
自由を求めて独立したのに、仕事が楽しくない。そう感じているフリーランスは少なくありません。結論から言えば、仕事を好きになるかどうかは、才能や運ではなく、「何が嫌なのかを切り分ける、仕事の中身と関わる人と捉え方を少し変える、合わない部分を減らす」の3つで変えられます。無理に前向きになる必要はありません。「悪くない」と思える状態を目指します。
この記事でわかること
【結論】仕事を好きになる3つの手順
仕事を好きになるとは、最初から好きな仕事を見つけることではなく、今の仕事への関わり方を変えて、好きな部分の割合を増やしていくことです。フリーランスは、仕事の内容も相手も自分で選べるため、会社員よりも変えられる範囲が広い立場です。手順は次の3つです。
- 何が嫌なのかを切り分ける仕事そのものか、作業の一部か、相手か、条件か。原因によって打つ手が変わる
- 仕事を少し作り変える作業の中身、関わる人、仕事の捉え方の3つを、小さく変える
- 合わない部分を減らす苦手な作業は手放し、合わない案件は入れ替える
無理に好きになる必要はありません。「嫌いではない」「淡々と続けられる」という関係でも、仕事として十分に成り立ちます。
3つ目の「合わない案件を入れ替える」ためには、ほかにどんな案件があるかを知っておく必要があります。自分の興味や強みに合う案件の選択肢を持っていると、今の仕事を続けるかどうかを落ち着いて判断できます。
仕事を好きになると、何が変わるのか
仕事への好意は、気分の問題だけではありません。続けやすさと、質の伸び方に関わります。心理学の自己決定理論では、人が意欲を保つために必要なものとして、次の3つが挙げられています。
| 必要なもの | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 自律性 | 自分で選び、決めている感覚 | 受ける案件や進め方を、自分で決めている |
| 有能感 | できている、上達している感覚 | 前より早くできた。相手に喜ばれた |
| 関係性 | 人とつながり、役に立っている感覚 | 取引先から信頼されている。誰の役に立っているかが分かる |
仕事が楽しくないときは、この3つのどれかが欠けていることが多くあります。反対に言えば、欠けているものを補えば、仕事への見え方は変わります。
「好きだから頑張れる」だけでなく、「工夫して関わるうちに好きになる」という順番もあります。最初から好きな仕事に出会える人は多くありません。上達して手応えが出てくると、あとから好意が育つこともあります。今好きになれなくても、焦る必要はありません。
好きになれない原因を切り分ける
「なんとなく好きになれない」の裏には、具体的な原因があります。原因によって、打つ手がまったく違います。まず、自分がどれに当てはまるかを確かめてください。
| 原因 | 状態 | 打つ手 |
|---|---|---|
| やらされている感覚がある | 自分で選んだ実感がなく、こなすだけになっている | 受ける基準を決め、自分で選び直す |
| 得意や興味と合っていない | 苦手な作業が多く、強みを使えていない | 得意な工程の割合を増やす。苦手な作業を手放す |
| 成長の手応えがない | 同じことの繰り返しで、上達を感じない | 少し難しい案件を1つ入れる。できたことを記録する |
| 意味が見えていない | 誰の、何の役に立っているのかが分からない | 成果がどう使われたかを、取引先に聞く |
| 相手との関係がつらい | 取引先との相性が合わず、連絡のたびに気が重い | 連絡のルールを決める。改善しなければ入れ替える |
| 条件が割に合わない | 報酬や納期が厳しく、余裕がない | 条件の見直しを相談する。単価の基準を決める |
| 疲れがたまっている | 以前は楽しめていた仕事も、楽しめない | 工夫より先に、休む |
「仕事そのもの」か「関わり方」かを見分ける3つの問い
- 相手や条件が違えば、同じ作業を楽しめそうか楽しめそうなら、原因は仕事そのものではなく、相手か条件
- 作業の中に、時間を忘れる工程が1つでもあるかあるなら、その工程の割合を増やす余地がある
- 十分に休んだ後でも、同じように気が重いか休むと軽くなるなら、原因は疲れ
多くの場合、嫌なのは仕事のすべてではなく、その一部です。全体を嫌いだと決める前に、どの部分が嫌なのかを書き出してみてください。
仕事を作り変える3つの方法
仕事の内容や関わり方を、自分に合うように少しずつ作り変えることを「ジョブ・クラフティング」と呼びます。組織行動学の研究者であるレズネスキーとダットンが2001年に示した考え方で、変える対象は次の3つです。
| 変える対象 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 作業の中身 | 作業の種類、量、順番、進め方を変える | 得意な設計の工程を増やし、苦手な事務は自動化する |
| 関わる人 | 誰と、どのくらい、どう関わるかを変える | 相性のよい取引先との仕事を増やす。同業の仲間と話す場を持つ |
| 仕事の捉え方 | 仕事の目的や意味の受け止め方を変える | 「資料を作る作業」を「相手の判断を助ける仕事」と捉える |
方法1|作業の中身を変える
最も効果が出やすいのは、作業の中身です。フリーランスは、進め方を自分で決められます。
