
フリーランス(個人事業主)になると、年金は「会社が手続きしてくれるもの」から「自分で管理するもの」に変わります。
ポイントは3つだけです。
- 切り替え手続きを空白にしない(退職→独立のタイミングが重要)
- 払えない月は“未納放置”より申請が先(免除・猶予)
- 上乗せは相性で選ぶ(付加年金/国民年金基金/iDeCo)
この記事では、難しい制度説明は最小限にして「何をどうすればいいか」だけに絞って解説します。
まず結論|フリーランスの国民年金で損しない「3つの鉄則」
フリーランスの国民年金は、結局のところ「手続き」「支払い」「上乗せ」の3点セットです。
ここを外さなければ、ほとんどの人はつまずきません。
逆にいうと、この3つを放置すると損が積み上がることがあります。
だから最初に、損しないための鉄則だけ先に押さえましょう。
鉄則1:退職・独立のタイミングで「第1号」切替を空白にしない
会社員(厚生年金=国民年金の第2号)を辞めて、次の会社に入るまでに空白がある場合、基本は国民年金(第1号)への手続きが必要です。
ここで大事なのは「いつから第1号になるか」。
退職日が決まった瞬間に自動で切り替わるわけではないので、役所に行って(または電子申請で)届け出る必要があります。
手続きの提出期限は、原則として退職日の翌日から14日以内です。
「14日を過ぎたら即アウト」というより、あとからでも手続き自体は進むことが多いですが、遅れるほど確認が増えて面倒になりがちです。
やることが多い独立直後こそ、国民年金の切り替えを最優先の事務として先に片づけるのがコツです。
鉄則2:「払えない月」は免除・猶予を使って未納を避ける
フリーランスあるあるが「独立直後は売上が安定しない」「大きな出費が重なる」「税金・保険の請求が同時期に来る」などで、国民年金まで手が回らない状況です。
このとき、ついやってしまうのが「とりあえず放置」。
でも、放置して未納にするより、免除・納付猶予を申請したほうが圧倒的に安全です。
- 免除等は、申請時点から2年1か月前までさかのぼって申請できる(それより前は申請できない)
「今は厳しいけど、半年後なら追いつけそう」みたいなケースでも、申請しておけば選択肢が増えます。
逆に、何もせず時間が経つと、「申請できる期間」がどんどん消えていくので、困ったら先に申請が正解です。
鉄則3:上乗せは「相性」で選ぶ(付加年金/基金/iDeCo)
フリーランスは会社員と違い、老後資金の上乗せ部分を自分で設計できます。
上乗せの考え方はシンプルで、選択肢は主に次の3つです。
- 付加年金:超少額で「年金を増やす」
- 国民年金基金:厚生年金のような上乗せを作る
- iDeCo:節税しながら積立・運用で増やす
どれが正解というより、あなたの性格・キャッシュフロー・リスク許容度で相性が決まります。
なお、iDeCoは第1号(自営業者等)の掛金上限が決まっていて、基金や付加保険料との関係もあります。
フリーランスは原則「国民年金 第1号」
国民年金は、20歳〜60歳の全員が加入する「土台」です。
フリーランスは基本的にこの国民年金のうち、第1号被保険者に該当します。
- 会社員:厚生年金に加入(国民年金は第2号として扱われる)
- フリーランス(自営業・個人事業主):国民年金(第1号)が基本
ここで大事なのは、国民年金は「老後のため」だけではなく、万一のときに関わる部分があること。
だからこそ、未納のまま放置せず、免除・猶予の申請を活用するのが安全です。
ここで知っておくと安心なのが、国民年金は「老後の年金」だけの話ではないこと。
万一のとき(例えば障害が残った場合など)に関わる土台にもなります。だからこそ、未納のまま放置せず、免除・猶予の申請を使って空白を作らないのが安全です。
退職→独立でやること|国民年金の切り替え手続き
独立直後は、開業準備・案件対応・口座や請求まわり…とにかくやることが多いです。
だからこそ、国民年金は「迷うポイント」を先に潰して、機械的に進めるのが楽です。
この章では、つまずきやすい順に整理します。
ケース別:月末退職 / 月途中退職でも「その月の保険料」が発生する
実務で混乱しやすいのがここです。
結論、月末退職でも月途中退職でも、国民年金第1号に該当するならその月分の保険料から納付になります。
- 月末退職の例:3月末で退職 → 4月1日から第1号 → 4月分から納付
- 月途中退職の例:4月15日で退職 → 4月16日から第1号 → 4月分から納付
ここは「日割りになるの?」と感じる人が多いのですが、国民年金は基本的に月単位で考えます。
だからこそ、退職月の扱いを自分のケースに当てはめて早めに確認しておくと安心です。
どこで手続きする?提出期限は?
