から180時間」の場合、この範囲に収まれば報酬は定額です。下回ると控除、上回ると追加の支払いが発生します。月額80万円で、下限と上限の時間でそれぞれ単価を出す方式の例は次のとおりです。
| 月の稼働 | 計算 | 報酬 |
|---|---|---|
| 130時間 | 不足10時間 × 5,714円(80万円 ÷ 140時間) | 約5万7,000円の控除 |
| 160時間 | 精算幅の範囲内 | 80万円のまま |
| 190時間 | 超過10時間 × 4,444円(80万円 ÷ 180時間) | 約4万4,000円の追加 |
精算幅の時間、控除と超過の計算方式、端数の扱いは、契約によって違います。祝日の多い月や、休みを取る月は、下限を下回らないかを先に計算しておきましょう。条件が契約書に書かれていない場合は、署名の前に書面で確認してください。契約の内容に不安があるときは、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
あわせて読みたい(稼働日数と契約)
働きすぎを防ぐ目安とルール
フリーランスには法律上の上限がないため、会社員の基準を自分の目安として借りるのが現実的です。厚生労働省の資料で示されている数字を、月の合計時間に置き換えると次のようになります。
| 目安 | 月の合計時間 | 意味 |
|---|---|---|
| 基準 | 約173時間 | 週40時間。会社員の法定労働時間にあたる |
| 注意 | 約220時間 | 週40時間を超える分が月45時間。会社員の時間外労働の原則の上限であり、これを超えて長くなるほど健康への影響が強まるとされる |
| 危険 | 約250時間 | 週40時間を超える分が月80時間。2か月から6か月続くと、脳や心臓の病気との関連が強いと評価される |
月の合計時間は、週40時間を月に直した約173時間に、時間外にあたる時間を足して計算しています。これらは会社員の労災認定や労働時間の規制で使われる数字で、フリーランスに直接適用されるものではありません。それでも、体に負担がかかる時間の長さは、働き方が違っても変わりません。
働きすぎを防ぐ5つのルール
- 週に1日は、仕事をしない日を作る先にカレンダーに入れ、依頼が来ても動かさない
- 終える時刻を決め、過ぎたら翌日に回す間に合わない場合は、早めに締め切りを相談する
- 上限を超えた週の翌週は、稼働を減らす超えた分を、翌週で戻す
- 受ける前に、空いている時間を確かめる上限まで残り何時間あるかを見てから返事をする
- 繁忙期の終わりを決めておく上限を超える期間は、長くても何週間までと先に決める
稼働を減らしたほうがよいサイン
- 以前より、同じ作業に時間がかかるようになった
- 見直しで気づく誤りや、修正の依頼が増えた
- 休日も仕事のことが頭から離れない
- 寝つきが悪い、朝起きても疲れが残っている
眠れない、気分が落ち込む、体の不調が2週間以上続くといった場合は、稼働時間の調整だけで解決しようとせず、医療機関に相談してください。フリーランスには会社の健康診断がないため、年に1回は自分で健康診断を受けることも大切です。
あわせて読みたい(休み方と睡眠)
稼働時間を減らしても収入を保つ方法
稼働時間を減らすと収入が減る、と考えがちです。実際には、記録を見て「請求できない時間」と「時間あたりの報酬が低い仕事」を減らせば、収入を保ったまま稼働を短くできます。
| 方法 | 内容 | 効く場面 |
|---|---|---|
| 請求できない時間を減らす | 請求、連絡、見積もりなど繰り返す作業の手順を決め、ひな形や自動化に置き換える | 請求できる時間の割合が7割を下回っている |
| 単価を見直す | 時間あたりの報酬が低い案件から、条件の見直しを相談する | 必要な稼働時間が、上限を超えている |
| 案件を入れ替える | 時間あたりの報酬が低い案件を終え、条件のよい案件に替える | 相談しても条件が変わらない |
| 作業範囲を決める | 修正の回数や対応する範囲を、契約の時点で決めておく | 見積もりより実績が長くなる案件が多い |
なかでも効果が出やすいのは、繰り返す作業を仕組みに置き換えることです。毎月の請求や定型の連絡は、一度手順を決めてしまえば、翌月から時間が減ります。
あわせて読みたい(稼働時間を減らす仕組みを作る)
よくある質問(FAQ)
稼働時間の管理は、記録する、上限を決める、予定に割り当てる、週に1回見直す、の4つで回す
基準は週40時間、月に約173時間。必要な時間が上限を超えるなら、稼働ではなく単価と請求できない時間を見直す
月に約220時間を超えたら注意、約250時間は危険の目安。週に1日の休みと、終える時刻を先に決める

