
「月60万円の案件」は高収入に見えても、時給にするといくらなのか、会社員のころと比べて本当に稼げているのか迷っていませんか。結論から言えば、フリーランスの本当の稼ぎは「手取り ÷ 稼働と非稼働を合わせた時間」で出す実質時給で判断します。見かけの時給との違い、計算例、会社員との比べ方、目標時給の逆算、時給を上げる方法まで、このページで自分の数字を出せるように整理しました。
【結論】フリーランスの時給はどう計算すればいい?
フリーランスの時給換算とは、売上や手取りを働いた時間で割り、1時間あたりの稼ぎを出すことです。目的に合わせて、次の3つを使い分けます。
- 見かけの時給売上 ÷ 案件の作業時間。案件どうしを比べるときの目安になる
- 実質時給手取り ÷(作業時間 + 営業・事務などの時間)。本当の稼ぎを知るときに使う
- 目標時給1年間に必要な売上 ÷ 報酬が発生する年間の作業時間。見積もりや案件選びの下限に使う
見かけの時給だけで判断すると、税金や社会保険料、お金にならない時間が抜け落ち、稼ぎを高く見積もりすぎます。
実質時給を上げる近道は、同じ時間でより高い単価の案件を受けることです。今の単価が相場と比べて適正かを確かめるところから始めてみてください。
見かけの時給と実質時給は何が違う?
見かけの時給は売上を作業時間で割った数字、実質時給は手取りを仕事に使った全部の時間で割った数字です。フリーランスは、会社員なら天引きされる税金や社会保険料、会社が払う経費、勤務時間内に済む事務作業を、すべて自分で負担します。
| 見かけの時給 | 売上 ÷ 案件の作業時間。案件の条件をざっくり比べるときに使う |
|---|---|
| 実質時給 | 手取り ÷(作業時間 + 非稼働時間)。本当に稼げているかを判断するときに使う |
| 手取り | 売上 −(経費 + 税金 + 社会保険料) |
| 非稼働時間 | 営業、見積もり、打ち合わせ、請求、経理、学習など、直接は報酬にならない時間 |
実質時給で比べると、単価は高いのに拘束時間ややり取りが多く、実は割に合わない案件を見抜けるようになります。
実質時給はどう計算する?手順と計算例
実質時給は、1か月分の手取りと、非稼働時間を含めた時間を出し、手取りを時間で割って計算します。
1か月の売上を出す
複数の案件があれば合計します。月ごとの差が大きい人は、1年分を12で割って平均にします。
経費・税金・社会保険料を引いて手取りを出す
前年の確定申告や納付額をもとに、年額を12で割って月割りにします。
作業時間と非稼働時間を合計する
1〜2週間だけでも、営業や事務にかかった時間を記録すると、実際の割合がつかめます。
手取りを合計時間で割る
見かけの時給と並べて、どれだけ差があるかを確認します。
たとえば月60万円の案件で、手取りが売上の6割と仮定して計算すると、次のようになります。
| 項目 | 見かけの時給 | 実質時給 |
|---|---|---|
| 金額 | 60万円(売上) | 36万円(手取りを売上の6割と仮定) |
| 時間 | 160時間(作業のみ) | 200時間(営業・事務など40時間を含む) |
| 時給 | 60万円 ÷ 160時間 = 3,750円 | 36万円 ÷ 200時間 = 1,800円 |
同じ案件でも、見かけの時給と実質時給で約2倍の差が出ることがあります。この差を知ることが、時給換算の一番の目的です。
実質時給を下げる隠れコストは?お金と時間の2種類
実質時給を押し下げるのは、税金・社会保険料・経費という「お金のコスト」と、報酬にならない「時間のコスト」です。
| コスト | 主な内容 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| 税金 | 所得税、住民税、個人事業税、消費税 | 個人事業税は法律で定めた業種が対象で、事業主控除290万円を超える所得にかかる。業種の判断は都道府県が行う。消費税は課税事業者の場合にかかる |
| 社会保険料 | 国民健康保険、国民年金 | 会社員のように会社が半分を負担する仕組みがなく、全額を自分で払う |
| 経費 | パソコンや機材、通信費、ソフト代、作業場所の費用など | 会社員なら会社が負担していた費用を自分で払う |
| 非稼働時間 | 営業、見積もり、打ち合わせ、請求、経理、学習 | 計算に入れないと、実質時給を高く見積もりすぎる |
会社員の給料と比べるには?同じ年収では足りない理由
フリーランスが会社員と同じ生活水準を保つには、会社員時代の年収より高い売上が必要です。会社員の給料には表に出ない負担や保障が含まれているため、額面どうしで比べると差を見誤ります。
| 項目 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 健康保険・年金の保険料 | 健康保険と厚生年金の保険料は、会社と本人で半分ずつ負担 | 国民健康保険と国民年金を全額自分で負担 |