- 提出期限:退職日の翌日から14日以内
- 提出先:市区町村の国民年金窓口(電子申請の案内もあり)
「役所で国保の手続きをするついでに、国民年金も同時にやる」人が多いです。
ただ、国保と年金は窓口が別の場合もあるので、二度手間を避けたいなら、行く前に自治体サイトで窓口を確認しておくとスムーズです。
持っていくとスムーズなもの
自治体によって求められるものが違うこともあるので、ここでは「これを持つと困りにくい」代表例をまとめます。
- マイナンバーが確認できるもの+本人確認書類(マイナンバーカード等)
- 基礎年金番号がわかるもの(通知書・年金関係の書類など)
- 退職日がわかる書類(離職票などを求められるケースあり)
「書類が足りなくて出直し」になると、独立直後は地味に痛いです。
できれば一度で終わらせるつもりで、上の3点は押さえておくのが安全です。
国民年金の保険料|いくら・いつまで・どう払う?
国民年金は「毎月いくらかかるか」が分かれば、支払い計画が立てやすくなります。
フリーランスの場合、固定費としてのインパクトが大きいので、金額・期限・支払い方法は最初に整理しておきましょう。
令和7年度の保険料は「月17,510円」
国民年金保険料は、令和7年度:1か月 17,510円です。
(年度によって変わるので、毎年「今年いくらか」は更新して確認するのがおすすめです。)
さらに、付加年金を付ける場合は、国民年金保険料に加えて月400円が上乗せになります。
納付期限は「翌月末日」
納付期限は、納付対象月の翌月末日です。
月末が土日祝に当たる場合は、翌営業日が期限になる点もセットで覚えておくと安心です。
「うっかり払い忘れ」を防ぐなら、次で紹介する口座振替・カード払いに寄せるのがラクです。
支払い方法
支払い方法は「どれが得か」より、まずはあなたが継続できる方法を選ぶのが正解です。
フリーランスは忙しい時期が読めないので、支払い忘れのリスクがある人ほど自動化がおすすめです。
- 毎月納付(納付書など)
とにかくシンプル。最初はこの方法で始めて、慣れたら口座振替に移すのもありです。 - 口座振替
支払い忘れをなくしやすい。独立直後でバタつく人ほど向いています。
(前納・早割なども含めて、固定費を最適化したい人向け) - クレジットカード納付
支払いを一本化したい、ポイントを取りたい人向き。
ただしカード更新・限度額などで止まる可能性がゼロではないので、年1回くらいは状況確認しておくと安心です。
前納はどれくらいお得?
国民年金は、まとめて前払い(前納)すると割引があります。
特に、フリーランスは「固定費を下げる=精神的にも楽」なので、資金に余裕がある人は検討価値があります。
ただし、前納はお得だけで決めると失敗します。判断基準は次の2つです。
- キャッシュフローに余裕があるか(前払いしても生活が苦しくならないか)
- 緊急資金を削らないか(病気・案件終了などのリスクに備えられるか)
おすすめの考え方は、
「生活防衛資金(最低でも数か月分)を確保できたら、前納を検討する」という順番です。
将来いくらもらえる?
「結局、将来いくらもらえるの?」は一番気になるポイントですよね。
ここではだいたいの見通しを持つために、まずは満額と減り方だけ押さえます。
老齢基礎年金(満額)の例:月69,308円(令和7年度)
40年(480か月)きちんと納めた場合の、老齢基礎年金(満額)の例として、月69,308円(年831,700円)が示されています(令和7年度、昭和31年4月2日以後生まれの方の例)。
「思ったより少ない」と感じる人が多いのは自然です。
だからこそフリーランスは、国民年金を土台にしつつ、付加年金・基金・iDeCoなどで上乗せ設計をしていく、という考え方が現実的になります。
未納があるとどう減る?