- 得意な工程の割合を増やす提案の段階で、得意な工程まで含めて引き受ける
- 作業の順番を変える好きな作業を、集中できる時間帯に置く
- 苦手な作業を手放す自動化する、人に任せる、そもそも受けない
- 少し難しい課題を入れる毎回1つ、新しい方法を試す。同じ作業の繰り返しを避ける
方法2|関わる人を変える
同じ作業でも、相手が変わると気持ちが変わります。取引先との関係がつらいときは、作業の内容ではなく、関わり方を見直します。
- 連絡のルールを決める確認する時刻と返信の目安を伝え、常に対応する状態をやめる
- 相性のよい取引先を増やす気持ちよく進められた案件の共通点を書き出し、似た相手を探す
- 成果の使われ方を聞く納品した後、どう役に立ったかを聞くと、仕事の意味が見える
- 同業の人と話す場を持つ1人で抱えていた悩みが、よくあるものだと分かる
方法3|仕事の捉え方を変える
お金も環境も変えずにできるのが、捉え方の見直しです。ただし、嫌な仕事を無理に良いものだと思い込むことではありません。事実にもとづいて、見落としていた面に目を向けます。
| 今の捉え方 | 別の見方 |
|---|---|
| 毎月同じ報告書を作っているだけ | 取引先が次の方針を決めるための材料を作っている |
| 修正の対応ばかりで進まない | 相手が求める基準を、具体的に知る機会になっている |
| 誰でもできる作業をしている | 安心して任せられる人が少ないから、依頼が続いている |
あわせて、小さな上達に気づく習慣を持ってください。前より早く終わった、相手に感謝された、新しい方法を試せた。こうした手応えを週に1回書き留めると、仕事への愛着が育ちやすくなります。
あわせて読みたい(考え方の土台を作る)
合わない部分を減らす|手放し方と入れ替え方
好きな部分を増やすのと同じくらい、嫌な部分を減らすことが効きます。嫌いな作業が多いと、仕事全体が嫌になるからです。
1週間の作業を書き出し、印をつける
作業ごとに「好き」「普通」「嫌い」の印をつけます。嫌いな作業が全体の何割を占めているかを確かめます。
嫌いな作業を、減らせるものと減らせないものに分ける
自動化できる、人に任せられる、やめても困らない、のどれかに当てはまるものは減らせます。
月に1つ、減らす
一度に全部を変えようとしません。最も負担の大きいものから、月に1つずつ手放します。
合わない案件は、次の見通しを立ててから入れ替える
条件の見直しを相談しても変わらない場合は、契約の区切りで終了を伝えます。代わりの案件の見通しを先に立てておきます。
進行中の案件を途中でやめるときは、契約書の中途解約と予告期間の定めに従ってください。作業を人に任せる場合も、再委託の禁止や秘密保持の定めがないかを先に確認します。判断に迷うときは、弁護士などの専門家に相談してください。
あわせて読みたい(合わない部分を減らす)
無理に好きにならなくてもいい
ここまで方法を紹介しましたが、前提として、仕事を無理に好きになる必要はありません。好きになれない自分を責めなくて構いません。
| 状態 | 内容 | 対応 |
|---|---|---|
| 工夫 | 変えられる余地があり、試すと少し楽になる | 続ける |
| 割り切り | 好きではないが、淡々と続けられる。生活の手段として成り立っている | そのままでよい。仕事の外に楽しみを持つ |
| 我慢 | 工夫しても消耗が続く。心や体に不調が出ている | 環境を変える。休む |
「割り切り」は、悪い状態ではありません。仕事は生活の手段でもあり、仕事の外に大切なものがある人にとっては、淡々と続けられることが最も合っている場合もあります。
工夫しても気が重い状態が続くなら、それは好きになる工夫が足りないのではなく、環境を変える合図です。眠れない、食欲がない、気分の落ち込みが2週間以上続く、といった場合は、1人で抱え込まず、医療機関などの専門家に相談してください。
あわせて読みたい(休み方と不安への対処)
「好き」を仕事にするときの注意点
「好きなことを仕事にしたい」と考える人も多いはずです。好きであることと、仕事として成り立つことは別です。次の3点を知っておいてください。
- 好きな仕事にも、地道な作業はある責任、締め切り、事務の作業は、好きな仕事にもついてくる
- 仕事にすると、好きな気持ちが薄れることがある義務になると楽しめなくなる。仕事にしない時間も残しておく
- 好きだけでは、収入にならない場合がある需要があり、対価が支払われるかどうかを確かめる
「好き・得意・需要」の重なりを探す
| 要素 | 問い | 欠けると |
|---|---|---|
| 好き | 報酬がなくても、続けたいと思えるか | 続けるのが苦しくなる |
| 得意 | 人より早く、または上手にできるか | 選ばれにくく、単価が上がらない |
| 需要 | お金を払ってでも頼みたい人がいるか | 案件がなく、収入にならない |
3つがすべてそろう仕事は、最初から見つかるものではありません。得意で需要のある仕事から始め、その中で好きな部分を増やしていくのが、現実的な進め方です。
あわせて読みたい(強みと相場を確かめる)
よくある質問(FAQ)
仕事を好きになるとは、関わり方を変えて、好きな部分の割合を増やしていくこと
何が嫌なのかを切り分け、作業の中身、関わる人、捉え方の3つを小さく変える
無理に好きにならなくてよい。工夫しても消耗が続くなら、休むか環境を変える