| 休みの日の収入 | 有給休暇がある | 働かない日は収入がない |
| 賞与・退職金 | 会社の制度による | ない(自分で積み立てる) |
| 経費・備品 | 会社が負担 | 自分で負担 |
| 収入の安定 | 毎月ほぼ一定 | 案件次第で変わる |
会社員時代の時給は、手取りの年収 ÷ 年間の労働時間で出します。たとえば手取りの年収390万円、1日8時間・年240日(1,920時間)なら約2,031円です。手取りどうしでそろえて、フリーランスの実質時給と比べます(計算例は編集部の作成)。
フリーランスで必要な売上は、会社員時代の年収に次の分を上乗せして考えます。会社が負担していた社会保険料、有給休暇や賞与・退職金に当たる分、経費、案件が途切れたときの備えです。
フリーランスの時給の目安はどう決める?逆算の手順
時給の目安は感覚で決めず、1年間に必要な売上から逆算するのが基本です。
- 必要な手取りを決める生活費、貯蓄、案件が途切れたときや老後への備えから出す
- 必要な売上に直す手取りに、経費・税金・社会保険料を上乗せする
- 報酬が発生する時間で割る休みや非稼働時間を除いた、1年間の作業時間で割る
| 計算式 | 目標時給 = 1年間に必要な売上 ÷ 1年間に報酬が発生する作業時間 |
|---|---|
| 計算例 | 必要な売上600万円、作業時間が年1,500時間なら、600万円 ÷ 1,500時間 = 時間単価4,000円 |
| 作業時間の目安 | フリーランス白書2026では、月の稼働時間が140時間以上(フルタイム相当)の人は48.5%。白書の稼働時間は報酬が発生する時間と分けて集計されていないため、作業時間の目安として使うときは少し控えめに見積もる |
| 最低限の比較 | 令和8年度の地域別最低賃金の全国加重平均は1,177円。最低賃金は税金・社会保険料を引く前の金額のため、手取りから出す実質時給がこれを下回るなら、単価か働き方の見直しを急ぐ |
逆算した目標時給は、案件の見かけの時給と比べ、下回る案件は受けない基準にします。あわせて、自分の職種の相場と照らして、無理のない水準か、低すぎないかを確かめます。
あわせて読みたい(相場と値付け)
月額単価や固定報酬の案件は、時給にどう直す?
月額単価の案件は想定の稼働時間で、固定報酬の案件はやり取りを含めた総作業時間で割って時給に直します。報酬の形によって、割る時間の考え方が違います。
| 月額単価の案件 | 月額 ÷ 想定の稼働時間。精算幅(例:140〜180時間)がある場合は、下限と上限の両方で計算し、幅を超えたときの増減の条件も確認する |
|---|---|
| 週3日など短い稼働の案件 | 月額 ÷(週の稼働日数 × 1日の時間 × 約4.3週)。空いた日に別の仕事を入れられるかも含めて比べる |
| 固定報酬(成果物)の案件 | 報酬 ÷(作業時間 + 打ち合わせ・修正・やり取りの時間)。修正回数が多いと、見かけよりも時給が大きく下がる |
月額単価を稼働時間で割った見かけの時給は、次のとおりです。
| 月額単価 | 140時間の場合 | 160時間の場合 | 180時間の場合 |
|---|---|---|---|
| 40万円 | 約2,857円 | 2,500円 | 約2,222円 |
| 60万円 | 約4,286円 | 3,750円 | 約3,333円 |
| 80万円 | 約5,714円 | 5,000円 | 約4,444円 |
固定報酬の案件では、見積もりの段階で修正回数や範囲を決めておくことが、時給を守る一番の方法です。
あわせて読みたい(見積もり)
実質時給を上げるには?単価・時間・手取りの3つの方法
実質時給は、「単価を上げる」「非稼働時間を減らす」「手取りを増やす」の3方向から上げられます。効果が大きいのは単価を上げることです。
- 単価を上げる既存の取引先への値上げの相談、より単価の高い案件への切り替え、上流の工程を担えるスキルの習得
- 非稼働時間を減らす見積もりや請求のテンプレート化、会計ソフトの活用、長期案件の確保で営業の回数を減らす
- 手取りを増やす経費の正しい計上、控除の活用、不要な固定費の削減。税務の判断は税理士などの専門家に相談する
あわせて読みたい(時給を上げる)
よくある質問(FAQ)
実質時給は「手取り ÷(作業時間 + 非稼働時間)」。見かけの時給と約2倍の差が出ることもある
目標時給は、1年間に必要な売上を報酬が発生する作業時間で割って逆算し、相場と照らして確かめる
実質時給は、単価を上げる・非稼働時間を減らす・手取りを増やすの3方向で上げる。効果が大きいのは単価
今の実質時給がわかったら、同じ時間でより高い単価を得られる案件がないかを比べてみてください。条件のはっきりした案件を並べると、自分の時給が適正かどうかも判断しやすくなります。