ざっくり言うと、年金額は「納めた月数」に応じて決まります。
細かい計算はさておき、ここで大事なのは次の2点です。
- 未納=その月は積み上がらない(将来の受給額が減る)
- さらに、未納の状態が長く続くと「いざという時」の安心感も下がる可能性がある
逆にいうと、「払えない時期がある」こと自体は珍しくありません。
そのときに、未納で放置せず、免除・猶予を使って制度の中で対処するのが重要です。
払えないときの正解|免除・猶予・追納を「戦略的」に使う
フリーランスの国民年金で一番差がつくのがここです。
「払えない=終わり」ではなく、払えないとき用の制度が用意されているので、使い方を知っているだけで安心感が変わります。
免除・猶予は「遅くても申請する価値がある」
免除等は、申請時点から2年1か月前までさかのぼって申請できます。
ただし、それより前の期間は申請できないため、迷っているうちに時間が経つと取り戻せない期間が出ます。
申請のイメージは、ざっくりこの順番でOKです。
1)「今、払えるか?」を判断
2)厳しければ、未納にせず免除・猶予を検討
3)生活が落ち着いたら追納で回復(できる範囲で)
「申請=ずっと免除のまま固定」ではなく、状況に合わせて調整するものだと思ってください。
追納(あとから納める)という選択肢
免除や猶予、学生納付特例などの承認を受けた期間がある場合、あとから保険料を納める「追納」ができます。
追納できるのは、承認された月の前10年以内の期間に限られます。
追納のメリットは主に2つです。
- 将来の老齢基礎年金の受給額を、満額に近づけやすい
- 納めた保険料は、社会保険料控除の対象になる(確定申告等で反映できる)
追納は「全部まとめて戻す」必要はありません。
優先順位をつけて、まずは古い期間から、できる範囲で戻していくのが現実的です。
年金を増やす方法|フリーランスが選べる上乗せ3選
ここからは「余裕が出てきた人向け」のパートです。
国民年金はあくまで土台なので、老後の見通しを良くしたいなら、上乗せの選択肢を知っておくと強いです。
① 付加年金:月400円で上乗せ
国民年金保険料にプラスして、月400円の付加保険料を納める制度があります。
「少額なので、フリーランスの最初の上乗せとして選ばれやすいです。
付加年金の年金額は、基本的に「200円×納付月数」で計算されます。
たとえば10年(120か月)納めたなら、ざっくり「200円×120=月2.4万円分が年金として上乗せされる」イメージです(※細部は条件によりますが、考え方としてはこれでOK)。
ただし、付加年金は誰でも入れるわけではありません。
たとえば国民年金基金に加入している人は付加年金に加入できません。
② 国民年金基金
国民年金基金は、会社員でいう厚生年金のように「上乗せ部分」を作る発想の制度です。
フリーランスは厚生年金がないぶん、将来の受け取りを厚くしたい人が検討します。
向いているのは、例えばこんなタイプです。
- ある程度、毎月の拠出を継続できる
- 老後の設計を「制度として」固めたい(運用で増やすより、安定の方が好き)
- いきなりiDeCoの運用リスクを取るのが不安
なお、先ほどの通り、基金と付加年金は同時加入できないので、どちらかを選ぶ前提で考えると整理しやすいです。
③ iDeCo:節税しながら老後資金を積み立てる
iDeCoは、掛金を積み立てて運用し、老後に受け取る仕組みです。
フリーランスの場合、上限が比較的大きいのが特徴です。
- 国民年金第1号(自営業者等)の掛金上限:月68,000円(国民年金基金、付加保険料と合算)
「老後資金を増やす」だけでなく、掛金が所得控除になるなど、節税面のメリットもあり得ます。
一方で、iDeCoは運用商品を選ぶため、価格変動の影響も受けます。
「増える可能性もあるが、短期では上下する」ことを理解したうえで始めるのが大事です。
注意:付加年金と国民年金基金は同時加入できない
ここは間違えやすいポイントなので、もう一度だけ。
- 付加年金:少額で上乗せ(ただし基金加入者は不可)
- 国民年金基金:厚生年金の代わりの上乗せ(付加年金と同時加入不可)
そしてiDeCoは、上限の枠(68,000円)の中で、基金や付加保険料との兼ね合いが出ます。
【比較表】付加年金 / 国民年金基金 / iDeCo
| 選択肢 | 目的 | コスト感 | リスク | こんな人に向く |
| 付加年金 | 少額で年金を上乗せ | 月400円 | 低い | まずは軽く増やしたい |
| 国民年金基金 | 上乗せを“年金として”設計 | 変動(設計次第) | 低〜中 | 厚生年金の代わりを作りたい |
| iDeCo | 節税しつつ積立・運用 | 上限:月68,000円 | 中(運用あり) | 節税も意識して育てたい |
よくある質問(FAQ)
- 退職が月末でも月途中でも、その月の保険料はどうなる?
-
月末退職でも月途中退職でも、その月の第1号に該当する場合はその月分から納付になります。
- 国民年金の手続きはいつまで?
-
原則として退職日の翌日から14日以内です。
- 免除はいつまでさかのぼって申請できる?
-
申請時点から2年1か月前まで申請可能です。
- iDeCoはいくらまで積み立てられる?
-
第1号は月68,000円が上限で、基金や付加保険料分は差し引きになります。
まとめ
- 退職日から14日以内に、国民年金の手続きをする
- 保険料(令和7年度:月17,510円)を把握して、支払い方法を決める
- 厳しい月があるなら、未納にせず免除・猶予を検討する(さかのぼり申請の期限も確認)
- 余裕が出てきたら、付加年金/基金/iDeCoで上乗せ設計をする(付加年金と基金は同時加入不可)
